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振り向けば妹がそこにいる件  作者: 遥風 かずら
第六章:運命の子
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72.「全てを許す?」と二度も聞いて来る妹


「はい、着いた」

「え? こ、ここ……? ど、どんなお屋敷なの? 入っていい所だよね……」

「ビビりすぎだからね? はるくんに戻った途端にそれなのだとしたら、さやはがっかりだなぁ」

「そ、そんな……」


 さやめに手を引かれてたどり着いた場所は、周辺の住宅地と見比べてみても、明らかに異質な感じがしておおよそ、一般人が入れそうな感じを受けなかった。


 見るからに威厳を世間に放ちまくりの厳かな造りで、屋根の台座には何かの紋章がついている。


「あー……なんとか」

「読めないとか、バカ馬のままなんだ……はるくんに戻っても、頭は良くならないよね。それはともかく、台座の上は、アールトの紋章なの。ここでさやは勉強をして、育ったんだ」

「そ、育った? え……さやちゃんは日本人で、あれ……?」

調月つかつきは確かにそうだけど、さやがレイケと呼ばれているのを忘れたの?」

「レイケ……じゃ、じゃあ、ここでレイケの名を貰ったってこと?」

「鈍いね、鈍馬くん。主人様の前で恥をかきたくなかったら、大人しくしてて欲しいかな」


 さやめのことを学園のみんなは、レイケと呼んでいた。


 レイケが特別な存在で、先生よりも優れていて、学園に貢献しまくりなのだと。


 ここがさやめをそういう存在にした場所で、そういう教育を施した名門ということなのだろうか。


『Goedemiddag!(フッデミダッハ)』


「え? フ、フハ……」

「はるくん、主人様にこんにちはって返事を返して」

「あ、こ、こんにちは!」


 どうやらこんにちはと言われたみたいだ。


『うん、コンニチハ。サヤメ、彼が?」

「はい。運命の男の子です」

「サヤメのくさびを受けた少年か。まずはそれを解くとしよう」


 しかも日本語ペラペラとか、助かる。


 見た目は穏やかそうな感じの紳士な男性に見えるけど、思ったよりも年は若いのかもしれない。


「さて、ハルマ。キミはサヤメにしなければいけないことがあるだろう? それを示しなさい」

「さ、さやちゃんにすることですか? 逆です……彼女が僕にしてくれないと僕はいつまでたっても動けないんです……」

「そうとも言える。ではサヤメ、二人で決め、終わりを求めなさい」

「ハイ、アールト様」


 この人がアールトと呼ばれている人なのか!?


 普通に話をしていていい人なのだろうか。僕はとてつもない人と口を聞いてしまっているんじゃ……


「はるくんは自由を得るために、さやに会いに来たんだよね?」

「そ、そうだよ。僕はさやちゃんを探して、探しまくって……でも、その前に外してもらわないと全てが終わらないよ!」

「あはっ! 終わらないんだ? それがはるくんの言葉なんだ」

「お、終わらないよ! 手錠したまま、どれだけおかしなことが起きたかさやちゃんには分かりっこないかもしれないけど、僕はこんなおかしなことを終わらせたい! だから、外してよ! 外してくれたら僕は、さやちゃんの言うこと全てに耳を傾けるから!」

「……今までしたこと、されたこと……全てを許してくれるのかな?」


 この返事をしてしまえば、学園での立場も、彼女である円華との関係も許されないことになってしまいそうな気がする。


 だけどそれでも、今ここで返事をしなければ、一生終わらない。


「ゆ、許すよ! 僕はさやちゃんを許す。だから……」

「本当に? 本当にさやのしたことの全てを許してくれるんだ?」

「な、何度でも言うよ! 僕はさやちゃんを許す!」


 素を出している時点で、さやめにはもう隠すことも出来ない。


 自分を強くして接することも、もう出来ないかもしれない。


 でももう嫌だ。


「許すから、僕のことも許してよ! さやちゃん――」

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