失望の中
向かい合って座った二人
どちらからともなくため息がもれる。
ひとみはこの空間がとても苦痛に思えて
先に言葉を発した。
「ごめんね‥私、何か此処に入り浸ってたからアカンかったんかなぁ」
彼は苦しそうに少し微笑んで口を開いた。
「いや…そんなんじゃなくて」
それからまた口を閉ざした。
ひとみは焦っていた。
(なに?じゃあなんの話?)
理由がわからず、パニックに陥った。
その様子を見て、彼は立ち上がり冷たいジュースを持ってきて差し出した。
そして、少しずつ話し始めた。
「嫌いになったとかウザイと思うとか、そんなことじゃないんだ。ただ…」
彼は淡々と自分の現状と思いと、そして将来の事を話出した。
「ひとみのことは大好きなんだ。でも自分は今就職活動をしていて、希望は実家のある広島なんだ。
最近のひとみを見ていたら将来のことを考えてしまって、多分ひとみの想いには応えられないような気がして。いつかきちんと話をしなきゃと思っていたんだ。」
(えっ、どういうこと??将来はない・・・?)
瞳の頭の中はいろんなことがグルグル回ってしまい、考えが纏まらなかった。
「ごめん、私バカやからよく飲み込めてない。私がわかるように話してくれへん?」
ひとみはどうしようもなくてそう伝えた。
「卒業したら広島に帰る。だからそれ以上の事は考えられない。ごめんな」
「それは、もう終わりということ…なのかなぁ。」
ひとみは俯いたまま消えそうな声で彼に聞いた。
「ほんとごめん。卒業までってつもりだった。ひとみもそうやと思っていた。勝手な言い分やな。でもごめんとしか・・・」
普通なら多分もっと早くに気付くことだし、割り切ることも簡単なのだろうが、ひとみにとっては初めての恋だった。
このままずっと一緒にいられるんだと思っていた。
ひとみは無言で部屋を出た。
彼が追ってくることはなかった。
ゆっくりゆっくり歩いた。
そして後ろを振り向いた。
やっぱり彼の姿はなかった。




