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振り向けば妹がそこにいる件  作者: 遥風 かずら
第五章:女子と学園の秘密
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59.レイケ・さやめの悩ましき日々SS 前編


 はるくんと一緒になるのに、どうしてこんなにも苦労をしなくてはならないのか。わたし、レイケなのに! さやめちゃんって慕って来たくせに! あんな可愛かった男の子だったのに!


 はるくんと出会ったのはわたしも彼も幼い頃。彼はわたしと記憶違いなのか、思い出を美化しすぎて勝手に改変したみたいで、大人しくて地味でいつも泣いて付いて来ていたとほざいていた。


 ふざけんな! いつも泣き虫でドジでのろまでおんぶをさせてあげたのに! どうして忘れているのか。


 ◇


「さやちゃんはあの弱々しい男の子が好きなのね?」

「はい、お母さま」

「それなら、全てを完璧にすることね。調月つかつきの人間は弱さを見せて来る人間を守り、従わせなければならない。それが出来るようになるためには、さやちゃんは外の国へ旅立たなければいけないの。行くのよね? あの国に」

「はい」

「ではお行きなさい。あの国の主人の下で学び、そして特別を得るのです。調月の名の他に、絶対的な名を与えられるまでは帰って来ることを許しません。よろしいですね?」

「分かりました、お母さま。行ってまいります」


 はるくんを手に入れることを決めたばかりに、どうしてわたしが苦労をしなければならないんだ。こんな想いを抱いていることも忘れ、あいつは今頃どこか普通の学校で退屈な日々を過ごしているというのか。


 ムカつく、ムカつく! 絶対特別になってやる。はるくんはさやの男の子だ。他の女を好きになるとか、傍にいるとか、そんなのは絶対に許したくない!


 ◇


「キミがサヤメ? ボクはアールト。以後よろしく」

「な、何をするの!?」

「キミの育った国では珍しいことかな? それは失礼。しかし、もしキミが意中となる男の子を見つけた場合は、その子がするべき行為となるだろう。それが騎士としての心構えさ」


 わたしの留学先、そこでの主人は初めて会ったわたしに膝をつき、手の甲にキスをして来た。キザな男だったけれど、わたしに何かをしてくる男ではなかった。


 それもそのはずで、まだまだ幼き様相をしているわたしに何かをして来る方がおかしいというもの。


 あぁ、何でこんなことをしているのだろう。はるくんの為にこんなことになるだなんて、どうしてなのだろう。


「特別なサヤメを作り上げ、いずれの男の子を驚かせてあげるといい。それが出来るのはサヤメだけだ」


「あはっ、特別……さやは特別になれるんだ。完璧なさやめとなって、迎えてあげるからね……はるくん」

ショートストーリー、さやめ編です。

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