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「Neo・Evo」の断片

作者: 風切の猫








 どえりゃ〜疲れたでかんわ〜!

 きちんとお時間ご用意できましたか?

 出来るだけ急がず、ゆっくり読んで下さいやせ。

 さあ!それではっ!あっしの取って置き!

 始まりやす!!













 現在いまより未来か。はたまた過去か。地球ではない、宇宙遥か彼方に人類が棲む惑星ほしが、別に在る。この世界もまた今が存在するための積み重ねられた過去がある。

 しかし。人は過ちを犯すもの。此処もまた同じ。


 そう。そして、人々が築き上げてきた歴史の一角に様々な流れが交錯し、破壊し合い、破滅へと向かった混沌の時代が刻まれている。

「崩落の世」

 そう呼ばれた戦乱はもう、この世界では遠い過去であり、ただ数十年に及んだ、単なる歴史の出来事に過ぎない。もはや、詳細を知る者は極僅かである。……否、恐らく一人しか存じる者はいないであろう。

 

 今をゆく人々には既に忘れ去られてしまった、勇敢なる者達によって導かれた歴史を、私が、此処に記そう……。



 この世界を人々はヴァールスと称する。

 過去に各国で紛争が起き、数百も在った国は力によって統一されようとしていた。しかし、絶え間なく続く争いにより地は荒れ、空気はよどみ、生物の種は減り、未だ生きながらえる者の心は、とてもすさんだものとなっていた。

 その中、世界にある異変が起こる。

「フール」

 愚者の意の名を持つ異型の存在が突如現れる。彼らは神出鬼没に出現し、世界を織り成すあらゆるものを破壊する。破壊の対象は人の命も含まれる。何故生まれたのか?どういった意志を持ち行動しているのか?全く何も分からない。人々にとってそれは恐怖のほか無かった。

 だが、異型の者に対抗する手段を、その誕生とほぼ同じ時に人々はあるものを生み出す。

「魔」

その力は非常に危険な物だった。僅かのエネルギーから様々な現象を引き起こすというもの。 すぐに日常へと普及していったが、一番に目が付けられたのがやはり、フールや敵国を退治するための兵器への利用。このご時世、常に争いが続けられる今、至急に導入されていった。


 こんな混沌とした時代。ある組織が発足される。

「オゾン」

 国ではなく、民間によって自らフールを退治する。それを目的とした組織だ。

 自分の身は自分で守らなければならない。発足者はそう考えたのであろう。争いに、一番犠牲を被ることになる民は、国境を越え、オゾンを中心に瞬く間に結束する。そうしてオゾンは活動範囲を拡大していった。


 オゾンは数百も有るチームが本部を核に統合し、成り立っている。チームが主にフールを退治する。

 そして最近、飛躍的に肥大し、成果を上げるチームが在る。

「エヴォ」

 確か、そんな名だ。リーダー、ブレッドを中心に数々の有能な戦士達が集う。オゾンの中ではこのチームをエースと称し、讃えている。

 しかし、今、エヴォはオゾンの規則を反しようとしていた。

 あくまでオゾンはフール討伐のための組織であり政治に一切、干渉しない。これは鉄則であり、破ればチームは組織から追放され、本部からの援助を受けることが出来なくなり解散せざるを得ない……。



 ここで話は変わるが、大国「イオディア」と「アトリアグム」について説明しようと思う。


 まず、イオディアだが一言で申せば‘連合国’

 二年前、十数もの小国が合併を結び、規模を拡大させた。ただ未だに全体を統率するための指導者が決まっていないため、政治に支障をきたしている。

 そのため、国民の国家に不満は大きい。元々、別の国々の集まりであったため、内部での差別や民同士の紛争も絶えない。


 次にアトリアグム。この国は提督ブラーを主とする、云わば帝国である。

 ブラーは民全て戦争に駆り出し、一部では暴動が国内で起こっていた。ただ、多くの民は「我らこそこの世界の支配すべき者であり、常に勝ち続けなければならない。私たちは選ばれし者なのだ」このブラーの狂言に影響され、精神にも深く浸透。ブラーに忠誠を誓い、国は主によって動いているといっても過言ではない。


 連合国と帝国。成り立ちや系統がまるで違う二つの大国の争いが始まろうとしていた。

 事の発端はイオディアのジャーナリストの記事がブラーの目に入ってしまった。記事の内容は「アトリアグムを統べる悪の権化ブラーの真相」を見出しに数々の彼に対する誹謗中傷が書かれていた。

