12
12の誕生日をこんな田舎に来るとは思わなかった。
母の痴呆の進行具合など無関心であった少年には、住み慣れた中心部への思い出の方がよっぽど関心度が高く捨てがたかった。
しかし、血縁関係というものと、1人で暮らせぬ自分にとって足掻くことが最も面倒である。
田舎な静かなところも悪くないと受容せざるおえなかった。
その日の母は深刻であった。
ただ古く、からからな田舎な家にしては、朝から慌しいほど人々の体重で軋む音が耐えなかった。
「危篤状態だ…」
それほど無知ではなかった少年には、すっと入ってきた。
祖母は悲しみに入っていて、父はこれからのことばかり考えていた。
しかし、少年は満ち溢れてくる身体への違和感を感じていた。
それは、母の生命力が徐々に薄れていくのと同時にその力はどんどん流れてくる。
こんな自分でも不安や悲しみに震えているのだろうか、それとも嬉しいのだろうか。
どの道母には感謝したこともあるし、痴呆のせいで悩まされることもあった。
「ちょっと、、外で考えてくる。」
少年が出ていくとその家族は自然のことと受け入れていた。
「いやぁ…あの子の誕生日にこんななぁ…」
その言葉は少年の耳に届くはずもなかった。