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自作小説倶楽部 第13冊/2016年下半期(第73-78集)  作者: 自作小説倶楽部
第73集(2016年7月)/「天の川」&「灯(カンテラ)」
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04 らてぃあ 著  天の川 『彼は宇宙人』

「実は僕は宇宙人なんだ」

 彼の突然の告白にあたしは反応を忘れて停止し、食べようとしていたアイスはスプーンから零れ落ちて喫茶店のテーブルクロスにしみを作った。

「えっと、それはどういうことかな」

 目の前の彼は中肉中背という体形で、黒髪黒目、一重まぶたで凹凸の少ない顔立ち。どこを見ても典型的な地球人種、モンゴロイドだ。でも顔色が以前より悪いような気もする。あとで一か月前の映像と比べてみよう。

「信じられないかも知れないが、僕はアルタイル寄りの天の川の中にある惑星の一つで生まれた。故郷の政策によって地球人の子供の姿にされこれまで地球人として生きて来たんだ。でも地球人として生まれて25年、ついに故郷から通信があった。いや、君と別れたいんじゃないんだ。任期はいつまでになるのかわからないからこのまま地球人として生きていくほかない。僕はいずれ故郷の星の政府が平和裏に地球を征服するために活動をしなくてはならない。君には協力者になってほしいんだ。昨日、僕は日本の総理大臣とアメリカとロシアの大統領に手紙を書いた。僕の故郷の高度な文明と知性をわからせるためだ」

「ちょっと待って、あなたは本当にただの平凡な地球人よ。付き合う前に調べたんだから」

 あたしは話しながらPochiに通信を開いた。恋愛でこういうパターンがあるのか? 地球人の異常行動?答えは『精神錯乱』。

「あなたのどこが地球外人類なのよ」

「外見ではわからない。血液も赤に見えるように加工されている。でも脳の発達が際立ってる、はっきりした違いは耳の器官だ。蝸牛のねじり方が特殊でさらにそれはもう一つの神経で脳に直結されている。それによって僕は故郷と交信ができるんだ」

「そんなものあるわけないでしょう。それに脳の発達を自慢するなんてものすごく下品なことよ」

 どこか自分に陶酔している彼の顔に嫌悪感すら覚えてあたしは彼を異空間に引っ張り込んだ。

「おお」と声を上げて彼は目を潤ませて周囲を見回す。

「これはあなたじゃない。あたしがやったのよ。あなたが『宇宙人』かどうかよおく見せてもらうわ」

 あたしは彼の頭にレーザーカッターを差し込んだ。

「なんてことをするんです。うっかり殺してたら地球滞在許可取り消しになりますよ」

 彼の状態を観察しながらあたしのアシスタント人工知能、通称Pochiは言った。

「殺してませ~ん。ちゃんと時間停止してあるし、つなぎ合わせたら生き返るわ」

「でも、念のため記憶操作をしておいた方がいいでしょう。あなたとはパターンAで別れたことにしておきましょう」

「それって、あたしが浮気することになってるわよね。あたしが悪いなんて納得できないわ」

「これまでのデータから、それが一番男性に未練を残さないとわかってます」

「あ~あ、どうして、あたしが付き合う相手って変なのばっかりなんだろう」

「過去の観察対象を含めて原因を調べておきましょうか」

 あたしはNoを選択して自室に戻った。

 端末から書きかけの論文『地球人の生殖行動初期段階の行動』を立ち上げる。これはもともと『地球人の恋愛行動』というタイトルだったのに、指導教官に変更を命じられたものだ。どうして皆『恋愛』という言葉の美しさをわからないのだろう。

 何はともあれ、論文を完成させるためにまた、恋人を作らなければならない。次はどんな地球人がいいだろう。いっそ対象を女性にしてみようか。

 Pochiには内緒でちょこっと記憶を操作すれば簡単なことだ。

     了

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