63.もなかちゃん先生の思い出作り 1-1
もなかちゃん先生の登場で助かったかに見えたのに、この学園は大きすぎるせいなのか、全ての先生の存在は知られていないみたいだ。
「ことぶきお姉さま、あの~……もなかちゃん先生は学園の先生ですよ? 決して僕の彼女なんかでは……」
「先生? こんな小さな子が? 存じませんわね……それでその先生ちゃんが何の用ですの?」
確かに先生は小さく、妹と言っても嘘にもならないくらい小柄だ。本当に先生なのかと今さらながら疑いたくなる。
「もなかは学園所属の先生じゃ! じゃが、学年ごとに教師の数は決められておるからの。上級学年のみなまで知られていないのは仕方ないがの。学年で棟が違うというのも不便じゃな」
「では晴馬の担任ということですの?」
「じゃな!」
「……いいですわ。担任がここまで来られるということは、何か急ぎの用があることでしょうし……この場は引きますわ」
「うむ。明空を連れて行くぞ。ほら、もなかについて参れ!」
「は、はい。じゃ、じゃあ、ことぶきお姉さま……また」
もう二度と足を踏み入れないと誓いたい。さやめのヒントが聞き出せないし、たくみに誤解されたままで会いに来る意味はないだろう。
「全く、明空は相も変わらずなんじゃな。レイケがいないことで不安なのか?」
「い、いえ、そんなことはないですけど、この手錠さえ外れれば……」
「あぁ、そういうことか。確かにそれは厄介じゃの」
「もなかちゃん先生はコレを?」
「うむ。知っておる。じゃが、外すことは出来ぬな……」
「そ、そうですか」
この手錠は一体どれだけのものなんだ。さやめの奴め、何の罰を与えてくれてやがってんの。
「時に明空」
「はい?」
「その両手が自由を得るまでにはちと時間がかかるであろうし、食事やら何やらが大変じゃろ?」
「はぁまぁ、それは適当に何とか……」
「ではもなかが特別に世話をしてやってもよいぞ」
「へ?」
「明空は特別なのじゃ! すでに聞いておろう? この意味は保護の意味も含まれておるからの」
「それはあのー……身の回りの世話という意味ですか?」
「ふふっ、もなかでは不満かの?」
さっきのことぶき先輩には彼女じゃないなんて断ったのに、何故かもなかちゃん先生の方からこんなことを言って来るなんて、これは何の妄想なのか。
「え、えーと……まど……碓氷はどこにいますか?」
「ん? 何じゃ……もなかでは嫌なのか?」
「そんなことはないですよ」
「もなかのお願いなのじゃ! 明空がこの学園に来た時から気にしていたからの。これはもなかのわがままなのじゃ。よいかの?」
「そ、そういうことでしたか。先生にはお世話になってますし、拒む理由は無いですよ(ロリ馬と呼ぶ奴もいないし)」
「ではこのままついて参れ」
「は、はい」
さやめを探し求めのことが大ごとになっている気がする。しかし現状では、生活もままならないし、何故か友達の仲も悪くなりそうになっているし、ここは素直になっておくほうがいいかもしれない。
「明空のことは、もなかの家では兄と呼ぶがよいかの?」
「へっ?」
「……もなかのわがままなのじゃ」
「問題ないですよ(もなかちゃん先生の秘密を知れる)」
「やったー! なのじゃ」
もなかちゃん先生の年齢も不明だけど、この学園の七不思議の一つが分かるならそれはそれでよしとしよう。




