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振り向けば妹がそこにいる件  作者: 遥風 かずら
第四章:ライバルの影
54/74

54.姉妹揃って「挟むね?」と宣言された件※そういう意味じゃないのは分かる件


「そんな馬鹿な……そんなそんな……」

「ま、まぁ、すぐのことでは無いのだ。晴馬の心を掴むためにも、わたしはもっと己を磨く」

「そ、そうだね……は、はは……」


 こんなことを学園の廊下で話している、それだけでもショックなことだったのにトドメと言わんばかりに、先生までもが声をかけてきた。


『何じゃ、レイケと碓氷揃って何事……あぁ、打ち明けたというのじゃな?』


 そんなに長い時間廊下にいた意識は無かった。そう思っていたのは自分だけだったようで、ただでさえ目立つ二人が立ち話をしていたのは、学園的に普通じゃなかったらしい。


「はい、妙義先生。立ち合いをお願いしてよろしいでしょうか?」

「レイケに言われるまでもなく、明空にはもなかが直々に言おうと思っていたのじゃ。良いだろう」

「え、あの……マジな話なのかな?」

「そうじゃ。明空は特別な存在なのじゃ。そんなに難しく考えずとも、明空が好きな者を選べば事は済む。何なら、もなかを選んでくれても……」

「そ、それは……」


 未だにもなかちゃん先生がいくつなのか知らない。小さくて小さい先生ということだけだ。選ぶのは誰でもいいなら、それでもいいのかなと思ってしまったら何かが終わりそうだ。


「うっわ、ロリ馬がいる……きっも」

「誰がロリ馬だ、誰が!」

「は、晴馬は妹が、ではなく……小さき女子が好みなのか? それではわたしでは太刀打ちが……」

「ち、ちちちち、違うからね?」

「何じゃ、そうじゃないのか。明空はそうだと信じておったが……」

「もなかちゃん先生までそんなこと言ったら駄目ですよ!」


 どこまで本気だったのか、小さなもなかちゃん先生の表情を見るだけでは分からなかった。


「ふむ、まぁそれはともかくとして……レイケと碓氷はこの事を学園理事に伝えておらぬじゃろ?」


「「はい」」


「それならば、言わねばならぬのじゃ。二人でついて参れ。明空には一人で考える時間をやろう。なに、今すぐの話ではない。そうではないが、突然のことで疲れもあるじゃろう? このまま寮に帰ってもよい」


 何やら大ごとのようでそうでもないような、そんなこともあって自分だけは寮に帰ることを許されてしまった。何かを忘れているような気がしたものの、今はショックなことがありすぎただけに気にしている余裕は無かった。


 さやめの気配を感じることが無い寮に帰り、部屋の中でしばらく呆然としているとチャイムが鳴っていることに気付いた。実のところ、放課後になったわけでもない時間に帰って来たこと自体があまり無かったので、宅配か何かだと思ってロックを簡単に解除してしまった。


「はい、どちらさ――」


『こんにちは、明空先輩。覚えていますか?』


 玄関の扉を開けると、そこにいたのはいつぞやに腕を掴まれた下級生の女子だった。


「な、何で……」

「知っていますよ? 明空先輩のことは何もかも。だって、特別ですからね」

「知らないのは自分だけってこと?」

「そうですね。あ、でも、ここに住んでることを教えてくれたのはあの人です」

「え、誰?」


 さやめがいないことで安心と大いなる油断をしていた。まさか直接来るとか、何者なのかと思ってみれば、どこかの誰かに聞いたらしい。

 このまま玄関を開けたままでは中に入られる恐れもあったので、扉を勢いよく閉めてそのまま下級生の子を通り過ぎて逃げよう、そう思っていた。


「ご、ごめんー! 俺、学園に忘れ物が――っ!? わわっ!?」


『逃がさないよ? 学園の晴馬くん。つづりは晴馬くんの背後を抑えてくれる?』

『うん、大丈夫』

『そんなわけだから、晴馬くんを挟むね?』


 あっという間に、前と後ろの空間を挟まれてしまった。どうやらあの人というのはリイサのことみたいだ。まさかこの二人は姉妹だったりするのだろうか。


「わ、分かったから、部屋に入るんだよね?」

「あっ、本当? やったね! さすが晴馬くん」

「聞き分けのいい明空先輩で良かったです」


 さやめが恐れていた敵のリイサと、さやめの知らない下級生が、どうして部屋に来たのか。これも俺の期限が関係しているとしたら、シャレにならない。


「晴馬くん、お茶は出ないの?」

「そ、そうだね。だ、出します……」

「では明空先輩の後ろにつきます。なずきは横に」

「オッケー! あたしたちで晴馬くんを挟み込んであげるね?」

「に、逃げないから! 部屋の中でまでそれは勘弁を」


 なぜこうなったのか、訳が分からないまま強制的にお茶を出してあげるしか無かった。何て情けないのだろうか。


「何で? って顔してるね。とりあえず、きちんと紹介しとこうかな。その子は……」

「自分で言います。なずきは黙ってて」

「はいはーい。ごめんなさーい」

「わたし、つづりと言います。下級生ではありますけど、なずきの姉です」

「――ハ? あ、姉? え、下級生なのに!? し、しかもリイサが妹?」

「意外ですか? 以前も聞きましたけど、妹が好みなのは事実なんですね」

「い、いや、あの……」


 どう見ても、身長はリイサの方が高いし、姉っぽいのに逆だった。下級生なのに姉とはどういうことなのか。


「あたしはレイケと同じく留学していたんだけど、成績が悪くて~……そんな感じ?」

「いや、そう言われても……」

「リイサ・なずき。正確には、夢咲ゆめさき・リイサ・なずき! 改めてよろしく~!」

「わたしは夢咲つづりです。留学していませんので、リイサとか付きません」

「はぁ、どうも……姉妹って……そ、そうじゃなくて、何でここに?」


 急な展開すぎる……そう思っていたのに、返って来た答えはそうじゃなかった。


「レイケのモノになる前に包囲しようと思いました。その為にも、なずきの協力が必要でした」

「そういうことだよ? 晴馬くん。追い出したくないし? 追い出されたくないでしょ?」

「な、何でそれを……」

「学園の人間なら誰もが知ることです。知らされていなかったのは本人だけだったと思います。レイケが先輩の傍にいたのはそういうことではないのですか?」


 ついさっき聞かされた衝撃が、まさかの追い打ちとかそれはさすがにキツイ。


「そ、それで、リイサもつづりさんも俺のことが?」

「あたしはレイケのモノを奪いたいだけね! もちろん、晴馬くんは食べごろだけど」

「い!? た、食べ……」

「相変わらず下品ですね、なずき。それで、姉ですか? 妹ですか? どっちがいいですか?」

「挟もうよ、つづり」

「……それもそうですね、逃がさなければ先輩も覚悟を決めることでしょう」

「い、いやっ、待っ――」

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