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19 猫神の森調査隊

「ねこさま、そっち行った!」

「了解よ、このっ!」


 目の前を猛スピードで兎が駆け回る。

 飛び掛かるわたしを物ともせずに、兎はスルリと身を躱して離れた位置からこちらを振り返った。


「キュ、キューイ」


 余裕綽々なその態度は、まるでわたしをノロマだと嘲笑うかのようだ。


「ぐぬぬ……このウサギめッ」


 顔を真っ赤にして歯軋りする。

 わたしたちはいま、集落を離れ少し遠くの森までやってきていた。

 目的はメタルラビットの捕縛だ。


「絶っ対に捕まえてやるんだから!」


 地団駄を踏みながら悔しげに歯を鳴らす。


「ねこさまファイトッ」


 ククリも兎の逃げ道を塞ごうと奮闘している。

 声援を背に受け、わたしは懲りずにもう一度兎へと飛び掛った。




 時間はいまより少しばかり遡る。

 それはライナロックの屋敷を出てすぐのこと――

 わたしはしょぼくれながら手に持った腕輪を眺めていた。


「……はぁ、……どうしよう……これ」


 視線を落とした先にあるのはメタルラビットの腕輪だ。

 さっき踏みつけて壊してしまった腕輪である。


 メタルラビットの素材は希少だ。

 その希少な素材をふんだんに用いて作られた腕輪の価値は当然ながら高い。


「……はぁ」


 自然と再びため息が漏れた。

 しかもこの腕輪は希少というだけではない。

 亡くなったククリの父親、フレムロックの形見としてマチェテに譲られる予定の腕輪なのだ。

 つまりはお金には換算できない価値を持つ品という訳である。

 そんなものを迂闊にも踏んづけた挙げ句壊してしまうとは――なんという痛恨事。


「ねぇククリ」


 肩を落として覗き込むようにククリに顔を向ける。


「……ん?」

「これ、どうすればいいと思う?」

「ん、…………修理する」


 バッと顔を上げた。


「こ、これ、直せるのッ?」

「ん、任せる。ついてきて」


 なんだ、直せるんだこれ!

