67.「見損なったぞ!」と、言わせてしまった日
「ま、円華!?」
「見えていた! 私の部屋からばっちり見えていたんだ! お前という奴はどうしてそうなんだ!」
もなかちゃん先生の家は、碓氷家に囲まれているとは聞いていたけど、ただの白い壁じゃなかったの?
「か、壁……だよね、あれ」
思わずアホなことを言いながら、壁に向かって指を差してしまった。
「壁だ! だが私は、晴馬の気配なら感じ取れるんだ」
「マ、マジ?」
「こ、恋人なのだから当然だろう?」
どこの刺客なんだか。
「それなのに、私というものがありなから……見損なったぞ!」
「う……ご、ごめん」
「否定しないのか?」
「してはいけないことをしたのは間違いないんだ……だからごめん」
「ふ、ふふふ……」
「え? ど、どうした?」
「見損なったのは確かだが、これは私のやる気と、本気を試すためなのだろう?」
「へ?」
あれ? てっきり怒りまくって、別れるとか言い出すかと思ったのに。
「簡単には行かないぞ、晴馬!」
「あ、いや」
「レイケがいない今だからこそ、私は頑張る時なんだ!」
「あ……うん」
お嬢様な円華の捉え方は普通じゃないとは感じていたけど、そう来てしまうとは思わなかった。
愛されていると思うのは簡単だけど、お嬢様には誠意を示さないとこの先、生きていけないのかもしれない。
さて、どうしよう。




