キョウソウ・ノ・オワリ
カテドラル内。タケル、フェリス、クレイルの3人は第60層まで、誰が1番早く着くか勝負している。トップはタケル。現在第48層。次はフェリス、現在第43層、ドベはクレイル、現在第32層。クレイルが断トツで遅い理由は全階層のダンジョンで全て罠に突っ込んでいるからである。ステータスの部分には運の項目があるが、クレイルはそれに振らずに初期値のため、運が無いという騒ぎでは無い。めっちゃ不幸である。
「今、誰かに馬鹿にされた気がする……。気のせいか………」
クレイルがボスとの戦闘中にそう言った。3人は、ボスと雑魚の違い大して無いと思っている。第50層からはボスが強くなるらしいが、3人の戦闘力が異常なため、雑魚と大して変わらないらしい。
(イマワタシハ、2イグライネ。トップハカクジツニタケル。ドベハクレイル。イマゴロ、ワナニカカッテイルネ)
フェリスがダンジョン攻略中にそう思う。その頃下にいるクレイルは………。
「フェリス………。後からぶっ飛ばす!! あいつ、絶対俺の事考えたろ! どうせ、俺は不幸だから問題無いって!」
これだから、脳筋はめんどくさい。
「てめえも調子のるなあああああああああ!!!!」
クレイルが叫びながらダンジョンを突っ走って行く。その頃、タケルは
「まさか、第50層がボスラッシュとは思わなかった。予想外過ぎた。早くしないと、追いつかれるな。さっさと終わらせるか!」
第50層はボスラッシュで、今最前線にいる攻略班が苦戦したところでもあるらしい。タケルは袖からナイフを出す。戦闘開始である。
「まずはガイコツとオークから!」
タケルが狙ったのはスケルトンロードとキングオークである。2体共、普通のスケルトンやオークに比べたらかなり巨大でスケルトンロードは剣と盾、キングオークは棍棒を持っている。タケルが最初に狙ったのは、単に邪魔で1番近いところにいたから。キングオークの胸に針を刺す。
「ガアアアアアアアアアアアア!?!?!?!?」
キングオークの体は徐々に溶けて行き、最後は骨すら残らなかった。タケルはスケルトンロードを狙う。武器はMP5Kというサブマシンガンの二丁持ち。発射音が響き、スケルトンロードに当てていく。骨は穴だらけになり、スケルトンロードは消滅する。次はキングキマイラとクイーンキマイラ。タケルが近付くとキングは炎のブレスを、クイーンは水のブレスを吐く。炎と水が螺旋状になり、タケルを襲う。タケルはジャンプして回避する。タケルは片手剣を取り出し、キングキマイラの頭に目掛けて投げる。剣はキングキマイラの脳天を貫き、消滅する。タケルはクイーンキマイラ上に移動し、落下しながらかかと落としをする。ズガン!! という音がし、クイーンキマイラは消滅する。
「少し弱くなっているな。耐久力も防御力も紙じゃねえか」
タケルはそう言う。攻略班は30人で突破したらしいがタケルの場合、たった1人で4つのボスを2分で倒した。タケルは奥にいる、体が水晶で出来ているクリスタルドラグーンに向かう。
「さっさと巣に帰れよ! クリスタルドラグーン!!」
クリスタルドラグーンはブレスは吐く。ブレスは水晶で出来ており、意外と綺麗である。タケルはジャンプして避ける。クリスタルドラグーンは翼を振ると水晶が飛んで来る。タケルは蹴りでそれを返す。クリスタルドラグーンに水晶が突き刺さる。クリスタルドラグーンの動きが止まる。タケルは、スナイパーライフルであるドラグノフを取り出し、クリスタルドラグーンの頭を狙う。そして、引き金を引く。弾丸はクリスタルドラグーンの脳天を貫いた。クリスタルドラグーンは消滅し、扉が開かれる。
「さあ、早く第60層に行かないとな」
タケルが再び走る。タケルは現在ノーダメージで走り抜けている。フェリスも今のところノーダメージ。クレイルは戦闘ではノーダメージ。ただ罠で少しダメージを食らっている。この3人がいたら攻略班の被害がかなり少なくなったかもしれない。というか陽炎軍団が本気で動いたら、とんでもない事になっていたかも知れない。まあ、メンバーの殆どは情報収集しているが……。
2時間後。タケルが第60層に着く。言うまでも無く1番乗りである。2人が来る様子が無いため、ぶらぶらしていた。
(流石にここは高レベルが多いな。適当に情報収集でもしようか)
タケルは戦闘だけでは無く、情報収集も出来て、ステルスや情報収集に関する能力がカンストしている。
街は高レベルのプレイヤーしかいなく、装備もそれなりに豪華な物をしている。タケルは、攻略班の基地を見つけ、隠れながら情報収集を行う。
(今の主力は紅蓮騎士団と王龍騎士団の2つだな。個人では、猛将『グレイ』、剣帝の『アリサ』、堅将『ダスク』。この3人だな。攻略班というだけあって、戦闘力はそこそこだな。後はこの辺の資料を持って行くか………!?)
