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振り向けば妹がそこにいる件  作者: 遥風 かずら
第六章:運命の子
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73.「見えなくても縛っているけど?」と恐ろしいことを言われた件


「はるくん、この手錠を外すのにはやらなければいけないことがあるんだよね」

「な、何でもする! 何でも許すから! だから教えてよ」

「じゃあ、はるくん。キスして」

「す、する! するから!」

「はあ~ぁ……面白味が無くなったなぁ。少しは躊躇しろよ、バカ馬」


 やれと言われたらやる。


 今さら恥ずかしがっても、手錠は外れない。


 キスでもなんでも、それが解錠の条件になっているのなら、何でもやると決めた。


「じゃあ、キス……するから、手錠を近づけてくれる?」

「え? 僕がさやちゃんに近づくの?」

「早くしな!」

「ひっ! じゃあ、はい……」


 てっきりさやめに口づけをするものだとばかり思っていたのに、全然そうじゃなかった。


 まさか手錠そのものにさやめが口づけをするだなんて……異国に来なければ、一生手錠暮らしだったんだと思うと寒気がした。


「……チュッ――」


 恥ずかしがる様子の無いさやめは、手錠に口づけを施すと嘘のように、あっさりと解錠された。


 こんなことをされないとダメだったとか、どれだけのモノなのか知らないけど、無性に腹が立った。


「うわ、本当だった……何でこんな面倒な解錠で、しかもこれをしないと外れないとか、これを考えた人は頭がおかしいよ!」

「その言葉、もう一度ほざいてみろ! もう一度手錠してやるから」

「ま、まさか、アールト様の?」

「助けられておいて、暴言とかありえないんですけど? それも人の家に上がり込んでおいて、名誉を傷つけるなんて、バカ馬は最低すぎる」

「ご、ごめん! そんなつもりじゃなくて……」


 もう一度手錠なんかつけられたら、日本にも帰れない。


「さやに続いて発言しろ!」

「え、うん」

「……」

「えーと、het spijt meヘットスパイトム、アールト様で、合ってるのかな」


 どういう意味かは分からないけど、申し訳ない気がして頭を下げて言ってみた。


『……ハルマ、キミを許そう。サヤメは私の為に怒ったのだからね。その気持ちがあるというのなら、その一言で全てを許そう』


 どうやら謝罪の言葉だったみたいだ。


 さやめにとっては育ての親と同じ人。その人が預けた手錠に対して、失礼なことを言った僕が悪かったのだろう。


「サヤメ、彼と共に帰りなさい。ここで彼の時間を縛っては可哀想だ」

「はい、ありがとうございます。今度また来られた時、その時は――」

「期待して待っているとしよう」


 どうやらようやく自由を得られたみたいだ。


 さやめは僕がこの国に来なかったら、どうするつもりがあったのだろうか。


 それはそれで手錠のまま一生を終えなければいけなかったのかと思うと、冷や汗しか出ないけど。


「さ、帰ろ、はるくん」

「て、手錠はもうしないよね?」

「あはっ! 目に見える手錠じゃ面白くない。はるくんがさやを許すと言った時、その時から見えない手錠が、はるくんに取り付けられた。キスしないと外れない手錠は、さやも疲れるからもういいや」

「え? 見えない手錠?」

「そ、目に見なくても、はるくんはもう、さやから離れることを許されない」

「そ、そんな……」

「見えなくても縛るし、縛ってあげる……さやの全てを許すんだものね?」

「ひぃっ……」


 やっぱり早まったんだ……でも、もう見える手錠で暮らしたくない。


 とにかく、円華を探して一緒に帰れるんだ。


 円華には謝って、それからまた何度でも謝ろう……。

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