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ある日全力少年のモノローグ

作者: 川見 雅

「木内!」

朝の通学路に木内の姿を見つけて思わず呼び止める。木内が驚いたように振り返って―――あぁくそ。

今日もめちゃめちゃ可愛い…!

「おはよう、坂田」

挨拶と合わせて笑った木内をまた可愛いとか思いつつ、そんな考えがばれたら間違いなく殴られるので話題を変える。

「ようやく進展したね?」

木内の心の中をひとり占めしてる、アイツの話に。

「なんのことかな?」

とっさにそっぽ向いてすっとボケるその仕草すら可愛い。

「手繋いでハグしてもらうとこまで言ったんだよな?」

そらされた目を覗き込むようにそう追い打ちをかけるとかぁっと木内の頬が赤く染まる。可愛い可愛いめちゃめちゃ可愛い!

「なっ…んで知って…!」

可愛くて、恋しくて、愛おしくて…痛い。

「んー斎藤から聞いたり」

痛い、痛い、悔しい、悲しい、切ない。木内の心を占めるのは、木内に触れるのは、木内にこんな顔をさせるのは

俺でありたかったのに。


昔から、そこそこ綺麗な顔のおかげで女の子に困ったことはない。初めての彼女は小学生のころに出来たし、ファーストキスとやらもずっと前に済ませたし、そろそろほしいなぁ、と思うころに必ず女の子から告白してきてくれるサイクルが確立していた。それで大体告白してきた女の子と付き合って適当にエロいことして飽きたら別れるの繰り返し。

自分から告白したことは勿論、自分から誰かを好きになったことすらなかった。


そんな俺が初めて片思いをした、それが木内だった。


木内はさして目立つ容姿でもなければ飛びぬけて何かが出来るわけでもなかった。顔面偏差値は精々42かそこらってとこだろうし、成績も運動能力もどちらかといえば悪い方。不器用で、失敗ばかりで

だからこそ、彼女はいつだって全力だった。

頑張って頑張って頑張って、失敗して目に見えて落ち込んで、もう止めればいいのにそれでもまだ頑張って。俺は木内が近くなっていくほどに、木内という少女を知るほどに、惹かれていった。

けれど出来なかった。

俺は木内に自分の気持ちを伝えることなんて出来なかった。好きという気持ちが募って、木内も俺のことが好きなんじゃないか、なんて淡い期待を抱いて。そんなことをしているうちに、木内は斎藤に恋をしていた。俺の知らない顔を、斎藤に見せるようになっていた。

不器用に、けれど全力で、大好きな人を自分のものにした木内は今までになく綺麗に俺の目には映った。


全力なんて恥ずかしいと思ってた。

余裕なフリして

欲しくないフリして

本当に手に入らなくなってやっと俺は全力でなかったことを後悔した。

なぁ、なぁ木内

もし願いが叶うなら

きっと俺はこう願うよ

何を代償にしても惜しくない、お願いだから

俺を見て

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