 彼は記事を元にイオディアに興味を持ちだした。戦力からすれば今の状態では叶わないと考えていた。だが、その記事にはイオディアとアトリアグムを比べたものもあり、一文に、「アトリアグムは侵略を続け、世界を手中にしまいと動いている。しかし、我が国イオディアは建国七年も経つにも係わらず、これといった指導者が現れない。このままではアトリアグムの手によって支配される日も近いのでは無いだろうか。一刻も早く……」

 イオディアの現状を知ったブラーは即座、行動に移す。……宣戦布告。

 等々、イオディアに戦争を仕掛けた。後にリトラの瞬戦と呼ばれるのだが、戦死者はたった一人……。歴史上、リトラの瞬戦には意味はなかったと言われている。だが、真実は……。


 今回、記す話はこの瞬戦の真相である。



〜〜リトラの瞬戦前日 中立国‘タブ’ 首都‘リックスザート’ ‘マグロ’の宿にて〜〜


 ここでエヴォ、最後の作戦会議が終わろうとしていた。


「……以上が作戦内容となる。質問はあるか?」

 青髪の青年が各メンバーに質疑を問う。やたらガタイのいい老人が手をあげる。

「この作戦を終了したときには〜……恐らくチームの継続は無理じゃろう。……ワシらみたいに〜…帰る場所が在る者はいいが……それ以外の者はどうじゃ?……身の保障はしておるのか?」

 老人は口をへの字に曲げ、心配そうに問う。

「問題は無い。一部のチームに我らのする事を説明し、分裂後のメンバーの引き取りを承諾してもらった」

 発言に対し老人はひどく驚いた。

「?!ザンよ!作戦を他の者に話したのか!?」

 つい、大声を発する。大声に同席していた者達が驚く。確かにエヴォ最後にして、最悪の作戦を他者に話すなど言語道断である。

 疑問に対しザンと呼ばれた青年は、冷静に誤解を解く。

「一部のチーム……とは言っても、グローリーにのみだ。他には言ってないさ」

 グローリー………幼き少年をリーダーにお付きの者が二人いるだけのEランクの弱小チームだ。

「ふむ。なら良いな」

 エヴォはダブルSのチームなのだが何故かグローリーと親交が深い。まあ理由は……また別の話になるのでやめておこう。とにかく、老人は納得した様子だった。

「他!あるか?」

 質疑を続ける。ザンは全体を見渡し、質問者がいない事を確認する。

「よし!これにて作戦会議を終了する。各自、部屋に戻り、明日に備えゆっくり休息をとってくれ!」最後に付け加え、

「あっ。それとブレッドは残ってくれ。話がある」


 メンバーは自分達の部屋へと戻って行く。広間に残るは二人となる。



 ブレッド………この話の中心人物。エヴォのリーダー。ブレード型の魔製兵器を操る。元イオディア軍兵士。軍の在り方に疑問を抱き、脱走した。本来の倒すべき敵はフールだ、と考えオゾンに入る。現在に到るまで様々な感動や体験をし、勇敢なる青年へと成長した。心優しく、責任感がとても強い。


 ザン………ブレッドの幼馴染、そして親友。エヴォのサブリーダー。ソード型の魔製兵器を振う。彼も元イオディア軍兵士。とても優秀、言わばエリートであった。だが、ブレッドが脱走する意思を打ち明けた時「お前が此処を出るというのなら俺も出よう」そう言い放ち、共に脱走した。ブレッドに対しかなりのお節介。普段はけっこう気さく。ちなみにこの作戦の総合指揮を担当。


 ブレッドとザン。二人はエヴォの初期のメンバー。正確に言えば、エヴォを立ち上げたのは二人によるものである。一年前、イオディアの軍を二人で脱走し、様々な出来事を経て、オゾンに入った。彼らは互い同士を親友と呼べる存在であり、常に行動を共にして来た。

 他にも要因は有るのだが、エヴォがここまで大きくできたのは二人の活躍によって、と言っても過言では無い。


 広間に二人しかいない沈黙の中、ザンは重い口を開いた。

「……ブレッド……クリアの事なんだが……」


 クリア………二人の軍人時代の後輩。女性ながら、自ら軍人の道を進み、厳しい訓練をくぐり抜いてきた。クリアとブレッド……特別な関係ではあるのだが……それもまた別のお話。彼女はこの戦争の……。


