まずは自己紹介から
一通りコボルト三匹がはしゃぎ終えたところで光は本題に入ることにする。
むしろここからもかなり手探り状態だ。
「えーと、まず最初に改めて自己紹介……がいいかな」
そもそもまだお互いがどんなことが出来るのかすら分かってない。
この様な状態で戦いに行ったら絶対事故ると光のプレイヤーとしての本能が警鐘を鳴らしている。
「ご主人の事教えてくれるのか?」
「あー……あまり期待はしないでね」
とりあえずサンダルクは自分の事を端的に話す。
と言っても現在のレベルと戦闘方法とかその辺りだ。後はリアルにも関係もすることが一つ。
「その、話すことが少し苦手で……だからうまく喋れないかも……」
「そうなのか?」
「マスターは結構普通に話せてると思うよ?」
そう、スイカ達が人の姿をしていないからか、はたまたNPCと言うプレイヤーに害をなさない存在からか。
先程の長の時も含むが普段よりも光はちゃんと話せてはいた。
あくまで普段よりは、ではあるが。
「皆だから……かな。他の人間相手だとちょっと……」
「そっか。でも大丈夫だぞ、ご主人!」
「そうよ。その時はモモ達にどーんと任せて頂戴!」
「私も主様のフォローをしますので、ご安心くださいませ」
何このワンコ達。控え目に言っても最高じゃないか。
具体的にどうフォローしてくれるかは分からなかったものの、光としてはその気持ちだけで十二分に心が救われる。
嬉しさから思わずサンダルクが手を伸ばすと、スイカは何か察したのかおもむろに顎を手のひらの上に乗せてきた。
そのまま思うがままにもう片方の手を使いわしゃわしゃと撫で回すと、目を細めとても気持ち良さそうな表情を浮かべる。
「あー! 兄貴ばかりずるい! マスター、モモもー!」
「あの、私も良ければ……」
結局五分程時間をかけ全員を撫で回した。モフモフ天国ここに極まれり。
さて、コミュニケーションが思ったより良い感じに取れたところでサンダルクは改めて三匹の事を尋ねる。
予想通り全員実戦経験は無し。ただし修練は積んでいたようで全員何かしら【スキル】は習得してるとのことだった。
装備に関しては今回自分の供回りと言うことでサイズを合わせた専用の武具を着込んでいるとのこと。
(う~ん……この子達のステータス見れないかな。せめてHP表示だけでも欲しい……)
確かテイマー系のまとめサイトがあったな、と昔調べたことを思い出し、サンダルクは【ブック】を使って探索者の本を取り出す。
「ご主人、その本なに?」
「ん~……探索者の本。色々調べれたりするんだよ」
ご丁寧にこの本は外部のサイトにもアクセスできるので、FRO/FDをしながらでも色々と調べる事が出来る。
サンダルクは本を開き手馴れた操作で外部サイトへとアクセス。テイマー系のまとめサイトを見ては必要そうな事に目を通していく。
(テイムモンスターがいれば専用の項目が開く……でも項目自体出て無いな。そもそもテイムモンスターを一度に出せるのは一体までって書いてるし……)
もしかしたら例外かもしれないけど、そもそも三匹をテイムしたわけではない。
となると……と考えているといつの間にかスイカたちがサンダルクの体によじ登っていた。
スイカは頭の上に乗り、モモは背中からよじ登って肩にもたれかかり、ミカンは至っては足の上に座り背を預けてきている。
「ご主人の本すごいなー。オイラには何書いてるかさっぱりだけど」
「うーん、何かの儀式とその効果かしら?」
「…………」
何してるの、と言おうと思ったものの、何か和むのでサンダルクはそのまま放置しておく事にした。
ともあれテイマー関連では特に収穫は無し。そもそもNPC扱いのコボルトなのだからテイムとは別系統か、と結論付けたところでふと気づく。
そう、見た目コボルトだから忘れてたがこの子達はNPCである。
そしてこのゲームはNPCがパーティーに加わるシステムが存在する。
例えばNPCの探索者や傭兵を雇って連れて行く事も出来るし、クエストなどの護衛対象も扱いとしてはNPCパーティーメンバーだ。
つまり同様にこのコボルト達も同じ様に出来るのでは無いか。
(……ものは試しって言うし)
本を操作しスイカ達に向けパーティー申請を飛ばす。
プレイヤーならYESかNOのウィンドウが出る(らしい)が、NPCならば条件を満たしていれば自然と加入されるようになっている。
そして光の予想は当たり、パーティーウィンドウにめでたくスイカ達の名前が表示された。
とりあえず皆のHPが見えるようになった事にほっとしていると、足の上に座っていたミカンが小首傾げサンダルクの顔を見上げていた。
「主様、どうかなさいました?」
「ううん。これからの事ちょっと考えてて」
「あ、ならオイラ街に行ってみたい! 人間の街ってでっけーんだろ?!」
スイカの言葉に真っ先に思い浮かぶ街と言えばフィフティスだ。だがこの子達は街に入れるのだろうかと言う疑問が光の頭に浮かぶ。
モンスターが街に入らないようNPCの門番がちゃんと守っているのを光は何度も目にしていた。
その一方でテイムモンスターは普通に素通りしているのも知っているし、先ほどのテイマーのまとめサイトでもその記載はある。
「んー……まぁそうだね。一度街に戻った方がいいか」
「「やったー!!」」
頭上と耳元でハイタッチをするコボルト兄妹をよそに、光はこれからの算段をし始める。
何せこのイベントもほぼ強制的に進んだ為手持ちのアイテムはコボルトーガ戦でほぼ底を尽いたまま。
しかも武器が壊れた状態なので戦う手段が無い。
【重桜無刃】は使用できなくは無いが、強い武器の宿命かまだまだ制約が強く気軽に使えなかった。
「とりあえず勝手にどこか行ったりはぐれないようにね。後は慣れるまではちゃんと言うことを聞くように」
「「「はーい!」」」
何となく保父さんの気分を味わいながらも光は三匹を連れコボルトの村を後にするのだった。




