チョウサ・ト・キョウリョクシャ
第100層、レギオンの店。
今ここにレギオンとタケル、アリサがいる。話の内容はアナザーの事についてだ。
「もし、アナザーがこのデスゲームの犯人だとして、俺達はどうすればいいんだ?」
タケルが自分の疑問を言う。それにアリサが答える。
「まず、うちの団長には会えないと思う」
アリサの言葉にタケルが反応する。
「なんでだ? 」
「まず、警備が固くて暗殺は無理。普通に正面からの接触も私でも無理」
アリサの言葉にレギオンが反応する。
「なんで、剣帝様ぐらいになるとそれなりの地位はあるんじゃないか?」
「私は一応副団長よ。けど発言力は大して強く無い」
「普通なら副団長が団長の次に発言力があるだろ? 何でお前に発言力が無いんだ?」
タケルの言ったことは最もである。副団長クラスならそれなりの発言力があるのだが、アリサにはそれが無い。
「団長の直属の部隊『ロイヤルナイツ』彼らが団長の次に発言力を持っている。彼らを何とかしない限り無理。1つ、チャンスがあるけど…………」
「チャンスとは何だ?」
タケルがアリサに聞く。アリサはそれに答える。
「第250層ボス攻略。偵察隊の報告によるとかなりの強敵。もしかしたら団長が出て来るかも知れない」
「それしか無いな………。装備を整えるとしたら今だな」
「ああ、それ関連でお前に頼みがある」
レギオンがタケルに言う。
「どうした? 俺じゃないといけないか?」
「お前じゃなく、お前の行きつけのガンショップのディーラーに頼みがあるんだ」
タケルはその言葉を聞いて何かしらの面倒事だと思う。
「あいつに頼み事か………。一応聞いとくぞ」
「仮面の男達がどこで大量の武器を手に入れたかを知りたい」
レギオンの言葉にアリサが反応し、疑問を言う。
「武器なんて、武具屋に行けばいくらでも手に入るでしょ?」
アリサの疑問は普通なら考える事だった。魔法の世界ではよくあるRPGみたいに武具屋に行けばいくらでも装備が手に入る。近未来の世界も同じようなものだ。だが世紀末と現代では少し仕様が違う。
「それはあくまで魔法の世界での話だ。世紀末と現代では武具屋に置いてある装備に限りがある。銃の種類にもよるが、大量に揃えるなら方法は2つだ」
タケルがそういい、話を続ける。
「1つは、多くの人員を使ってあらゆる武具屋から銃を買う事だ。2つ目は銃工場から直接買うかだ。2つ目の方法で銃を手に入れたなら追跡が楽になる」
「なんで? 工場の人から直接聞けばいいから?」
アリサがそう言う。魔法の世界の人が考えそうだが無論世紀末と現代では考える事が違う。
「銃1つ、1つにナンバーが振り分けられている。それを辿って行けばいい。工場ならその辺はしっかりと管理しているから大丈夫だろう。そう考えると早く行動しておくべきだな」
タケルは席を立つ。
「早く行くぞ。アリサ。早く行動しないと跡を消されるからな」
タケルがそう言うとアリサが立つ。
「それで、ガンショップはどこにあるの?」
「ここと同じ階層にある。ただ少し見つけにくい。さあ行くぞ」
タケルがそう言うと2人は店を出た。
目的のガンショップには10分程で着いた。周辺は昼なのに薄暗く、人通りも全く無い。表の賑やかな街とは大違いである。下手したらここで通り魔殺人でも起きそうなところである。ガンショップの扉はそこだけ綺麗な感じである。
「ここが、目的のガンショップ?」
「こんなところだと思っただろう。だけどここは下手な大型のショッピングセンターより品揃えはいいぞ。まあ、最も普通じゃ揃えれないという事もあるけど…………」
タケルはそう言って扉を開ける。中はクラシックが流れており、静かで穏やかな感じだったけど、あらゆるところに銃が置いてあり、銃だけでは無く防弾アーマーやナイフ、ロケットランチャーなどが置いてある。