 ブレッドは目を合わせることなく、俯きながら応えた。

「……皆には本当にすまないと思ってる。…………俺のせいで……」

 ザンはカッとなってブレッドの胸ぐらを掴み、顔を目の前に寄せた。

「そんな事が聞きたいんじゃない!エヴォのメンバー全員、お前のために動いてくれてるんだ!なのによ…………やる気あんのか!?なあ!!」

 ザンはブレッドの心境を察し、柔らかく言おう心掛けていたが、無理だった……。歯止めが効かないザンは更に、言い放つ。

「クリアの事!お前、本気で助けたいと想ってんのか!?」

 流石に聞き捨てならない。ブレッドは言い返した。

「想ってるさ!何言い出すんだ!どうしたんだよ!?」

 ザンは一息つき、掴んでいた手を放した。今の言葉に感じたものがあったみたいだ。

「ならいいんだ」

 なぜか、笑った。ブレッドの肩をポンポンと二回叩き、部屋の出口へと歩を進めた。

「なんだよ……一体……」

 ブレッドが呟く。ザンが足を止め、振り返りもせず、言った。

「明日……二度とさっきのような態度。……見せんじゃねえぞ」

 ようやく、理解した。プレッシャーに押し潰されそうになっていた自分への彼なりの励ましなのだと……。ブレッドはそう捉えた。

 ザンが広間を出て、一人となる。

 上を見上げて、

「そうだよな……俺がやらなきゃな。正直、ビビってた。まっ……さすがは親友ってか。ありがとうな、ザン」先帰った親友にむけ、一人、感謝を呟いた。



 〜その夜 マグロの宿 裏庭〜


「やけに大げさに言ったな」

 小さな裏庭のベンチに腰を掛け休んでいたザンに、誰かが話しかける。

「シュウさんですか……。もしかして聞いてました?」


 シュウ………エヴォのメンバーの一人。ヴァールスではもう珍しい、魔を使わない、オールドタイプの戦士。しかし、身体能力は半端なく、特に脚力が凄まじい。基本的に腰に掛けた長剣でフールと戦闘しているが、何故か背中にとても素晴らしい槍を背負っている。一切、使わないが。