 なんだかククリがいつもより頼もしく見える。

 わたしは案内されながら集落を歩いた。




「てやんでえバーロー! 俺っちならこれくらいの修理はお茶の子さいさいよ!」

「ほ、ほんとですかッ!?」

「当たぼうよ! ねこ様相手に、嘘なんてつかねぇぜ!」


 自信満々に胸を叩くこの方は、ガットさん。

 猫族の集落にただひとりの修繕屋さん――というか何でも屋さんらしい。


「ただなぁ、こいつはメタルラビットの腕輪だろう? メタルラビットの素材は希少だから、いま手元にはねえんだよ」

「そんな……どうしたらいいんでしょうか?」

「そうだなぁ、まずはともかくメタルラビットを捕まえにゃならん。素材さえあれば他ならぬねこ様の頼みだ。修理自体はタダでやってやるぜ!」

「あ、ありがとうございます!」


 こうしていま、わたしたちは森でメタルラビットと対峙している。

 メタルラビットはそもそも出会うことが稀だ。

 見つけること自体からして難しいその兎だけれども、ククリとふたりして森をくまなく探し回ったところ割と簡単に遭遇することができた。

 これは運が良い。


 メタルラビットは素早い兎の魔物だ。

 素早さを除けば他はその辺りの兎と大差はないのだけれど、なにせこのウサギは兎に角敏捷(はしこ)くて捕まえにくい。

 そのすばしこさ足るや通常の兎の三倍。

 警戒心だって並みの獣なんかよりずっと高くて、相応に逃げ出すのも早いから捕まえることがとっても難しい魔物なのだ。


 陽を受けて兎の体がキラリと輝く。

 メタルラビットの前脚と背中の一部は金属質な殻で覆われている。

 この殻が人気の希少素材で、これを使って作られたアクセサリーは装備した者の敏捷性を底上げする効果を持つため、非常に人気が高い装飾品となるのである。


「……キュイッ」


 飛び掛かるわたしを再びヒラリと躱したメタルラビットが、こちらを振り返り鼻で笑う。


「おのれ、ウサギ風情が……」


 鼻で笑われるのはこれで何度めか。

 さっきからもう何度もあたまから地面にスライディングしている。


「キュッ、キュッキュ、キュィ~」


 陽気な態度にイラッとする。

 まるで鼻歌でも歌うかのような鳴き声でメタルラビットが挑発してくる。

 完全にわたしのことを侮っているようだ。


「ふふ、ふふふ……」

「ねこさま?」


 いきなり笑い出したわたしをククリが訝しげに見上げた。

 可愛らしい顔を歪めて、なんだコイツって表情だ。


「……いいでしょう、わたしの本気を見せてやるッ。ついに自在に操るまでに至った我が力を、とくとみよッ!」


 バッと立ち上がり、大人気なく叫んで全身に力を巡らせた。


「目にもの見せてくれるわ! うおおぉぉ――」


 胸の中の熱い塊に意識を集中する。

 すると途端にそこから聖なる力が湧き上がってくるのがわかる。

 確かにそこに、神なる白銀の魂が宿っている――


「うおおッ! 変ッ、身!!」


 黒の瞳が黄金色に染め上げられてゆく。

 黄金に染まったその瞳を、縦長の猫の瞳孔が引き裂く。

 わたしの身体を隅々に至るまで、聖なる白銀の力が満たされ行き渡る。


「――キュッ、キュイッ!?」


 くつろいでいた兎が跳ね起きた。


「ふふふ……さあ、逃げ延びてご覧なさい」


 メタルラビットが「キュキューッ」と悲鳴を上げ慌てて逃げ出していく。


(くくく……もう遅いわッ)


 さあ、追いかけっこの続きをしよう。

 意識を集中して、大地を蹴り駆けだした。

 加速せよ――――




「いやー、どうにかなりそうで良かったわねー」

「ん、さすがはねこさま」

「えー、ちょとぉ……おだてないでよ、ククリ。そんなこと、……もあるのかなぁ」


 デヘヘと相好を崩す。


「デュフフ……」


 自然と気持ちの悪い笑い声が溢れた。

 森から集落へともどる帰り道。

 だらしなく笑うわたしの手には一羽の兎が握られていた。


「よぉ、嬢ちゃんたち! 戻って来たのかい」

「ん、いま帰ったオヤジ」


 集落への入り口に差し掛かったとき、見張りの男が声を掛けてきた。


「はい。ただいま戻りましたッ」

「それで首尾はどうだった?」


 さきほどの戦果――メタルラビットを掲げる。


「へっへー。見て下さいッ! 首尾は上々で、し、た……よ?」


 言葉が尻すぼみになる。

 あわわ。


「あ、あわわ……ククリッ……あわわわッ」

「ね、ねねねねこさまッ」


 どうしてここに!

