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On the way to a Smile  作者: イクミ ショウ
1章~追憶~
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第2話 遠くへ

 歩いていた。その足取りは重い。


 俺の前を歩いているのは、父さん。


 2人で散歩しだしてから1時間くらい経っただろうか。散歩中1度も父さんの顔を見ていなければ、会話もしていない。


 だって、顔を見られたくなかったし、見るのも嫌だったし、それに何を話していいかもわからなかった。


 だから父さんから、散歩をしようと言われた時も頷いただけで、ずっと後ろを歩いて父さんの背中を見ていた。


 いいかげん、何か話さないと。

 そう思った時、


 「なあ、しょう


 父さんのほうから口を開かれた。


 「小学校、もうすぐ卒業だな」


 その時俺は小学6年生で、卒業も近づいていた。でもさ、

 なんでそんな話をするんだろう。もっと大切な話があるんじゃないか?

 だって・・


 「小学校を卒業したら中学生、その次は高校生だ」


 だから、どうして未来の話をするんだ。

 大切なのは今この瞬間、この時間のはずだ。

 だって・・


 「お前はさ、これからどんどん成長していく。その中で嫌なことや辛いこともあるだろうし、1人じゃどうにもならないことだって起こるだろうよ。

 でも・・・父さんは力になってやれない。」


 もう会えないって、聞いていたから。

 離婚、するって、聞いていたから。


 「無責任な父親でごめんな。

 でも、でもな。お前ならこれから先どんなことが起こってもきっと‥」

 「やめてよ」


 もうそんなの聞きたくない。なんで、


 「なんで先の話ばっかりするんだよ。俺は‥今が‥」

 大切なのに。


 どんどん声が小さくなって、最後の言葉は言えなかった。


 父さんといる今が大切なのに。 

 その言葉は言えなかったけど、どうやら汲み取られてしまったようだ。

 父さんは小さく

 「ありがとう」と言った。


  

 そして


 「なあ」

 

 「何?」


 「俺は、遠くに行くけど、

 これから先も、

 お前のお父さんでいていいか?」


 また未来の話だし・・もういいけど。


 俺の父親でいていいか。

 それはもちろん


 「いいよ」


 「・・・ありがとう」


 話はこれだけだった。

 

 この次の日には、父さんは家を出て行った。




 離婚の理由とか、どこに行ったのかとか、

 俺は何も聞かなかった。聞く必要もないと思っていた。

 だって、父さんがいなくなる、という事実があるだけだから。


 俺も小6だ。耐えられないほど辛かったわけじゃない。

それに離婚なんてわりとありきたりな話だし

 ただ、温もりが1つ消えるんだなってだけで。

 

 

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