「少なくとも、俺はあいつのために協力する訳ではないのだがな」

 瞬に、鼻で笑い、意地悪を言う。

「良く言いますね。自分からあの立場を引き受けたくせに」

 質の悪いシュウに、ザンも意地悪く言い返した。シュウがザンの横の席に座る。槍が邪魔で座りにくそうだ。

「槍、外したらどうです?」

 優しくツッコミをいれる。

「……それもそうだな」

 シュウはそう言って、また立ちあがり、背中から槍を外した後、すぐ横の木に立てかける。

「……それ、譲ってくださいよ。高値で買い取りますよ」

 どう返事が返ってくるかは解っていたが、とりあえず聞いてみる。

「バカか。この槍は大事な物だ。譲れん」

 ザンとシュウは話す度にいつもこれと似たようなやり取りをする。シュウは頭を掻きながら、再びベンチに座り、話を切り返す。


「どうだ。ブレッドは。明日は大丈夫そうか?」

 やはり心配だったのか彼の具合を聞いた。

「ええ。恐らく。ただ……」

 腕を組み、渋る。

「ただ、なんだ?不安要素が別にあるのか」

 別の疑問が頭の中に過ぎる。

「否、何でもありません。単純に悪い予感がしたものですから……」

 ザンは顔を横に振り、否定を表す。

「心配するな。俺が同行するんだ。もちろんミスはしないさ」

 彼は心から信頼できる。しかし、それでもザンの中からは不安は消えなかった。

 …………視界に拳が映る。

 シュウは含み笑いをして、力強く拳を突き出していた。意を察し、同じように拳を作る。

「明日は絶対、いい日にしようぜ」

「……もちろん!」

 彼らは互いが作った決意を合わせ、明日を約束した。


 ……帰り間際、ある事に気付く。

「槍、忘れてますよ」

 シュウは慌てて戻っていった。槍を肩に掛け、ザンに頭を下げた。

「ありがとな」

 …………本当に大丈夫なんだろうか……。



〜同時刻 マグロの宿 203号室〜


 この部屋はブレッドとザンが泊まる場所となる。今はブレッドがベットの上で寝そべり、休息を取っていた。……ドアをノックする音が聞こえてきた。

「どうぞ〜。開いてるよ〜」

 そう返事した後、女性とさっきのガタイのいい老人が入ってきた。

「なんだぁ……思ったより元気そう」

 女性はブレッドの様子を伺い、残念そうに言った。

 体を起こし、言い方が気に食わなかったため文句を言う。

「…んだよ、ジェニス。からかいに来ただけなら帰ってくれよ」


 ジェニス………エヴォの一員。ブレッドとザンとは幼馴染であるが、幼い頃に、ある事故で行方不明となっていた。二人が軍を出てすぐ、困っていた処を助けたのがジェニスだった。それ以来、ずっと二人に同行している。彼女もフール退治には参加しており、ダガータイプの魔製兵器を二刀流で扱う。かなり俊敏。男勝り。


 帰って行く。どうやら本当にからかいに来ただけらしい。……出口を出る直前に足を止めた。振り向いた……。

「ねえ!何か言ってよ!止めたりしようよ!私、このまま帰らなきゃイケないみたいじゃない」

 どうやら、ボケだったみたいだ。だが、ツッコムのも面倒くさかったから、ブレッドはそのまま帰って貰う事にした。

「………」

 戻って来た……隣のベッドに腰を掛ける。両手を腰にあて、眉間にしわを寄せて、怒ってますよと言わんばかりの態度をとる。

「折角さあ!私が励ましてあげようとしたのに……。トムじーちゃんもなんか言って!」

 トムじーちゃんと呼ばれた老人は、目を彼方に逸らし、困惑気味に応える。人指し指で頬を掻きながら、

「いや〜何か言え……と言われてものぉ……」


 トム………この方もエヴォの一員である。若い頃、ゼクの国(現イオディア)で兵士長を務めていた経歴がある。しかし、ある事件の責任を背負わされ、若くして辞任させられている。 それからは辺境の地でずっと隠居生活をしていた。ブレッドとの関係は軍に入る前まで親代わりとしていた。ちなみに二人が脱走して、最初に目指した場所が彼の家である。


「まあ、元気そうで何よりじゃ。明日は気張れよぉ〜。ホッホッホ〜」

 ブレッドの頭をぐしゃぐしゃ〜と撫で、去っていく……。

「お!おおい!じーちゃん行かないでくれぇ!」

 焦る。まあ、理由はなんとなく察してほしい。

「な〜にを言うか。若いもんの邪魔するほどわしは野暮じゃ〜ないぞぉ〜」

 出て行った……。この部屋に沈黙の時が流れる。


「………」「………」


 何時までこの間は続くのだろうか……。

 

 ……沈黙を破ったのはブレッドだった。

「……俺、そんなに辛気臭い顔してたか?」

 皆に心配され、自分がそこまで顔に出やすいとは思っていなかったため、少し疑問に思っていた。

「うん。かなり」

 やはり、そうだったか、と彼は肩を落とす。

「ま〜かなりお疲れなだけかな〜と思ってただけなんだけどさ」

 ジェニスはとぼけ顔で応えた。

「うそつけ。……‘だけ’っていいすぎなんだよ」

 ジェニスは意識して嘘を付く際、だけ、という言葉がやたら増える。鼻が伸びるのよりは判りにくいが、ザンがこの特徴を見抜いてからは簡単に判別できる。

「いや〜ばれたか」

 ハハハっ、と笑いながら自分の嘘を認める。認めたはいいのだが、余計に自分の言ったことをフォローする。

「でも。……本当に心配したんだよ。

 ……フフッ…なんてね。だけ、だけ、だ〜け〜。ハハハっ」 

 少し、真に受けてしまったブレッドは、恥ずかしいと感じる。それと同時に彼女に対し、軽い苛立ちも覚え、手が出る。

「人をからかうのもいい加減にしろ!」

 彼女は舞うように彼のパンチを避ける。そのままの勢いで出口のドアの前まで行った。……急に立ち止まり、振り返る。その時の表情はもう、お茶らけたものでなく、静かな微笑みだった。

