オワリ・ト・ハジマリ(後編)
鬼と龍との戦い。タケルとアナザー以外の人間はそこに立ち入る事すら許されなかった。ライガはただそこに立つしか出来なかった。全身が震え、恐怖を覚えていた。たとえ、ゲームの中でも絶対的な恐怖を覚えていた。
(俺は何も出来ない………!! 俺はここに立っているだけだ………!! タケルは何故あそこにいられる!! そして、俺はなんでここにいる……!! 俺はまだあそこには立てない!!)
そう思っているのは、ライガだけでは無かった。戦いを終えて来たもの達も、2人の戦いをひたすら、見守る事しか出来なかった。
タケルは、アナザーに対して、様々な感情を抱いていた。恐怖、興奮、怒り、憎しみそして、
(俺は、こんなところで止まっていてはいけない!! 帰って、俺は奴と全ての決着をつける!! こんなところでくたばってたまるか………!!)
タケルの手刀の速さは徐々に速くなっている。それと同時に、手刀の威力が上がっていく。アナザーもタケルの攻撃に少しづつだが、反応出来なくなっていく。
(流石………。というべきか………。私では到底ここまでは来れないな。彼には『鋼鉄の意思』を持っているかも知れない)
アナザーの体に傷が入って行く。そしてHPも少なくなり、既に黄色のゲージまでいっていた。
(もっと、もっと、もっと、もっと、もっと速く!! もっと強く!! まだ、彼女には届かない! 俺が超えるべき相手はアナザーでは無い! 俺が超えるべき相手は……………)
「俺が超えるべき相手は、自分達を捨てた父と姉だ!! 貴様は超えるべき人間では無い! だから、俺の邪魔をするな!!」
その時だった、タケルの右腕がアナザーの左胸の近くまで迫っていた。そして、時間は止まる。
「ここは、どこだ?」
タケルは青い粒子があちこちにある、別のところにいた。目の前にはアナザーがいる。
「やはり、君は革命を起こす人間だ」
アナザーはそう言い放った。タケルはその言葉の意味を理解出来なかった。
「その顔は、まだ理解出来ていないな。その内、理解出来るさ。だから今は焦らなくてもいい」
「貴様の目的はなんだ? 何故、デス・ゲームなど始めた!?」
タケルはアナザーに向かって叫ぶ。アナザーはその言葉に答える。
「いずれ来る災厄。私はそれを知っている。全人類を巻き込むデス・ゲームが始まろうとしている」
「これだって、日本だけでも1000万近くの人間を巻き込んだ! 全世界では数え切れない程の規模だ!!」
タケルはそう言う。アナザーはそれに対して言葉を発する。
「全世界で3億人。現在の全世界の人口は75億人だ。こうして見れば少ないが、その内、75億人全てを巻き込むデス・ゲームが始まる。私はそれに対するプログラムの適応者を探していた。ようやく見つかった」
アナザーの手に赤と黒の立方体が現れる。
「これは、私の夢の理想郷。その鍵と災厄に対する唯一の対策。これは君が持っていてくれ」
ウィンドウが開き、『ジョーカープログラムを入手しました』現れる。
「ジョーカープログラム………。切り札………」
「そう、それが人類の切り札。それは君に託す。君こそが真の…………」
アナザーが最後に言った言葉。それはタケルの意思を確認する物だった。それに対してタケルは言う。
「鋼鉄の意思は決して壊れない。かつて、姉が俺に向かって言った言葉だ」
その言葉を聞いたアナザーは、フッと笑う。そして、この世界は閉じる。
タケルの右腕はアナザーの左胸を貫いていた。タケルはアナザーに向かって、2人にしか聞こえない声で言う。
「お前の意思は俺が継ぐ。だから、お前は寝むってくれ」
アナザーはその言葉を聞き、目を閉じる。アナザーがガラスのように割れ、青い粒子が飛び散る。
『このデス・ゲームは、クリアされました』
「まだ、続けるか? アレン?」
「無駄に命を散らすことは無かろう。また会おう。ゼノン」
そう言ってアレンは何処かに歩いていく。ゼノンもタケルの方を見て、フッと笑い何処かに行く。
「勝ったんだよね。私達」
アリサがタケルに向かって言う。タケルはそれに答える。
「勝ったさ。まだ、アリサとは一緒に行けない。だから待っていてくれるか?」
「何時迄も待ち続けるから。絶対、現実で私のところに来てね」
2人は指切りをする。それは、タケルの決意を固めるためには充分だった。
「俺はもっと強くなって、タケル。お前の領域に行く。それまでくたばるなよ」
ライガがタケルに言う。タケルはフッと笑い答える。
「待っているぞ。お前に鋼鉄の意思があるなら、ここまで来れるさ。だから追いつけよ」
2人は拳を合わせる。それは、ライガとタケルの意思を強くする物だった。
「俺は行くよ。じゃあなみんな!!」
そこにいた者は、それぞれの道を歩き出した。始まりの道はみんな同じだった。
「何で、俺は無人島にいるんだ?」
To Be Continued