 抱き合いながらふたりして震え上がる。


「うふふ……ククリ、ねこちゃん。なにが上々だったのかしら?」


 優しく微笑む声がむしろ逆に恐ろしい。

 見た目は優しい猫耳聖女さま。

 けれども中身はある意味鬼軍曹。

 そこには――見張りの男にならんで雷猫マチェテが立っていた。

 そのすぐ後ろにはライナロックの姿も見える。


「……ガットの奴から話は聞いておるよ。まったくお主らは、なにをやっておるのじゃ」


 初老の偉丈夫があきれ顔で「はぁ」とため息をつく。

 マチェテが一歩前に出た。


「もうッ……族長の屋敷での話を聞いていたのね! あれだけ言ったのにまた屋敷に忍び込むなんて、ふたりとも!」


 顔を見れば相当お冠のようだ。

 ぷんすかと湯気を立てて声を荒げている。


「ごめんなさいッ」

「ん、ごめんなさい」


 こういうときは謝罪だ。

 間髪入れずに頭を下げた。

 ククリも即座にわたしに続く。

 見苦しい言い訳は逆効果なのだ。


「本当にこの子たちはッ。ダメじゃない、どうしてこう何度も忍び込むのッ!」

「反省してますッ」

「ん、悪かった」


 すべてはシシヅの蜜が悪いのだ。

 けれども叱られている最中にそんなことは口が裂けても言わない。

 ひとしきりわたしたちを叱ったあと、マチェテは「ふぅ」と小さく息を吐いていつもの優しげな表情に戻った。


「……それにその腕輪はね、貴女たちが壊したんじゃなくて元々壊れていたのよ」

「……え? そうなの?」

「うむ、そうじゃ。その腕輪はの、フレムロックの奴が壊れたからと言って、儂の家に置いていったものなんじゃよ」


(なんだぁ……)


 わたしが形見の品を壊したんじゃなかったのか。

 ホッと胸を撫で下ろす。

 誤解だと分かって胸が軽くなる。


「でもだからといって忍び込んだことは――」


 そのあともマチェテから散々お小言を頂戴した。

 ふたりしてあたまを下げつつ嵐が収まるのを待つ。

 するとそんな様子を黙って眺めていたライナロックが口を開いた。


「マチェテ、もう良かろう」

「族長は甘いですよ」

「カカカ、そういうでない。さぁ、そろそろ集落のなかに戻ろうぞ」

「……はあ、もういいわ。ふたりともしっかり反省したわね?」

「はぁい、反省しましたぁ」

「ん、たぶん」


 みんなで肩を並べて集落へともどる。

 解散となり家へと帰る道すがら、後ろからマチェテがわたしたちの背中に声をかけた。


「そうそう。ねこちゃんは明日の組手、十本追加ね」

「――んなッ」


 罰か。

 仕方あるまい、甘んじて受けよう。

 だってマチェテは怒らせると怖いのだ。


「ククリもランニングに重しを追加よ。マリー様とベル様を頭に乗せて走ること。落としちゃダメよ」

「……うッ」


 ――そして後日。

 メタルラビットの腕輪はしっかりと修理され、マチェテの手からククリに贈られた。




 その日わたしたちは、猫族族長ライナロックの屋敷に呼ばれていた。

 呼ばれたのはマリーとベルとわたし。


「族長さーん。マリーとベルも連れてきましたよー」

「うむ。呼びつけてすまぬの、お猫様方」


 なんでも森の異常を探りに出していた調査隊が、無事に帰ってきたとのことだ。

 ライナロック屋敷の敷居を跨ぐと、すでにマチェテとククリが先に来ていた。

 ほかにも集落の主要な面子は大体この屋敷の広間に揃っているようだ。


「では、報告してもらえるかの」


 ライナロックが神妙な顔をして口火を切った。


「では報告します」


 調査に出ていた猫族の男性が深く、ゆっくりと頷き話し始める。


「我々調査隊は集落を出たのち、まずは川沿いに猫神の森へと向けて出立したのですが――」


 調査隊の男の話す内容はこうだ。


 ここ大森林の奥深くには、猫神(ネコガミ)の森、狗狐神(イヌガミ)の森、龍神(リュウガミ)の森が存在し、その各々に猫神、狗狐神、龍神がおわしている。

 猫族の集落を出発した調査隊は、このうちの猫神の森へと足を向けた。


「我々はギルドから呼び寄せた冒険者を護衛につけ、森の調査に赴いたのですが、……道中、多くの魔物に遭遇しました。それこそ普段の森からは考えられないほど凶悪な魔物に、何度もです」