「……明日。……絶対、成功……させるんだよ。……私も頑張るから」

 ジェニスは、グーにした手をブレッドに突き出す。そして部屋を去った。

「……ああ。当たり前だ」

 彼の決心の力はさらに強まった。 



〜〜リトラの瞬戦当日 早朝 イオディア リトラ荒原にて〜〜


 急遽、アトリアグムの進撃が早まったとの報告を受けた。もちろんエヴォも作戦開始の時刻を早める。両軍の衝突予定時刻まで、残り三十分を切る。

 作戦は3チームに分かれて行動する。ザンやジェニスは別行動だ。

 移動手段を徒歩からバギーに換え、予想しうる戦闘ポイントまで飛ばした。

 ブレッドが参加する作戦に自身を合わせ四人。ブレッド、シュウ、ジーナ、ラリル、だ。ここで初登場の二人を紹介しよう。

 まずは。

 ジーナ………エヴォの一人ではあるが条件付きだ。シュウが居なきゃだめ。という条件だ。彼女はソード型の魔製兵器を扱う。戦闘能力は未知数。判定不能。多分、人ではない。それほどの強さ誇る。なお、絶世の美女と呼ばれるほどの美貌の持ち主だが、本人にはまるで自覚がない。

 次には。

 ラリル………エヴォには登録されていないが、よく付いて来る。以前は孤高の流離ハンターとしてオゾンで成果を挙げていたが、今ではシュウの助手をしている。背がとても低く、いつもフードを被っているため彼女の素顔を見た者は極僅かだ。一応、子供では無いらしい……。


 四人はバギーで目的地を目指しているのだが、天候は嵐で最悪だ。バギーの運転手のジーナは必至である。

「ジーナ!まだ着かないのか!?」

 焦りからか助手席にいるシュウが吠える。

「頑張ってるから!多分、もうすぐ見えてくる!」

 そう言い、物凄い振動に振り回されながら腕に付けたナビマップを見る。……何故か怒らない。

 後ろにいる、ブレッドとラリルは車体にしがみ付き、落されないよう耐えている。

「おい、ちょっと、あれ!」

 何かを見つけたようだ。

 シュウは真後ろにいるブレッドに双眼鏡を手渡そうとする。が、振動が酷く、なかなかうまくいかない。

「くそ!振動ひど過ぎだ!」イライラが募る。

「ごめん!我慢して!」急がなきゃいけない状況だ。仕方がない。

「なっ?!」

 双眼鏡を受け取り損ね、落としてしまった。ラリルの方へ転がる。

 ……難なく拾い、ブレッドに手渡す。拾う最中、彼女は微動だにしていなかった。只者ではないな。

 受け取った双眼鏡に目を当て、遠くに見つけた黒い影を見る。強く降り続ける雨がレンズに当り、なかなかうまく映らない。

「……それでは見えない。……これ……」

 ラリルはブレッドの真横にピタリと付き、雨を遮るため、傘をさす。

「あ……ありがとう」

 感謝の言葉を述べ、もう一度遠くを見る。……黒い影の正体はやはり二つの国の兵士たちだった。

「もう、始まってるのか?」

「いや、まだの用です。急げばきっと間に合います」

 兵士達はまだ対峙している。見た限りでは動きはまだ無さそうだった。

 …………左の大軍の先頭に知りうる人物がみえた……。

「クリアっ!!」



 この間、イオディア軍の本部に潜入した時があった。目的は二つ。一つは直接、上層部への戦争放棄の説得。フールの活動が活発化している時にこんなことしている場合ではないと。オゾンも許可を下し、他のチームへの要請をかけてくれた。本来なら目的は説得のみだが……ブレッドとザンは違った。もう一つの目的が。

 クリアを連れ去る事。噂でイオディア、アトリアグム間で戦争が起きる、と聞いていたためもし、そうなってしまった場合、彼女は確実に巻き込まれる。助けるチャンスは今しかない、と二人は考えたのだ。……しかし。

「……御免なさい。私はもうここから抜け出す事はできない」

 二人とって予期せぬ返答が返ってきた。クリアは続けてこう話した。

「戦争が起きるのは本当よ。それで軍部長直々に、ある役目を言い渡されたの。後戻りは……できない」

 重要な部分だけ伏せた答えだった。

 …………もしかしたら。


 ……そして。

 