「ようこそ、『Crazy gun shop』へ。殺人犯やモンスターの自衛や、組織の小競り合い、または戦争の準備まで、あらゆる状況に柔軟に対応出来る装備をご提供しております」
そう言ったのは、グラビア顔負けの美形でスリムの長身長。10代後半の女性であった。
「相変わらず、ひでぇキャッチコピーだな。アイン」
「あら、タケルじゃない。随分と久しぶりね〜。今日は何しに来たの?」
タケルはここに来た理由を簡単に説明する。
「仮面の男ね〜。もしかして犯罪プレイヤーかしら? けど、そんな奴なら結構有名な方じゃない?」
「まあ、顔を隠す理由があるんだろうな。引き受けてくれるか?」
「物によるわね。幾ら用意出来る?」
「1億ゴールドでどうだ?」
「いいわ。乗ってあげる。少し待ってて」
そう言ってアインは奥の部屋に入って行く。3分もしないうちに3冊ぐらいファイルを持ってくる。
「これは…………?」
アリサがそう言う。アインがこのファイルについての説明を始める。
「一応来た客はファイルにどんな装備を購入したか記録するけど、ごく稀に記録を残したくない客が来るのよ。例えば、そこにいる犯罪プレイヤーとか」
アインの言葉にタケルが反論する。
「確かに俺は犯罪プレイヤーだけど、一応記録は残しているだろう。更にお前の店にはひいきしている方だぜ」
「えっ…………!? タケル君犯罪プレイヤーだったの? 表示が普通だけど………」
このゲームは、犯罪プレイヤーと普通のプレイヤーとで表示が異なり、普通は青の三角だが、犯罪プレイヤーは黄色の三角、更にもっと酷いのは赤になる。タケルは青の表示になっている。
「それはこいつのユニークスキルのせいよ。つくづくチート性能よね」
「頑張って手に入れたからな。一応名前は『死神の通り名』。基本的にプレイヤーの表示を変更するスキルだな。他にも使い道はあるけど…………」
「例えば?」
アリサが聞き、タケルでは無くアインが答える。
「指名手配とかされた時、その罪を他人になすりつけたり、無かった事に出来るのよ。これでよく、ゲームバランス崩壊しないわね…………。と言うか、タケルが犯罪プレイヤーって事を知らなかったわね。もしかして言って無いの?」
「自分から犯罪集団です。何て誰が言うか。餓鬼の非行自慢じゃあるまいし」
「そう言えば君、どこの所属なの?」
アリサがそう言う。声が少し怖い。タケルは仕方なさそうに答える。
「陽炎軍団。ナンバーは秘密だ。それだけで充分だろ。ちなみにクレイルも陽炎だぜ」
アリサの口から言葉が出なくなる。どうやらかなり、驚いている。
「まあ、初めての人はそんな反応よね。という事はあのスキルも教えていないの?」
「切り札は隠してから初めて効果があるんだよ。まあ、俺は2つ持っているから1つは教えてもいいけど…………」
「なら、教えて。どんな効果はある程度把握しておきたいし」
タケルは少し悩んでから口を開く。
「『死神の数字』(デス・ナンバー)。0〜12までの数字がランダムに出て、出た数字に対応する武器が出てくる。また武器によって効果が違う。そんなところだな」
「結構トリッキーな効果なのよね〜。私も全部は見たことないし」
「本気でヤバイと思った時にしか出ない数字があるからな。俺もそれは一回しか使った事が無いな。まあハズレ無しだから充分強力だけど。そろそろ話戻そうぜ」
いつの間にか話が脱線していた。それをタケルが修正する。
「4日前ぐらいに、武器を大量に購入してきた客がいたのよ。何でも7000万ゴールドやるから支給装備を整えてくれって」
「それで引き受けたんですか?」
