シンジツ・ト・クロマク
第60層の攻略から1週間後。タケルとクレイルがチームに加入したためカテドラルの攻略もかなり捗っていた。現在最前線は第250層。ダンジョンの攻略は中止して今は戦力の増強をはかっている。タケルは第100層のある店に来ていた。
「最近の新聞の記事がお前達の事ばかりになっているぞ」
「基地に行くとその話ばかりになる。いい加減勘弁してくれよ……」
目の前にいる大男はレギオン。肌は黒く、身長は2m近くあるんじゃないかと思う。第100層で装備屋を開いている。タケルが陽炎軍団に入る前から信頼している男である。
「しかし、お前達が表舞台に出て来るとは、変わるもんだな」
「流石に同じプレイヤーを見殺しには出来ないさ。更に全員という訳では無い。殆どの団員はまだ下にいる」
「そうらしいな」
「しかし、客が来ないな。何時間もここにいるけど誰1人来ないぞ」
「まあ、今日は閉店日だからな」
「そういえば、そんな事書いてかったな。そこまで大事な要件なのか?」
「このプレイヤーを知っているか?」
タケルはレギオンに写真を渡される。顔はアメリカ系の顔で肌は日本人に近い。
「知らないな。このプレイヤーがどうかしたのか?」
「2日前、この男によって、連合軍のトップが殺害された」
タケルはレギオンの言葉に驚く。
「何があった。2日前は攻略班はダンジョン攻略をしていた。情報が無い。教えてくれ」
「そのためにお前を呼んだんだ。そうあれは…………」
1週間前、連合軍本拠地。
「失礼します」
連合軍の本拠地にある。指揮官室。中には男が椅子に座っていた。
「よく来てくれた。ライガ君。まあ座ってくれ」
ライガは用意されている椅子に座る。目の前にいる男は連合軍のトップ、ガウス。スーツを着ておりアメリカの大統領みたいな人である。
「用件はなんでしょうか?」
「このデスゲームについてだよ」
ガウスの言葉にライガは耳を疑う。
「このゲームを開発した人間。『雷文寺 悠斗』、この男がデスゲームの黒幕だ」
「貴方は一体何を知っているんですか?」
「このゲームの真実ともう1人の黒幕について話そうと思う」
時は進み2日前。
ライガはガウスに呼ばれて本拠地に来たが様子がおかしい。上層部が静かすぎる。さらに指揮官室にいたる廊下は電気もついてなく暗い。ライガは指揮官室の前に来る。ライガはドアを開ける。
「何が起きているんですか?総司令?」
ライガはガウスに向かって言う。だがガウスから反応が無い。
「総司令? 総司令!」
ライガがガウスに向かって叫ぶ。ガウスが振り向く。
「そう………しれい………?」
ライガが見たのは、元のガウスでは無かった。顔は焼けただれており、目玉が今に飛び出そうで、血管が浮き出ている。ライガはハンドガンを構える。
「動かないで下さい」
最早、ゾンビみたいな姿をしているガウスはライガの方に向かって歩き出す。
「こないで下さい。俺に貴方を撃てない…………」
ガウスは歩みを止めない。ライガの引き金を引く指が震える。
「総司令!!」
ライガは引き金を引いた。弾丸がガウスの頭を貫く。ガウスは倒れる。
「くっ………………」
複数の足音がする。足音は近付き、指揮官室に入る。入ってきたのは、連合軍のエリート兵士。暗視ゴーグルをしており、アサルトライフルを装備している。
「何が起きている………?」
先頭にいる男が言う。兵士達はライガの方に銃を向ける。
「これはどういう状況だ? これは貴様がやったのか?」
先程の男が言う。ライガは何も言わない。
「それは私が起こした」
その声はライガでは無い。窓の方にスーツを着、グラサンをした男が立っている。
「どういう意味だ?」
ライガは男の方に銃を向ける。男は話を始める。
「まあ、落ち着きたまえ。外を見てみるといい」
ライガの先頭の男は窓を見る。変な仮面を被った男達が本拠地に入って来る。