 嫌な予感は的中していた。ザンはクリアの言い訳を元にある仮説をたてていた。軍……否、国は彼女を殺すつもりではないか、と。最前線に置き、英雄に仕立て、兵や国民を鼓舞する。以前にそのようなケースを聞いたことがあるため、彼女と照らし合わせたのだ。

 目前で起きる光景はその通りになっていた。

「くそ!ザンの言ったとおりかよ!」

 …………兵達が動き出す。変化が見え、四人に焦りの色が見える。

「まだか!ジーナ!」

「が、……頑張ってるから……。……もう!」

 素直に動いてくれないバギーにとうとう苛立ちを見せ始めた。

 一秒がとても長く感じる。右側はアトリアグムか。どんどん迫って行き、二つの塊の間の距離が縮まって……。

 ……数人が迫り来る者達に対し、飛び出していった。あまりに無謀な行為を目撃し、四人は唖然とする。

「……あれはまさか。……クリアか」

「……はい」


 兵達が発する騒音がでかくなる。足音、怒号や…………悲鳴……。

「クリアーーーーーー!」

 この距離だと何が起きてるか、もう目視で直接、確認できた。ブレッドはバギーから飛び降り、空かさずクリアに群がっているアトリアグムの兵達に向け、一太刀振った。ブレードの魔製兵器は閃光を帯び、一直線に標的に伸びてゆく。閃光は彼女を掠め、兵達に直撃した。

 ブレッドは急ぎ、元へ駆け寄る。

 クリアは崩れるが如く、倒れた。抱きかかえたその体はおびただしいほどの血で染まり、小刻みに震えていた。

 三人が遅れて駆け寄る。

 兵達に囲まれ、四面楚歌の状態。もうこの数と闘う覚悟はできている。そのつもりで来たのだから……。

 ……対峙。


 ………。


 両軍がなにやらざわつく。突然の乱入者たちに驚いているのだろうか。

 

 …………暫くし、退き返していった。何故……?

「他の奴ら、うまくいったのか?」

 別行動をしている者達は両国にそれぞれの形でこの争いを止めようとしていた。だが、彼らが引き返した理由はそうではなかった。

「違うわ!……郊外からフールの大群が来るっ!……この数は…………在り得ない……!」

 膨大な量のフールがここに来る……。兵達は一気に退いていき、もう姿は遠くにしか見えない。

 自分たちも早く此処から逃げなければならないのだが……。


 ブレッドの心情にそれを思う余地はなかった。

「クリア!しっかりしてくれ!」

 傷が深いものから、浅いもの、無数に刻まれ、彼女自身の意思で動くことは不可能な容態だった。震えですら徐々に弱まっていく。命の灯が手の中で消えていくのを感じた。


 しかし、その表情は……微笑んでいた。彼女にはそんな余裕、無いはず……。どんな意があるのか。ブレッドは理解できずにいた。


 ……口が…………動く……。感謝の言葉は声にならず、ただ動くだけ。


「絶対……絶対、生きてかえるんだ……!」


 ブレッドに、言葉は届かなかった。


 それでも、彼女は薄れゆく意識の中……ずっと……。


「急いで!急いでバギーへ!」

 間に合わなくなる前に、戻る事を促す。ジーナが駆け寄り、ブレッドの肩を掴もうとした、その時……。


「……クリア?、……クリア、……なあ………………………うああああああああああああ!!!!」


 三人は直接見ること無くとも、叫びの理由をすぐ解釈した。


「……チクショウ」

 シュウは拳を握りしめ、表情から怒りすら窺える。


 ジーナは俯いたまま……動かない。


 ラリルからは大きなため息が一つ、漏れた。


 彼女が、どうなったのか……。何が起きたのか……。恐らく、もう……。 

 







 一人と三人にそれぞれ、悔しさなど、色々な負が心の中に、この嵐の如く渦巻いて来る。














 ……彼の慟哭どうこくは雨音と風音のなか、響き、そして、



 …………すぐ掻き消されていった……。























































……現時点での全力を注ぎ込みやした。心に少しでも響かせる事ができたのなら願ったり叶ったりです。


……正直、でも、あっしとしては複雑でございやすね。


……自己評価は100点満点中20点、、、


やっぱ赤点っすよ。妥協しまくり。自分自身の表現の乏しさを痛感しました。

半年後、書き直し決定ですね。


うっしゃーーーー!!!!

執筆頑張るぞーーーー!!!!

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