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振り向けば妹がそこにいる件  作者: 遥風 かずら
第二章:さやめの変化
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25.「はるくんのお嫁さん」と言う彼女と、黒幕な人


「い、いつまでお待ちいただけるかな? さやめちゃんさえ良ければ、一か月後くらいまでには……」


「本気なの? せっかくはるくんに再会出来たのに、一か月も経ったらわたしはいなくなっちゃうよ? それでもいいのかな? わたしとのキ・ス」


「いなくなる?」


「ねえ、しようよ? はるくんの幼馴染み……じゃなくて、妹がキスを待っているんだよ?」


「で、でで、でも……」


「ちっ……」


「え?」


 何か舌打ちのような音が聞こえた気がするけど、気のせいだよねきっと。思い出のさやめちゃんが、舌打ちなんかするわけがないし。


「じゃ、じゃあ……す、するからね?」


「あらっ? 帰ってたの、晴馬」


「へ? お、お母さん? 帰ってたも何も、留守を人任せにしといてよく言うよ」


 舌打ちは気のせいだとしても、さやめちゃんが待っているのにキスをしないなんて、そんなのは男がすたる。どう見てもさやめだから躊躇してしまったけど、こんな機会はほぼあり得ない。するしかない! 


 そう思っていたのにまさかの親帰宅とか、つくづくツイていない。それもこれも優柔不断が原因かも。


「さやめちゃん? さやめちゃんがお留守番をしてくれていたの? え、でも……鍵はかけていたはずなのに」


「はい、おばさま。失礼ながら、鍵は隠し場所から借りて開けてしまいました。はるくんが来る予感がしていましたので、お料理を作っておこうかなって思って上がらせてもらいました。ごめんなさい」


「まぁ! そうだったのね。さやめちゃんなら鍵の在処は分かるものね! 大丈夫、怒らないわ。それに、晴馬の為に料理を作るだなんて、もしかして学園生活でも作ってくれているの?」


 学園生活でも? あれ? じゃあやっぱり、このさやめちゃんがいつものさやめなのか? でも話し方とか髪の色とか全然違うけど。


「いいえ、()()()は、あまり外に出ないので、はるくんとまともに会えていなくて、料理をするのも今日が初めてなんです。はるくんさえわたしを受け入れてくれたら、毎日でもお料理をするんですけど……」


「あらら、そうなのね。晴馬! あんた、こんないい女の子をほったらかしにしてどういう学園生活を送っているの? てっきりさやめちゃんが全て面倒を見ているものとばかり思っていたのに」


「ほえ? どんなって、一人で寮に住んでるよ。そこにさやめが無理やり……」

「……黙ってね、はるまくん?」

「いでででで!」


「どうかした? 晴馬」


「な、何でもない」


 強烈な捻りを手の甲に感じた。恐るべしさやめちゃん。やはりどう見ても同一人物なんだけどな……。


「晴馬は幸せ者だよね。こんなに可愛い許嫁が傍にいてくれるのですもの!」


「は? い、許嫁? え、なにそれ?」


「何って、さやめちゃんはあんたの許嫁でしょ? 昔から約束していたわよ。まさか、忘れたの?」


「ええええええ? 初耳なんだけど?」


 いやいやまさかそんな、そんなアホな。俺の思い出にそんなシーンは浮かんでないぞ? 買収でもされたのか?


「い、今の話は本当なの、さやめちゃん?」


「う、うん……わたし、はるくんのおヨメさんになるの」


 やばい凄く可愛い! そんな顔を真っ赤にして言うなんて、本当のことみたいだ。目の前にいるさやめちゃんが、いつもの可愛くないさやめと同じなわけが無い。きっと双子か何かに違いないんだ。


「えと、それじゃあ、レイケの方は姉ってことになるのかな?」


「……姉? 何のこと?」


「ほ、ほらっ、いつも俺と一緒にいるもう一人のさやめのことで、レイケって呼ばれている子のことだよ。さやめちゃんは双子だよね?」


「ちょっと、晴馬? あんた、何を寝ぼけているの? さやめちゃんが双子なわけがないでしょ! 許嫁なのだから、さやめちゃんは一人だけよ。あんた、疲れているんじゃないの? だから帰って来たの?」


 いやいや待て待て。お嬢のお屋敷に行った時に、そんなことを言われた気がしたぞ。妹と思っているのは俺だけだとも。あの時の発言は、実はわたしは姉って意味じゃなかったのか?


「さやめちゃん……いや、さやめだろ? いつものさやめだよな?」


「……あははっ、あはっ! おかしなはるくん。さっきから何を言うかと思えば、わたしはわたし。そのままだよ? そうですよね、おばさま」


 やはり買収済みか? それとも初めから知っていて下手な芝居をしていたとでも?


「晴馬、あんたの学園生活はさやめちゃんから聞かせてもらったわ。せっかく私やお父さんが一人暮らしをさせたのに、どうしてさやめちゃんの言うことを聞かないの? そんなだから、料理も作ってくれないのではないの?」


「――え? が、学園に転入する条件だから引っ越しをさせたんじゃなかったの?」


「そんなのあるわけないでしょ? 晴馬はいつまでたっても、お父さんや私に甘えっぱなし。それでは将来の為にならない……そう思って、さやめちゃんに連絡を取っていたのよ? さやめちゃんも晴馬の様子次第では、料理を作ってあげるつもりで寮に入ってあげたというのに。どうしていつまでも思い出に引きずられているのかしらね」


「お、思い出も何も、コ、コイツはさやめだよね? 思い出というか、俺が小さい頃に出会ったさやめちゃんでしょ? ハトコで妹みたいに遊んであげた……お母さんも見てたよね?」


「はるくん……ううん、晴馬。おばさまは知らないこと。だから、晴馬の部屋に行って続きを話そう?」


 目がヤバイさやめだ。まさにいつもの気配を感じている……どうやら本物らしい。そうなると、詳しいことまではお母さんは知らされていないということになる。


「俺の部屋があるの? 引っ越してリフォームして部屋を壊したとかじゃなくて?」


「息子の部屋を壊すとか、本気で言ってるとしたら母さん怒りますよ? あんたのお部屋は引っ越す前のままよ。二階に上がって、さやめちゃんとよく話し合いなさいね?」


「う、うん」


「行こ? はるくん」


「そ、そうだね。は、はは……」


 レイケさやめと今のさやめちゃんは同一人物? 髪の色はどういうからくりなんだ? 俺の部屋で話をするって言うなら、洗いざらい話してもらおうじゃないか! 俺の部屋ならマウントを取れる!

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