 大森林におわす猫神、狗狐神、龍神の三柱の守神は、その神核から発せられる清らかなる力を大森林に(あまね)く届き渡らせている。

 この力により森の魔物の凶暴性を鎮め、暴走を未然に抑えているのだ。

 なかでも猫神の森、狗狐神の森、龍神の森は神域だ。

 特に守神の力に充ち満ちている。


 しかしときには強大な力を持つ魔物が、森の奥から出ようとすることもある。

 そんなとき守神たちは、その魔物が凶悪であると判じると、直々にこれを討ち倒してしまうのである。

 ゆえに凶悪な魔物は森の奥から出ては来られない。


「大森林を進むうちに、我々は違和感を感じるようになりました。その違和感は森を奥へと進むごとに強まるばかりで――」


 調査隊の男が語る違和感――

 それは守神の力の消失だ。

 奥に進むごとに強まる筈の守神の力が、行けども行けども僅かにも感じられぬ。

 そうして守神の守護を失った森では、凶悪な魔物たちが急速にその凶暴性を増しているのだ、と。


 報告を聞いたライナロックは眉間に皺を刻む。


「……ふむ、……続きを報告してくれるかの」


 調査隊の男が頷いた。


「猫神の森に辿り着いた我々調査隊の一向は、何故こうも守神の力が薄まってしまったのか、その原因を探ることにしました。そして……」


 男が一拍おいた。

 気持ちを落ち着けるように深呼吸をし、一同を見回す。


「そして我々は見たのです! とんでもないものをッ!」


 男は興奮した様相で報告を続ける。


「猫神の森――その最奥には何者かが争ったような形跡がありました」

「争った? 神域で争いが起きたじゃとッ!?」


 集落の重鎮たちが騒ぎ出す。


「いやッ、あれは争いなんて、そんな生易しいものじゃない! あれは大きな破壊の爪痕ッ、――山が砕け、森が灰燼と化し、大地には深い亀裂が穿たれていたのですッ! 神域は破壊されたッ!!」


 男は胸を手で押さえながら乱れた息を整える。


「……破壊の限りを尽くされた猫神の森。そこで我々は見ました」

「な、なにを見たのじゃ?」

「大地を抉る破壊の跡ッ。そこに丸くなって蹲る、大きな大きな……見上げる程に大きな――いっぴきの邪気を放つ龍の姿をッ」


 一同が息を飲んだ。


「なッ、猫神の森にそのような龍だと!? 聞いたこともないぞ!」

「もしやその龍が猫神の森を荒らしたのかッ!?」

「バカなッ! 猫神様がそのようなことをお許しになる筈がないッ!!」


 集まった面々が一斉に口を開いた。

 叫び声、嘆き、驚愕、怒鳴り声……喧噪が広間を包み込む。


 ――――ギリッ……


 雑多な声のなか、歯を食い縛る音が聞こえてきた。


「……マリー? ベル?」


 二匹に目を向ける。

 すると猫たちは、なにかを噛み締めるように牙を剥いてた。


「鎮まれぃッ!!」


 ライナロックが一喝する。


「皆のもの、鎮まれいッ!」


 騒がしく口を開けていた面々が、徐々に落ち着きを取り戻し始める。

 みなが完全に静まった頃合いを見計らってライナロックが重々しく口を開いた。


「……それは……龍神様やも知れんのう」

「――ッ!? そんなバカな! なにゆえ龍神様が猫神の森を破壊するッ!?」

「そのものの報告ではその龍には禍々しい邪気を放っていたと! 守神たる龍神様がそのように邪悪であるはずがない!」

「待ってください! しかし我々調査隊はその龍に、わずかな神核の力をも感じたのです!」

「……うぬぅ、いったい何がどうなっている」


 みんな混乱をしているのだろう。

 ふたたび口々に騒ぎ立てる。


 ――――ドンッ!


 ライナロックが拳で床を鳴らした。

 その音にみんなが正気を取り戻す。

 しばしの静寂ののち、ライナロックがわたしと二匹の猫たちに向き直った。


「……猫神の御三方様、なにかご存じではありませぬかな?」

「い、いえ……わたしはなにも。す、すみません」


 ゆるゆると首を振る。

 マリーとベルはなにか知ってるんだろうか?

