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サンダルクと三匹のコボルト


「来ましたね。この人が一緒に世界を回ってくれる方よ。ご挨拶なさい」


「「「はい!!」」」


 (おさ)に促され三匹のコボルトがサンダルクの前へとやってくる。

 そして全員がペコリと頭を下げ一礼をした。

 どのコボルトも小柄で――いや、元々コボルトは小柄なのだが、三匹とも立っているのにサンダルクの膝上ぐらいしか身長がない。

 下手をすれば園児かそれ以下か。種族的に手足がそこまで長くないからそう見えるのかもしれないなと光は思った。

 そしてその中の一匹が一歩前に出てサンダルクに挨拶をする。


「オイラはコボルトファイターだ。よろしく!」


 ひょいと右前足を上げる仕草が一々可愛いコボルトファイターは毛並みが緑と白のツートンカラーの子。そして光には見覚えがあるコボルトだった。

 そう、『はじまりの森』でサンダルクをロープで簀巻きにしたコボルトである。

 そんな彼はその時とは違い背には人間の短剣サイズほどの剣を背負い、左手には小ぶりのバックラー。そして防具として胴体には革の軽鎧、頭には革の帽子を身につけている。

 一見して人間用の防具をダウンサイズしたような感じだが、よくよく見れば帽子は耳部分を覆うような特注品だった。


 そしてコボルトファイターと入れ替わり次にコボルトクレリックが一歩前に出る。


「はじめまして。私はコボルトクレリックです。未熟者ですが回復や支援魔法で一生懸命頑張りたいと思います」


 よろしくお願いしますね、と丁寧とお辞儀をするコボルトクレリック。

 彼女も通常のコボルトとは違い明るいクリーム色と白色のツートンカラーをしていた。

 そして先の挨拶同様とても落ち着いた人……もといコボルトのようだ。身につけているものも体毛に合わせているのか白とクリーム色を基調とした修道服っぽい服装である。

 今まで鈍器や刃物を振り回しているイメージしかなかったコボルトだったが、理知的な対応をされると光の中のそのイメージも崩れ去るというもの。

 むしろ『コボルトって魔法を使えたんだ』と言う事実の方に驚きを隠せない。


 そして彼女が下がると最後にコボルトマジシャンがぴょんと跳ねながら手を上げる。


「はいはーい、コボルトマジシャンよ! コボルトファイター兄貴共々よろしくね!」


 ウィンクをしながらポージングをとるコボルトマジシャンは性格同様に桃色と白のツートンカラーの明るい子。

 どうやら先のコボルトファイターとは兄妹の間柄のようだ。

 マジシャンの名に違わぬようワンピースのような服の上に紫色のマントととんがり帽子(犬耳穴仕様)を身につけている。

 そしてどのように持っているかは不明だがその手にはしっかりと魔法使い用の短杖(ロッド)が握られていた。


「本来であれば供回りはこの中からの誰かにするつもりでしたが、貴方なら全員連れて行って頂いても問題ないでしょう。どうかよろしくお願いします」


「「「よろしくお願いします!」」」


 長からも三匹からも頭を下げられては、もはやサンダルクもお願いしますと返すので精一杯だった。



 ◇



 長の家から三匹を連れ、サンダルクはまずは村の広場へとやってくる。

 相変わらず人間が怖いのか目の前のコボルト達以外は家の中に隠れてしまっているようだった。

 とりあえず広場の地面に腰を下ろし、目線を三匹と同じぐらいの高さに合わせる。


「えっと、改めてよろしく。それで、ええと……」


「……? オイラはコボルトファイターだぞ。剣を見れば分かるよな!」


「あぁ、うん。そうじゃなくて、名前教えて欲しいなって」


 苦笑しつつコボルトファイターに問い返すと、コボルトクレリックが静々とサンダルクの方まで歩み寄ってきた。


「実は私達は個としての名前はありません。ですが長様より必要あれば付けていただくようにと言伝を頂いております」


「お、名前くれるってマジ? ついにオイラ達も名前付き(ネームド)の仲間入り?!」


「兄貴、それはもっと強くなってからでしょ。でも私も名前は欲しいかも……」


 キラキラと期待の眼差しを贈ってくる兄妹に少し気圧されつつ、サンダルクはコボルトクレリックにそのあたりの事情を詳しく説明してもらうよう求める。

 すると彼女によれば魔物には――少なくともコボルトには個体名として名を付けることは無く、何か特別な功績を称えたりしたときに名乗るものらしい。

 人間で言えば二つ名とか称号に当たるモノか、と光は当たりをつけ、教えてくれた彼女に短く礼を返す。


「名前……名前かぁ。その、俺がつけても皆はいいの?」


「おう!」


「よろしくお願いいたします」


「可愛い名前希望ね!」


 三者三様、程度の差はあれどつぶらな瞳で真っ直ぐに見つめられ思わずサンダルクは視線を逸らしてしまう。

 とりあえず少し待ってもらうように頼み、その間に三匹分の名前をつけるべくサンダルクは腕を組み思案し始めた。


(あまり穿った名前はダメだなぁ、出来るだけ呼びやすいような名前に……。う~ん、そうなるとポチとかコロとか……なんだろう、物凄く付けたらダメな予感がする)


 得体の知れないプレッシャーに軽く身震いすると、何か名前のモチーフにでもならないかと再び目の前のコボルト達を見はじめるサンダルク。

 毛色も戦う方法もバラバラの三匹。でもどうせならこの三匹には全員共通するような名前を付けた方が良い思い、そして単純ではあるがある意味分かりやすい名前が頭に浮かんだ。

 そのあまりにも()()()の名前に即座に却下案が脳内で提出されるも、一度思いついたことが定着してしまったのと代替案が無かった為脳内会議によって棄却される。


 そしてとりあえずは三匹の名前が決まったと、改めて彼らと向き合っては発表する事になった。

 全員とても真剣な目で見てくるが、正直その様な顔をされることに光は少し心苦しくなる。

 でもこれ以上名前が浮かばなかったので仕方ないじゃん、と自身に言い聞かせる様に内心で言い訳をし、コホンと一つ咳払いしては彼らの名前を一人ずつ告げていった。


「まずコボルトファイター、君の名前はスイカね」


「おう、オイラの名はスイカな! ご主人、ありがとな!」


「で、コボルトクレリック。君はミカンだ」


「はい、主様。ミカンの名に恥じぬよう精一杯努めますね」


「最後にコボルトマジシャン。君にはモモって名前にするよ」


「了解~! モモ、マスターの為に頑張るね!」


 名前をつけてもらった事がよっぽど嬉しかったのか、三匹がまるで子どものようにはしゃぎ始めるのを見ると心が少しほっこりする。

 反面体毛の色でそのまま決めた事に罪悪感に苛まれながらも、サンダルクはしばらくの間喜ぶ三匹の様子を温かい目で見守っていた。



サンダルクメモ~コボルトズの一人称と自分の呼び方~


スイカ:オイラ、ご主人


ミカン:私、主様


モモ:あたし・モモ、マスター


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