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振り向けば妹がそこにいる件  作者: 遥風 かずら
第六章:運命の子
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71.「まぁまぁ面白いね」と意地悪く微笑む女の子


 何でコイツは、日本から離れたところでも変わらずにいられるんだよ。


「あれあれぇ? もしかしてシカトかな? 手錠したままで、人の言うことに耳を貸さないとか、そんな偉そうな行動が取れるはずがないんだけどなぁ」

「何だよ? 知ってて近付いてきたんだろ! そ、そんなことより、早く外せよ! さやめ!」

「ここじゃ無理なんだけど? 街中で手錠を外すなんて、ねえ? せっかく彼女を連れて来ているんだから、刀で斬ってもらえば? 出来るでしょ?」

「で、出来るはずがなかろう! 好きな晴馬に会えたのだから、意地を張らずに素直に接すればよいのではないのか?」

「あはっ! その言葉、まぁまぁ面白いかもね? 笑えないけど」


 何のために来たのかといえば、手錠を外してもらうことが目的なのは間違いない。


 だけどさやめには、もう隠したままで過ごすのは駄目なんだ、そう思っていたら自分も素を出していた。


「お、俺はさやめに会いに来た。どうすればいい? どうすれば俺の手錠は外してもらえるの? ぼ、僕はさやめちゃんに会いたくて、会いに来たのに……どうしてだよ!」

「は、はるくん……?」

「僕はずっと忘れていた! だけど、さやちゃんだって僕をずっとずっと、離して来たじゃないか! どうしてだよ……もう僕はさやちゃんと離れたくないよ」


 もうこれで円華は僕から離れて行くんだ……これが僕の、素で弱い晴馬なんだと見られたのだから。


「それ、その姿が晴馬なのだな……そ、そうか……わたしはやはり、わたくしではその晴馬を引き出せなかったのか。勝負はすでに決していたというのに、わたくしは晴馬に甘えていたんだ」

「おじょ……」

「晴馬は素直になれ。その晴馬でもわたくしは好きだぞ。でも、わたくしではもう――」

「あっ! ま、円華! ま、待っ――」

「晴馬はレイケへ進め! わたくしは、その辺を見て回ってくるだけだ! ま、またな!」

「う、うん……ごめん」


 これも僕がハッキリさせなかったせいなのかもしれない。


 彼女として付き合うことになり、付き合っていてもさやめは僕を、僕のことをずっと……


「はるくん、アールト様の屋敷について来て」

「アールト? さ、さやちゃん、僕は……」

「ずっと辛い思いをさせてたね、ごめん。はるくんの泣きそうな声で、さやもきちんとする」

「え、う、うん」


 手錠をかけられたまま、さやめは僕を引っ張って進んでいく。


 幼き頃もこうして、手を引っ張られながらどこでも一緒に歩いていた気がする。


「……はるくんは、もうすぐ自由になれるからね? そうしたら、さやのことも決めてね」

「自由に……ぼ、僕は、ここに来た僕はもう――」

「うん、お屋敷の中で聞かせて欲しいの。だから、ついて来てね?」

「分かったよ、さやちゃん」

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