「流石に私の独断では決めれないから、工場と相談したわよ。けど、工場側にも話が届いていて、更に非公式仕様にして欲しいって頼んでいたらしいのよ」
「非公式仕様…………? 何ですかそれ?」
アリサの疑問にタケルが答える。
「非公式仕様は、銃のナンバーを無くした物だ。これだったら幾ら調査しても見つかりにくい。世紀末でプレイするなら1つは欲しいな」
「話を続けるわよ。まあ、その後黒のスーツにサングラスをかけた男が装備を取りに来たわよ。そんなところね。ここからは私の考えになるけど、多分奴ら紅蓮騎士団の連中ね」
「どうしてそう思う?」
タケルがアインに聞く。アインは話を始める。
「買っていった銃が基本的に初心者が使う武器なのよね。マガジンの取り替えとか整備が簡単な物ばかりだったし。銃を触らないのは魔法ぐらいだし、更に高位の杖持っている時点で魔法陣営だし。そこから考えればあれほどの財力を持っている魔法の集団。紅蓮騎士団しかないわね」
「王龍という線は?」
「王龍じゃまずここに辿り着けない。ある程度、ここに関する情報は私が操作しているから。まあ、このゲームの黒幕がアナザーという男でしょ。そいつぶっ潰せばいいよね」
タケルとアリサの背中に何かが走る。アインから、凄いオーラがでている。
「協力してくれるんだな?」
「当然。私がこんな楽しくて物騒な事件に首を突っ込まないと思っていた?」
「そんな事、思う訳が無い。俺たち並みの危険だ。俺たちの考えが違ったら平和ボケしている証拠だな。アリサ、協力者ゲットだ。俺とアインはレギオンの店に戻る。お前はどうする?」
少し悩んでからアリサが口を開く。
「私の方でも協力者を探すわ。それが終わったら戻るわ」
「了解した。一応クレイルに連絡入れとくかな」
タケルとアインはレギオンの店に向かい。アリサは紅蓮騎士団の本拠地に向かった。
アリサは紅蓮騎士団の本拠地に向かい、ある人物にあっていた。
「お願い! 私達に協力して!!」
「い、いやそんなに頭下げなくてもいいよ。何に協力すればいいの?」
アリサが頭を下げていた人物は155ぐらいの黄色のツインテールに鎧を着た女の子であった。
「それは……………………」
アリサはアインにしたように同じ感じで説明をした。目の前の女の子は少し悩んでいた。
「う、う〜ん。団長を疑うのは少し気が引けるけどいいよ。協力してあげる」
アリサはその瞬間顔あげる。
「ありがとう!! イオナちゃん!!」
「そこまでしなくてもいいわよ。更にアリサのお気に入りも見てみたいと思っていたし」
イオナは悪そうな顔で笑う。アリサは少し怯む。
「べ、別にお気に入りって訳じゃないわよ! 少しかっこいいと思っただけで………」
(少し惚れているわね。これ以上いじると怒りそうだからこの辺でやめておこうかな)
「取り敢えず、レギオンというプレイヤーの店に行きましょ。そこで作戦会議よ」
「ちゃんと準備しておいて。もしかしたら襲撃があるから」
「その辺はちゃんとやっているわよ」
イオナの背中には巨大な盾と槍であった。イオナの立ち位置は前衛で攻撃を受け止める役。どんな攻撃でも受け止める事から『要塞壁』と呼ばれている。
「それじゃ、行こうか!」
アリサとイオナはレギオンの店に向かった。
アリサがイオナに話をしている時、タケルもクレイルに連絡を取っていた。
「どうだ? お前も来るか?」
『当然、俺も行くさ。後は陽炎がどんだけ協力するかだな』
「別行動を始めると連絡が取れないんだよな俺たち。フェリスに連絡入れといてくれ」
『了解した。メッセージ送っとくわ。後、グレイに声かけとくわ』
そう言って通話が切れる。クレイルの口からグレイの名前が出て来たのが少し驚いてがそう言えば意気投合していなと思った。
そして、アナザーとサングラスの男も行動を開始していた。