寒色の欠片
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病院に行って帰ってきた頃には家族は欠けた。
家の中の慌しさは消えず、悲しみも消えることは無い。
よりいっそう増したように思えた。
11:51p.m
少年は涼しんだ自分の部屋のベットの上で考え事をしていた。
少年の手首には薄ら手の後があった。
それは、母が最後の力で掴んだところだった。
力はさほど出なかったのに、何時間かたった今もなお残っていた。
「どういうことなんだ…」
その時異様なほど時計の針の進行する音が脳に叩き込んでくる。
気になって寝ることさえもできない。
「もう少しで、、今日が終わる」
切ない気持ちがこみ上げてきた。
それほどでもなかった誕生日はこれからはよりいっそう嫌な日になるのかもしれないとふと思い、母のあの大きな背中がちらついてきた。
なぜだか、あの祠の側の母だけが印象に残り、どんな顔をしてたっけと必死に思い出そうとした。
ザラザラとちらつく過去の姿。
その時の映像が少し後ろを向き、口元を動かす。
「なんていったっけ」
母の声も思い出せない。
無頓着だったなとしみじみ自分の性格を意識した。
ただただあの醜く太った痴呆の母体だけがのこった。
行ってみようか。
行ってみたら、自分の母をしっかり思い出すかもしれない。
少年は、夜にも関わらず目覚めている身体に満ち溢れた行動力を覚えた。
遠くから祠をみたが少し怖くて気が引けた。
それと同時に、今朝見たあの中のものを思い出した。
そっと近づくと、朝には普通の石に見えていたものが、周りが暗くなったことで、少し光を放っていた。
それは青く水色くて紫も混ざっていて、いわゆる寒色というような冷たい色をしていた。
その時、一瞬冷たい風が背中を押し、一歩前に出てしまう。
その振動かわからないが祠のドア部分が欠けて開いた。
それと同時にもうひと風、長めの風がふく。
砂埃が舞いあげて、目を閉ざしてしまう。
止んだあと目の前の祠をみると寒色のものが目に入った。
11:59p.m
部屋の時計の音がまだ耳に残って、それが手を伸ばすきっかけとなった。
寒色は何か真っ二つに割れ、それの一つのようなギザギザな縁をしていて、そっとなでてみる。
するとその欠片は強く光り、何かに捕まれた。
「わっ!!!?」
この感触は…
母の手形にぴったりと収まる手が少年の手を引き、それと同時に意識は途絶えた。