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振り向けば妹がそこにいる件  作者: 遥風 かずら
第二章:さやめの変化
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27.さやめに「晴馬が好きなの!」って言わせてみたいと思った日。


 何でこうも人の家、俺の部屋で強気な態度に出れるというのか。自分の部屋ならマウントを取れると思っていたのに! どうしてこんなにも自分は弱気なままなのだろう。


「ほらほらー? どうした、どうした? わたしを押し倒すんじゃなかったのか? さやめごとき……面白過ぎるね。晴馬ごときがわたしにマウントを取れるとでも思ったかー? ウケるね」


「こ、このっ――!」


「目を瞑っててやるから、その間にやってみれば? 出来ないだろうけど」


「や、やってやる! そのまま目を閉じていろよ? と、途中で開けるなよ!」


「つべこべ言うなっての! 寛大すぎるわたしはヘタレ馬くんに五分くらいの猶予をあげるよ。五分以内に、わたしに触れることが出来たら、最後まで許してやる。その代わり、何も出来なかったら頬の痛みは覚悟しとけ」


「ひっ……」


 ここまで言われたらやるとこまでやってやる……が、まずは髪に触れて、額のほくろを確かめることにする。


「あ、そうそう、髪に触れる程度は触れたと認めないからそのつもりで」


「と、とととと……当然だろ? 髪なんていつでも触れられるしな」


「その言葉、明日も明後日も有効にしとくから、いつでも触りなね?」


 し、ししし、しまったぁぁ……! 言って後悔するとは思っていなかった。いつでもなんて言葉は非常に危険すぎた。この言葉はもちろん、あくまでも家の中での意味であって、学園とか外でするとは一言も言っていない。それなのに、コイツの答えは間違いなく所構わずいつでもどこでも……の意味じゃないか。


 それはともかくとして、まずはさやめの茶色がかった前髪に手をかけて、上にかき上げることに成功した。これくらいは迷うことなく出来た。


「うーん……? ほくろ……あ、あった。じゃあ、やっぱりさやめ……ちゃんなのか」


「わたしはわたし。そう言ったけど? 額と額をくっつけるのも、昔はよくしたよね。今もやれば? 出来ないかな、ヘタレ馬くんには」


「出来る! けど、今はそんなのより、さやめに触れてやるからな? か、覚悟しとけ!」


「あはっ! あははっ! さっきから声を震わせて、可愛いね? わたしを押し倒して満足しているんだろうけど、そのままだと情けなさ過ぎて晴馬の部屋で、泣きわめくけどいい?」


「は? お前が泣く? 泣くんなら勝手に泣けばいいだろ。俺は慰めもしないぞ?」


「本当に……? 確かに晴馬の部屋だけど、晴馬の家の中でもあるんだよなぁ。泣きわめいて、怒られるのは誰だと思う?」


「――うっ……な、泣くなよ? 絶対だぞ?」


 何だよコイツは! 押し倒されている状態でも、まるで勝ち気すぎるじゃないか。俺が何も出来ないと思ってそういう態度を続けているのが、何だかかなりムカついて来た。


「はい、三分経ったぞ? あと二分。叩かれるのはどっちの頬をお望み? ヘタレ馬くん」


「ふ、ふざけんな! さ、さやめっ!」


 咄嗟に出来たことといえば、真下に見えているさやめの胸に手を置いて、そのまま自分の手を動かすことしかなかった。


「あっ……んんっ……優しく、して?」


「いや、優しくしない」


「……なんて言うと思った? 胸に手を置いたくらいでそんな態度を出すとか、情けないね。さっすが、ヘタレ馬くん」


 コ、コイツはその辺のか弱い女子では無いのか? お嬢は手を繋いだだけで婚姻をなどと迫っていたのに、どうしてコイツはびくともしないんだ? こんなんじゃ触れたとみなされずに、間もなく強い衝撃が向かって来るじゃないか!


「後一分~! ほらほら、スカートにも手を伸ばせばいいんじゃないですかぁ? 足は閉じているから、こじ開ける必要があるけどね」


「さ、さやめ!」


「あっと、三十秒~ヘタレ馬くん? 無理かなぁ? わたしに触れられないキミはやっぱ――んんんっ!?」


 人工呼吸、いや……強引にさやめの唇を奪うしか、触れるうちに入らない。これは賭けだ。


「……ちゅっ……んんっ……んっ……ちゅっ……はぁっんっ……」


 こ、これはどこで息継ぎをすればいいんだろうか。自分としては唇を塞いで、軽く奪えばいいと思っていた。それがどうしたことか、さやめの両手は俺の両頬をぎゅっと押して……すでに叩く態勢だったらしいが、その手で顔を強制的に抑え付けられている。


 さらには執拗にすがりつくように、彼女の桜色にテカった小さな唇が俺の唇に迫って来る。


「んんんっ……ちゅっ……は、はるくん……」


「んぐっ!? んぐぐぐぐ……ちょっまっ……さ、さやめちゃん、あ、あのっ」


「はるくん、はるくん……!」


「ぐっ……も、もう無理……」


 顔を抑え付けられた状態で逃げることも話すことも出来なかったせいで、途中で強烈に眠気を感じてそのまま眠ってしまった。恐らく酸欠状態に落とされたと考えられる。これでは明日からは完全なる下僕の始まりかもしれない……そうは言っても、俺には難易度が高すぎた。


「あれっ? はるくん……あー、落ちたか。まっ、人工呼吸じゃなくて初心者がディープキスをしてきたのは褒めてあげるか。粘膜接触ってことで合格かな。せっかくだから添い寝をしてあげよう……はるくんは仕方がない男の子だなぁ。今度は意識を落とさずにキスしてみせろよ? そしたら言ってあげる」

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