タケルは物陰に隠れる。2人、部屋に入ってくる。以外と物があり、隠れやすいが、出入り口が扉1つしか無い。普通なら2つの出入り口を確保するのだが資料がたまたま、ここしか無かったから仕方が無い。入って来た2人の外見は1人は赤のロングのタケルと同じくらいの年齢の女の子で、もう1人が全身に鎧をきた筋肉質の男である。
(女の方が剣帝、男が堅将だな。これちょっとヤバイな)
タケルは今、ステルススキルによって、姿は見えないが、発見されたら正直ヤバイ。凄くヤバイ。もしかして、ダンジョンに無い程のピンチである。
「そこにいる者、出て来い。今なら罰は軽くなるぞ!」
堅将がそう言う。剣がこっちを向いている。タケルは扉が開いていることを確認すると扉に向かって走った。それも全速力で、
「待て! アリサ様、手伝って下さい!」
「了解! 待ちなさい!」
剣帝がタケルを追尾する。タケルはユニークスキル『神速』を使って逃げているが、剣帝もかなり速い。堅将はかなり遅いが……。タケルは全力で逃げる。そして、基地の扉をぶち破って、そのまま人混みに向かう。
「すみません。見失いました」
「いえ、これはもう少し早く侵入者に気付いていれば……。この辺の警備を強化します。アリサ様は、被害の確認を行って下さい」
「了解しました。ですが、あのプレイヤー。かなり速かったですね」
「そうですな。アリサ様がスピード勝負で負けるとはな」
アリサは剣帝以外に『閃光』という2つ名もある。タケルはかなり焦ったらしい。『神速』は自分のスピードを10倍にするユニークスキルだが、それがあっても追いつかれそうなったのは初めての経験である。タケルが広場に行くと、フェリスとクレイルがいた。
「どっちが早かった?」
タケルが2人に聞く。フェリスは間髪入れずに答える。
「トウゼンワタシネ。ワタシガコンナノニマケルドウリガナイネ」
フェリスの言葉にクレイルは言い返せずにいる。結構圧倒的だったんだろう。クレイルがタケルが持っている資料を見て言う
「お前、何持ってんだ?」
「攻略班の情報だな。これを見て俺は行動を検討する。まあ、ここからは自由行動だからな。俺は行くぞ」
タケルは街の市場に向かう。フェリスとクレイルはそれぞれ、別の方向に歩みを始めた。
タケルは市場で、何が売っているのかを見ていた。資料は服の中に隠してある。特に何も無いため、宿屋の向かおうとするが、途中で3人のプレイヤーに絡まれる。
「おい、お前、有り金をここで全部出せ。俺たちは攻略班だぜ。早く出せよ」
タケルは呆れる。というより、呆れるを通り越して悲しくなってくる。喧嘩は相手をよく見て売る物という事を教えてやろうと思った。
「うるせえよ。三下。死にたくなければさっさとどけ」
リーダーと思われる男の首もとにナイフを突きつける。男は一瞬の出来事に理解が追いついていなかったようだ。
「わ、わかった。こ、ここは引き下がる。じゃあな」
3人はタケルに背中を向けて歩いていく。方向がさっきの基地という事に気付き、盗聴器を男の背中に着ける。男は気付いていないようだ。盗聴器はかなりの小型で、見つけるのは困難と思われる。
「さ〜て。宿屋に行きますか」
タケルが宿屋に行って、部屋を借りるそして、ベットに寝転がりながら、盗聴器の受信器を耳にあて聞く。
『これから、作戦会議を行います!』
「聞こえる、聞こえる」
声の主は剣帝のものであるとタケルは予測する。
『まず、ダンジョンの攻略日ですが、明日の午後0時に行ないます。マッピングなどは1通り終えていますので、このマップを配布します』
『それで班の内容についてですが』
そこからは、前衛と後衛のメンバーの確認と作戦内容についてだった。そして、男の声が聞こえる。
『少し前に、この基地に侵入者が現れた。メンバーに関する資料を持っていかれた、犯人に心当たりのある奴は至急、報告してくれ! 以上だ』
「ふむ。午後0時に基地を空けるんだな。もう少し情報が手に入るな。今日はここで休もう」
タケルは布団を被り、そのまま、眠りについた。
