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振り向けば妹がそこにいる件  作者: 遥風 かずら
第三章:追い求めているモノ
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39.「どっちが好みですか?」と言い放つ下級生


 目が覚めるまでに、かなり色々なことで悶々としなければいけなくなっていたものの、寝て起きた時にはそれがすっかりと解消されていた。


「ふわぁぁ……んんんんー!」


 昨夜の言い争いが影響を及ぼしたのかは定かではないが、目覚めの大きなあくびをしても、さやめの気配を感じることは無かった。

 部屋に入って来るどころかいる気配が無いのをいいことに、さっさと着替えを済ませて学園に向かう。


 さすがに迷うことなく学園の門にたどり着くことが出来た。

 普段はあまり余裕が無いせいか、門を通り抜ける学生の姿を眺めることは無い自分だったが、さやめがいないことで気分がいいことと時間に余裕があったので、しばらく道行く人たちを眺めていた。


「あの人じゃない?」とか「話しかけたら?」などなど、明らかに小さな女子たちがひそひそ話をしていて、気づいた時には下級生らしき女子たちが取り囲んでいる。

 

 本当につくづくこの学園は、女子が多すぎる……なんてことを思いながらも、取り囲まれるほど特別な存在でもないので、一言声をかけてこの場から離れようとすると、何故か声をかけられた。


『待ってくれませんか? 明空みよくさん!』


 数人の女子たちに囲まれたものの、見るからに下級生だったので、そのまま反応せずに校内に入ろうとすると、腕を掴まれて前に進めなくなっていた。腕を掴んだ下級生以外は何かの相槌を打ちながら、校内へ進んで行ってしまった。

 ラスボス的な女子だけが残った形になって、何故か睨まれている。


「え、ちょっと!? な、何かな?」

「シカトですか? 先輩」

「そ、そんなことないけど、何か用でもあるの?」

「聞きたいんですけど、年下は大好きですか?」

「えー……き、嫌いじゃないけど」

「じゃあ妹と姉ならどっちが好みです?」


 何故か朝からそんなことを聞いて来る下級生は、俺よりやや身長が低くさやめよりは大きい女子だ。腕を掴んでいる力が強いせいか、簡単には振りほどけそうにない。

 さやめもそれなりに長い髪をしているが、この下級生の髪もかなり長い。艶のある茶色がかったサラサラな髪には、何となく惹かれるものがある。 


「敢えて言うなら、い、妹……かな。は、はは……」

「あ、そうですか。それだけ聞きたかったんです。もう行っていいですよ! というか、いい加減肘を当てて来るのをやめてもらえません?」

「へっ? ど、どこに……って、あっああぁぁ」


 腕を掴まれていたのは自分だったのに、どうしてか肘だけが下級生の子の腹部に当たっていて、もの凄く睨まれた。慌てて腕を動かした途端、下級生の子は怒りながら去ってしまった。

 一体何だったのか、どうして朝からこんなことになっているのか意味が分からなかった。


「あはっ! ロリ馬を発見! 朝から下級生にちょっかいを出すのがご趣味?」

「うるせー! やめろ、その呼び方! 部屋にいないかと思えば待ち伏せで、しかも黙って見ていたとか、そっちこそ趣味が最悪すぎるだろ!」

 

 意味不明な下級生たちの相手をしていただけなのに、黙ってその様子を眺めていたさやめに遭遇した。


「妹がお好みなら、どうしてわたしに夢中にならないのかな?」

「そ、そりゃあ、妹にもタイプがあるからな!」

「長い髪なら誰でもいいんだ?」

「何でだよ!」

「どう見ても見過ぎだったけど? 見たいならさやの髪を見まくりなよ」

 

 さやめの長い髪の特徴と言えば、前髪が銀色なことだ。わざと見せつけるようにして、前髪を掻き上げて来るその仕草を、ちょっとでも可愛かったと思うのは、あまりに危険すぎる。

 こんな奴にそんな気持ちを抱いては、将来の為にならない。


「で、何だよ?」

「何のこと?」

「用があるから声をかけて来たんだろ?」

「何でも理由を聞きたいとか、うざ」

「ただ挨拶するだけのはずがないのがお前だ。さやめが声を出す、それだけのことに理由なんて無いだろ」

「喘ぎ声を聞きたいってこと?」

「んなわけあるか! バカじゃねえの?」


 やはり朝から人を小ばかにするのが相当得意のようだ。それにしても下級生たちは何で声をかけてきたのか不明すぎた。


「さやめのせいで遅刻しそうな時間になったじゃないか!」

「知らないし。晴馬が妹萌えしていたからだろ? わたしのせいにすんな! ばかっ!」

「さやめの知り合いじゃないのか?」

「……知らない。学園全ての女子を知る程暇じゃないし」

「てっきりさやめに関係している事かと思っていたのに」

「関係無いし。妹が欲しいならいつでも妹プレイやりますけど、いつにします?」

「アホか! しねーし! したところで萌えないっての! いや、しないけど」

「朝から卑猥な言動は慎んでくれる? 明空みよく晴馬くん。もうすぐ予鈴もなるし、教室へ急がれては?」

 

 急にご丁寧で他人行儀な言葉遣いに戻ったのには違和感を感じた。さやめの姿勢を見ると、いつの間にか姿勢よく、両手を前にしておしとやかに立っている。


「さやめが今さらおしとやかにしていたところで……」


『何じゃ明空、遅刻か?』

「も、もなかちゃん先生?」

「うむ。おはようなのじゃ。して、さっきから誰と話をしていたのじゃ?」

「さや……レイケとです」

「ふむ? レイケがこの時間にいるわけがなかろう。彼女は学園内の見回りをする時間じゃ」

「そんな馬鹿な……」


 下級生といい、さやめといい……朝から何て日だ。そんなこんなでもなかちゃん先生に手を引かれ、注目を浴びながら教室に入ることになった。


 教室に入るとそこにはさやめの姿がすでにあって、さっきまで話をしていたことが確かだと言わんばかりに、舌を出しながら俺に悪態をついていた。


 それにしてもどうしてあんなことを聞いて来たのか、不思議なことが起きすぎた。あの子は一体誰で、何だったのか。さやめは否定したが、本当に知らない子だったのだろうか。

 その辺が何となく気になりだしたので、休み時間を利用して、後輩たちのいる棟へ行ってみようかと思った。

改稿しました。

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