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襲来! ボスモンスター


 ボスモンスターと呼ばれる敵がいる。


 それは火山に棲む赤き竜であったり、墳墓を根城とする死の王であったり。

 とにもかくにも、この手のゲームにおいてはまさにスペックモンスターと呼ばれる特別な存在だ。

 該当フィールドの適正Lvを優に越え、専用の対策装備をした高レベルプレイヤーが多人数で戦いようやく倒せるか倒せないかと言う敵。

 もちろんボスモンスター全てがそんな凶悪極悪性能ばかりではない。

 中級者が倒せる程の小規模のボスモンスターもこの世界には多数存在している。


 サンダルク達の目の前に現れたそれもその中の一体であった。




 ――普通であれば。



 ◇



(くそ、コボルトーガの時間だったか……!)


 切り飛ばされた左腕から【出血(致命)】を表すエフェクトが迸る。

 ゲームとしての年齢制限があるため、体が欠損したとしても中身や切断面が見えるわけではない。代わりに失った箇所はノイズが入ったような赤色で染められる。

 サンダルクの左腕も肘から先がその様な赤一色に変わっていた。


「ウオオォォォォーーーー!!」


 獲物を傷付け歓喜に震える獣の咆哮。

 その声量とボスモンスター特有の威圧により肌にビリビリと痺れる感覚が走る。


 コボルトーガ。

 この『はじまりの森』に生息するボスモンスター。殆どのキャラクターが来るこの場だけあり、プレイヤーが出会うボスモンスターの中では群を抜いて知名度が高い。

 見た目は犬の獣人魔物であるコボルトにオーガを掛け合わせたようなもの。二メートルを越える筋骨隆々の巨躯に狼を思わせる顔と全身の毛は、もはやコボルトよりも異常にパンプアップしたウェアウルフと言う方がしっくりくる。


(コボルトが逃げてたの見過ごしたのが痛いな……)


 内心ボスモンスター発生タイミングであるコボルトを見逃してしまったことを悔やみつつも、体は一年間のプレイで染み込んだ動作を反射的に実行。流れるような動きでサンダルクは右手でベルトにつけておいたポーションを引き抜き口で蓋を開けては左手に乱暴に浴びせかける。

 淡い緑色の光と共に赤一色の手が元に戻り、半分以下に減っていたHPもほぼ全快した。

 また怪我が治ったことで出血(致命)が消え、スリップダメージも同時に無くなった事を確認する。


「あ、あ……」


「逃げて!」


 サンダルクが思わずそう叫ぶと、突然現れたモンスターを前にへたり込んでいたファルナがようやく我にかえる。

 彼らが撤退した後続いて逃げようと頭の中で算段を整えていると、何を血迷ったのかショウゴとジェシルがファルナの前に立ち各々の武器を構えだした。


「ボスモンスターか。ふん、面白い」


「こいつ倒してこの森――」


 言葉は最後まで続かない。

 何故ならコボルトーガは手にした大剣を横に薙ぎジェシルの頭を消し飛ばしたからだ。

 その瞬間、彼の全身が一気に赤く染まり死亡判定の表示を出してその場へと倒れ込む。


「ジェシ――」


「ばっ!」


 敵から目を離すな、と言う想いも空しく、やられたジェシルの方を向いたショウゴが今度は脳天から叩き斬られた。

 目の前で仲間二人が瞬殺された状況が信じれないのか茫然とするファルナにコボルトーガの大剣が襲いかかる。


「ッッッッ!!」


 だが寸での所でサンダルクが庇い敵の攻撃が空を斬る。

 ラグビーのタックルみたいに全身で飛びかかってしまった為、気づけばまるで覆い被さるような形になってしまっていた。

 普通ならばここで甘い空気(ムード)でも漂いそうなものだが、古参であるサンダルクは現状をよく理解しているが為にそんな事など気付きもせず次なる行動へと移る。


「ごめん!」


「え、ちょ……へぶっ?!」


 なんとサンダルクはファルナの服を掴むとSTRの補助を借り全力で後ろへと投げ飛ばした。

 派手に投げ飛ばされたことでファルナが地面に転がると同時に微ダメージ表記が出ていたが、そこは勘弁して欲しいと内心で土下座だけしてサンダルクはコボルトーガへと向き直る。


「早く逃げて!」


 別に死んだとしてもデスペナルティを受けてセーブポイントからやり直すだけなのだから彼女を無理に庇う必要も自分が危険を冒して戦う事もない。

 しかし古参としての意地か、はたまたこうなると分かっていて彼らを逃がせなかった事への贖罪か。

 思った以上にファルナ(あの子)か良い子だったからか、それとも前回助けたのに今回は見捨てると思われるのが怖いからか。

 様々な考え、想い、建前が光の頭を駆け巡り、そしてそれらを一まとめにしては全て横に弾き飛ばす。


(そうじゃないだろ。仮想(ヴァーチャル)現実(リアル)を持ち込むな!)


 何をしにFRO/FD(この世界)にやってきた? 現実で出来ない事、やりたい事をする為だろう。

 女の子を守る騎士(ナイト)様プレイ? 良いじゃないか、元々魔法職だったしその後もソロプレイだから一度だってやったことがない憧れのシチュエーションだ。

 そうさ、誰の為でも無い。

 『自分がそうしたいからする』と言うこのゲームをやる根っこの気持ち。


 その気持ちを胸にサンダルクは腰のショートソードを引き抜く。

 この後多分死ぬだろうと言う確信めいた予感を感じつつも、ファルナが逃げるぐらいの時間を稼ぐため一人ボスモンスターへと向かって行った。



下記の場所におまけのようなモノとして作品の設定や裏話などを載せてあります。

よろしければどうぞー。


https://ncode.syosetu.com/n5409fz/

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