朝5時。タケルはすっと起き上がり、顔を洗う。タケルは現実世界でバスケ部の練習がよく朝からあるため、朝は早い。まあ、ゲーム内ならやることは武器のメンテである。タケルは服のあらゆるところから多くの種類の武器を扱うため、定期的に武器のメンテはしないといけない。スーツには大量の武器が格納してある。ナイフ、片手剣、槍、大剣、シールドバンカーなどといって、大きさなどはばらばらである。そんな物を服の何処に隠すのかというと、それはタケルのユニークスキル『死神の懐』。武器や防具、道具に重量が設定されていて、持てる数に制限があるが、このユニークスキルはそれらを無視することが出来る。だから袖にロードローラーとかという物を隠す事が出来る。多分、というかかなりぶっ飛んでいるスキルである。制限が無くなるのは色々助かるらしい。だから懐からバイクが出て来るという光景が見たければ、タケルと一緒にいればよく見れる。タケルの武器の総合的な数は、1000を超えるがこれ全てを見ていたら時間がいくらあっても足りないため、ここでもう1つユニークスキルを発動する。
『鷹の目』。多くあるユニークスキルの中で最強クラスのユニークスキルである。効果は戦闘時、対象のスキル発動を無条件で阻止することが出来る。諜報面では、目的の情報が何処にあるのかが分かるようなる。そして、メンテでは見るだけで、不具合などが解る。他にも多くの能力がある。
「異常は無いな。しかし便利だよなこのスキル。さて、準備をして行くか」
武器を服に隠す。そして何時もの紳士服を着る。市場に行き、適当に食事を摂る。味はまあまあと言ったところである。母の食事が恋しくなっている気がする。というか、基本的な調味料がないってどういうことだよ……。タケルは心の中では世紀末よりマシと思ったが。あそこで食事と言うとおかずに麻薬の世界である。それに比べたらここの食事は100倍マシである。時間が余ったため、適当にモンスターを狩るという事でフィールドにやって来た。草原地帯でここで昼寝をしたら気持ちいいだろうなと思いつつ、モンスター討伐に向かう。追加されたユニークスキルの中に興味があってすぐに取れそうな物があったため、暇つぶしにモンスター討伐に来た。
「『王者の圧力』、これはとっておきたいな。あると無いとじゃこの先、変わるだろう」
『王者の圧力』。相手の行動を無条件で不能にするという能力である。不能に出来る時間は決まっているが、無条件で隙が出来るのはこれ以上に無いくらいに助かる能力である。
「さ〜て。適当にモンスター狩るかな」
この辺のモンスターは強い方でドロップするアイテムも悪くは無い。タケルはモンスターをどんどん倒して行く。たまに聞き覚えのある声と轟音がしている。まあ、向こうが気付かない限り無視しているが………
「うおおおおおおおお!! そこをどけええええええええ!!!!!」
クレイルの声がかなり響く。広い草原なのにようやるわとタケルは内心思っていた。タケルも負けじとモンスターを討伐する。クレイルがこっちに気付き、ペースが上がる。タケルもペースを上げていく。
「王者の圧力までまだか!? 100体ぐらい直ぐだと思ったのにな」
カウンターは90と表示されている。ラスト10は一気に討伐した。そして、視界にスキル習得! というウィンドウが表示される。それを見て、討伐を終了する。クレイルもそれを見て討伐をやめる。クレイルがタケルに近付く。
「成果はどうだ?」
「ユニークスキル1個だな。 お前、あの声どうにかならない?」
「無理だな。俺はユニークスキル2個だけどな」
こんな会話、滅多に見られる物では無い。
「そういえば、今後の行動決まったか?」
クレイルが飲み物を飲みながらの言う。
「俺は、様子見だな。攻略班も悪くは無いけど、足手まといがいたらやだし……」
「そうなんだよな。それが理由でフェリスは、何処か行ったし」
タケルクラスになると、大体のプレイヤーは足手まといとなる。ついていけるのは各世界のトップクラスのプレイヤーだけと陽炎軍団のメンバーぐらいである。
「俺と組まないか? フェリスは1人でも行けそうだが、俺達は固まった方がいいと思うが……」
クレイルが提案する。突然の提案に、タケルは少し悩む。
「それも手だよな。というか何かあると俺達組んでいるし、いいぜ」
タケルは拳を突き出す。クレイルはふっと笑い拳を出す。拳同士を突き合わせる。
「さて、パーティを組んだし、今後の行動を決めるか!」
クレイルがそう言う。タケルとクレイルは街の酒場に向かう。行動を決めるためである。
「攻略班とは別でダンジョンを攻略していくという線でいいな。情報などはどうする?」
「攻略班に売るでいいだろう。午後0時から攻略班がダンジョン攻略に向かう。それまでに行くぞ」
現在時刻午前11時。2人は行動を開始する。