「この状況を打破出来たら私と話す権利をやろう」
男は、手のひらサイズの黒い筒を投げる。筒から煙が出て来る。ライガは男のいた方向に銃を撃つ。
「逃がしたか……………」
煙か晴れた時には男はいなかった。兵士達が部屋から出て行く。1人だけこっちに来る。
「何があったのかは、後で話してもらう。今はこの状況を打破したい。協力してくれるな?」
「分かった」
「俺の名前はジョッシュ、アルファチームの隊長をしている」
「俺はライガ。総司令直属の特殊部隊のエージェントだ」
2人は自己紹介を終えた後、部屋を出て、下に降りて行く。ジョッシュの体は筋肉質で、人間と言うかゴリラに近い。(肌も黒)。ライガは普通の人間よりかは筋肉があるが、服を着るとぱっと見では分からない。ライガの服装は黒いシャツの上に革ジャンを羽織っている。ジョッシュは黒の防刃シャツに防弾アーマーを着ている。武器はライガがハンドガン、ガバメントである。ジョッシュはXM8で、サイドアームはM92Fである。
下は、仮面の男達が次々とやってくる。連合軍のエリート達が防衛しており、若干こちらが有利である。
ライガとジョッシュは倒してある机に隠れる。
「この状況をどうするんだ? ジョッシュ?」
「俺が正面で囮をするからお前は回り込んで攻撃してくれ」
「分かった!」
ジョッシュが机から飛び出て銃を構えながら前に出る。ライガはそれを見て、端の方に行く。ここはロビーで、かなり広くまた端は上の通路の影となっている。ライガは影を利用して移動する。1人、こっち側に来る。ライガは相手が引き金を引く前に銃を撃つ。ライガのユニークスキル『クイックショット』の効果で相手は怯む。
「そこをどけ!!」
敵に回し蹴り、ユニークスキル『超人』の効果で威力はかなり上がっている。敵はすぐそこにある壁に叩きつけられる。背中と後頭部を強打し倒れる。頭からかなりの量の血が出ている。ライガは再び移動を開始する。敵が2人、こっちに来る。
「!! 遅い!」
ライガは走っている勢いを利用してスライディング。相手の後ろをとる。仰向けの状態で相手を射撃する。弾丸は頭を貫く。
「少し、こっちに警戒しているな。向こうはどうなんだ?」
ライガはジョッシュの方を見る。
ジョッシュは障害物に隠れず、正面の1番前で銃を乱射している。
「オラオラオラオラ! どうした、そんなもんか!!」
敵が障害物から出たら、すぐに体中に穴が空き、倒れる。
ジョッシュのユニークスキル『狂戦士』は敵は多数いる場合、クリティカルが必ず発生し範囲攻撃の威力と範囲と命中率が2倍になる。範囲攻撃は点での攻撃ではなく面での攻撃。フルオートの銃なら使える攻撃で命中率が落ちるが複数の敵に攻撃出来る。グレネードランチャーなどでの範囲攻撃は命中率は減少しない。
ジョッシュの横から敵が銃で殴ろうとする。
「なんだ? その攻撃わ? まるで蚊が止まったみたいだな」
ジョッシュのHPゲージは全く減っていない。ユニークスキル『鋼の肉体』の効果である。これは、あらゆる攻撃の威力を軽減するものである。ジョッシュは右腕で敵の首を持つ。ジョッシュが力を入れると鈍い音がした後、敵は口から泡と血を吹き出す。そしてジョッシュはそれを敵に向かって投げる。
数分後、2人の活躍によって敵は全滅する。そして入り口からスーツを着た男が入って来る。
「流石と言っておこうか………。報酬だ。私に質問するがいい。私も答えれる限り答えよう」
男の言葉にライガが反応し、ライガが言葉を発する。
「貴様が総司令を殺したのか!?」
「殺したのは君だ。私は奴にウィルスを投与しただけだ」
ジョッシュがアサルトライフルを男に向けて話す。
「ウィルスとは何だ!? 貴様の目的は!?」
「ウィルスについては言えないな。目的は……………このデスゲームの終焉かな?」
