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振り向けば妹がそこにいる件  作者: 遥風 かずら
第五章:女子と学園の秘密
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69.「抱きしめてくれ」と頼むお嬢と胸キュン 渡航編②


「あ、あのさ、俺、すごい睨まれてんだけど……」

「それはそうだろうな。その手錠だけを見れば、国際手配だと思われるからな。だが晴馬はわたしが認めるくらいに、優しい男だ。手錠だけで判断などさせないから安心しろ!」

「国際手配って……」

「ふふ、滑稽な姿の晴馬も中々にいいぞ。守り甲斐があるというもの」


 いいのか悪いのか、円華にとってはさやめに勝負を挑むための旅でもあるし、俺の返事をハッキリさせるためでもあるのに、彼女の横顔は何とも晴れ晴れとした凛々しさがある。


 それにしても、ずっとさやめに会えていない気がする。


 寂しいという気持ちよりも、まずは手錠をどうにかしろという気持ちしかない。


 こんなひどいことをしておきながら、自分だけ外国にいなくなるなんてあんまりだ。


「――ま、晴馬」

「え、わっ!?」

「頼む、わたしを思いきり抱き締めてくれないか?」

「こ、ここで? 搭乗ゲートは当然だけど、人が沢山いるよ?」

「た、頼む! わ、わたしは意気込んで来たけど、空の上が苦手なんだ……だ、だが、晴馬に触れてもらえば、この先如何なることが起きようとも、平気になる気がするんだ」


 勢いよく空港に連れて来た円華だったのに、実は飛行機が苦手だとか、この子こそ守ってあげたくなる。


「えーと……そ、それじゃあ」

「こ、来いっ! 思いきりだぞ? ぎゅっとだぞ?」

「う、うん」


 本当に愛しい彼女だ。胸がこんなにも温まるのは、恐らく円華くらいだろう。


 周りには大勢の人がいる。それでも、まさか搭乗する直前で抱きしめるとか、不思議なことでないにしても可愛すぎる。


 華奢な腰に両手を回して、キス……はしないまでも、円華の首の後ろに顔をつけると彼女は嬉しそうに笑っていた。


「……ふふっ、彼氏。晴馬がわたしの彼氏か。あぁ、いいな……この温もりと優しさは晴馬だからこそなんだ」

「ま、円華? ど、どうし――」

「しっ……このまま、黙って抱きしめて」

「わ、分かったよ」


 時間にすれば数分のことだったのに、彼女は何かの思い出を噛みしめるかのように、抱きしめていた。


「よし、いいぞ。行くか、晴馬!」

「へ? あ、うん」

「わたしは分かっているんだ。それでもな、晴馬。セップクする覚悟を持てば、その結果がどうであれ悔いは残らないのだ。そう思うだろう?」

「セ、セップク……懐かしい響きだね」

「ああ、晴馬、大好きだぞ」

「え?」


 まさか……いやいや、まさか円華の覚悟は、そういうことなのか。


 それでも俺はそうなって欲しくないとさえ思っているのに、この期に及んでいるのは俺だけなのかな。

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