 けれども二匹の猫たちは問いには応えず、背を向けて部屋を後にし始めた。

 その後ろ姿を見送ってから、ライナロックが嘆息する。


「……狗狐(イヌ)族の族長と龍族の族長に使いを出す。……とはいえ龍族は定まった集落を持たぬゆえ、接触は難しいやも知れぬが」


 ライナロックは眉間を指で押さえる。


「しかし最早、大森林で尋常ではない何かが起きておることは疑いようもあるまい。なんとか接触して情報をやり取りせねばの」


 その言葉に、一同も同意の声を上げた。


「ほかに報告すべきことはあるかの?」


 ライナロックが調査隊の男を促した。


「……はい。森で奇妙な集団に出くわしました」

「奇妙な集団?」

「軍服に身を包んだ男どもに優男がひとり混ざった奇妙な者どもで、……護衛の冒険者たちが言うには、あれは帝国の軍人どもだ、と」

「帝国……というとガルボナード帝国かの?」

「はい。しかしながら集団は我々と遭遇したあと、言葉を交わすこともなくすぐに去っていきました。ですのでそれ以上は分かりません」

「詳細不明か……仕方がない、一旦そのことは置いておこうかのう。それでほかには何かあるかの?」


 調査隊の男は首を振った。


「では今日の所は解散じゃ。ご苦労じゃったの」


 深まる謎を残して、集まった面々は千々に解散となった。




「……気を付けて行ってくるのよ」


 マチェテが心配そうな顔を見せる。


「知らない人について行っちゃダメよ? ご飯はちゃんと食べるのよ? 道順はしっかり覚えている? それに――」

「もう、マチェテったら! 大丈夫よッ!」

「ん。なにも問題ない」

「でもね、ねこちゃん、ククリ……心配なのよ……」


 マチェテは「やっぱりわたしもついて行こうかしら」なんて呟いて悩ましげだ。

 わたしはそんなマチェテの様子に苦笑してしまう。


「もうッ、大丈夫よ。王国にもどる冒険者さんたちに便乗して、ちょっと冒険者ギルドに行ってくるだけなんだから」

「でもでも……」

「ギルドで魔法適性を調べてもらったら、直ぐに帰ってくるわ。……それにいま森は物騒なんだから、マチェテが集落を離れる訳にはいかないでしょ」


 説得をするとマチェテは渋々ながら引き下がった。

 とはいえ得心のいかぬ顔ではある。


「おーう、嬢ちゃんたちー! 出発するぞー」

「はーい。いま行きますー!」


 護衛の役目を終えた冒険者たちは、その半数ほどがディズイニル王国へともどることになった。

 残る半数は引き続き集落の護衛に雇われたままだ。

 半数を残すのは、森での先行きを警戒したライナロックの判断である。


 前々からギルドで魔法適性を調べたかったわたしは、これ幸いと帰還する冒険者たちに便乗した。

 ククリも一緒である。

 もちろんマリーもベルも――


「じゃあ行ってきます!」

「本当に気をつけていくのよー!」


 マチェテに見送られながら冒険者の荷馬車へと乗り込んだ。




「王国ってどんな所だろうねー」


 わたしは荷馬車の荷台で揺られながら独り言のように話す。


「やっぱりエルフとかいるのかなぁ? あとドワーフとかハーフリング! あッ、そうだ! アリエルにもまた会えるかなぁ?」


 白猫マリーは振り向きもせず、黒猫ベルも同じようにソッポを向いて欠伸をした。

 ククリはわたしの膝を枕にして眠っている。


 空を見上げる。

 遠くまで見渡せる澄み渡った空――今日もいい天気だ。


「王国、楽しみだなー」


 わたしは青く高い空を見上げながら、ゴロンと荷台に身を投げ出した。

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