「デスゲームの終焉? 貴様も総司令と同じ、このゲームについて何か知っているのか!?」
ライガの脳に走る電流。それは総司令であるガウスと話した記憶。デスゲームの黒幕。
「君も知っているだろう? このデスゲームの黒幕は……………紅蓮騎士団団長アナザー。彼を倒せばこのゲームは終焉を迎える。」
男が口にした言葉。それはライガ以外の人間を驚愕とさせたのだ。
「君達がこれからどうするか、じっくりと見物しているよ。陽炎の最後数字、彼にも興味があるからな。また会おう」
気付いた時は男はいなかった。ライガは外に出ようとする。それをジョッシュが止める。
「まずは、装備などを整える。ここなら他の世界からの干渉を受けない。アナザーとやり合うならそれなりの装備は必要だ。違うか?」
「出来るだけ、早くしてくれ。もしかしたら仮面の男の襲撃がまたあるかも知れない。…………!!」
ライガの無線がなる。ライガが無線を操作すると、自分のオペレーターの声が聞こえる。
『大変よ! ライガ!』
無線越しの声は若い女性の声で慌てていることが声から分かる。
「どうした? 何かあったのか?」
『貴方とジョッシュという男が指名手配になっている!! 内容は連合軍トップの殺害!』
ライガは舌打ちをする。可能性として考えていたことが本当になったからだ。そうなると、行動がかなり制限される。今、ライガとジョッシュの周りにいるプレイヤーは事情を知っている為、指名手配が不正なものと分かるが他の連中はそうはいかない。最悪、いつ襲撃があってもいいレベルである。
「どうする? このままだとまともに動けないぞ」
「カテドラル内に知り合いがいる。彼なら分かってくれる。そこなら安全だ」
ジョッシュは、そう言う。ライガは少し考える。
「その知り合いが裏切る可能性わ?」
「ほぼゼロだ。奴はもう1人とんでもない男と繋がっている。今なら俺達は奴と同じだ」
ライガは、もう1人が少し気になり聞く。
「陽炎軍団。死神のタケル。耳にぐらいはしたことがあるだろう」
ライガは陽炎軍団とタケルという単語が出て来た事に驚くがそれと同時にそこなら安全と分かった。陽炎軍団は最強の犯罪集団。現在は陽炎軍団という名前があるから保護されているだけで、そこを抜けたらすぐ指名手配される人間達だ。
「了解した。すぐにでもそこ向かいたい。出来るか?」
「何時でもとは行かないな。最低3日は必要だ。それまではここなら安全だ。3日後、向かい、紅蓮騎士団のアナザーとの戦いに備えるぞ」
「1つ頼めるか? エレナ?」
ライガは無線の女性に話しかける。彼女はそれに反応する。
『何かしら?』
ライガは頼み事を口にする。
「3日間だけでもいい。俺達を死亡した事にしてくれ」
そして、現在。
「という訳だ」
レギオンの話が終わる。
「それはまた、大変な事になったな」
「こっちとしてはいいんだがな」
レギオンがタケルに飲み物を出す。タケルはそれを飲んでから、話す。
「しかし、お前も俺も苦労しているな」
「違いないな」
タケルが飲み物を飲む。そしてまた口を開く。
「俺なんか昨日、アリサの手伝いで3時まで起きていたんだぜ。流石にゲームの中とはいえ、これはキツイな」
「確か、感覚とかはリアルにかなり似せてあるからな」
「ゲームの中でも、寝不足は洒落にならんぞ。全くあいつも人使いが荒いから………………」
タケルの背中に嫌な汗が流れる。後ろにいてはいけない人物がいることに気付く。タケルはゆっくりと後ろを見る。
「今日の作戦会議サボって、こんなところで愚痴ですか。それも私関連の。連絡が無いから心配して探したらこんな事をやっていたんですか」
後ろに居たのは最早鬼神となったアリサであった。
「いや、ちょっと待ってくれ! これには深い訳が…………」
「問答無用! これでも食らいなさい!!」
「いや、それは洒落にならない。色々と不幸だぁーーー!!!!」