戦いの後で
棒倒しを制したのは。意外にも俺たちギミックだった
もっと強いチームがあってもおかしくなかったのだが、他のチームはオペレーターという役職がいなかったため、勝利までたどり着けなかったのかもしれない
「お疲れ様です」
俺がギミック本拠地である教室に帰ってくると、バツの悪そうな顔と、喜びの顔を足して二で割ったような根暗少女がいた
「ああ。おつかれさん。少し、休ませてくれ」
隠牙さんは心配そうな目をこちらに向ける。何か言ってやるべきなのか
とりあえず。全身の筋肉が脈打ってて気持ち悪いから、ブルーシートの上で横たわる
「……はぁ」
床の冷たさで熱くなった筋肉が冷えていく。一瞬だけこわばって体がびくつくけど、すぐに緊張がほぐれて冷たさが気持ちよくなってくる
四足走りの時に掌とか手首とかやっちゃったかもな……すこし痛む
それだけじゃなさそうだな。イワ先生の巨体を吹っ飛ばすのに巴投げを使ったのはいいけど、少し背中にダメージが来ている
星霧先輩の攻撃もきているっちゃ来ている
「先輩……すみませんでした」
気づいたら目を閉じていたらしい。俺の額に濡らされたタオルが置かれて、意識が戻った
「何を謝っているんだ?」
「なんとか……結果的には勝利を掴むことができました。1位です。誇らしいことです。だけど、先輩たちに負担をかけすぎてしまいました……」
そういや、隠牙さんの初仕事になったのか……
「おい冴崎。お前の体験談でも語ってやれよ」
「わたしは今忙しい」
この……!ったく……
痛む体を無理やり起こして、隠牙さんと向き合う
「あー……かしこまって正座なんかしなくていい。少しだけ俺の昔話に付き合ってくれ」
俺がボランティアをはじめるきっかけと、その後の話
「俺はボランティアが好きだ。物心ついた時から……って訳じゃないけどな。小学校の頃、介護センターに雪かきのボランティアに行ったんだよ。そうしたら、みんな『これで安心して眠れる』とか言ってくれちゃってさ」
何年も昔のことだけど。覚えている。だからこそ毎日SVTとしていられる
「それ以来、俺はボランティアが好きになったんだよ。自分たちがやったことで人が安心できるようになったんだ。平穏を作れたんだよ」
幼心は誓を立てた
「俺自身が赤木導という人間である限り、目の前の平穏を守る」
今も、そんな幼心の延長線上で動いている
いや、今でこそ真面目に動けている
まだSVTができる前。中学入ってすぐの頃だったか。俺は夏休みに学校の壁をきれいにしようと思って、一人で掃除しまくってたんだ
……まあ何というかね、思いつきで動くとうまくいかないんだ
俺が壁をきれいにしたことで、壁から落ちた汚れで地面が汚れた
失敗だったよ
その時は俺もそう思っていた
だけど、いつ誰が言い始めたのかは知らないけど、こんな言葉を思い出した
「失敗なしに成功はない」って
真夏、コンクリートの上に広がった水がみるみる乾いていったのを覚えている
地面を汚したことは失敗かもしれない。だけど間違いなく壁は綺麗になった。失敗によって成功は生まれ、成功によって失敗は生まれた
乾いた地面には、もともと壁についていた土埃が落されていたが、箒で掃けばすぐにきれいにできた
「誰だってはじめての仕事を終えると全体を知る前に成功、失敗を決めつけてしまうんだ」
「先輩も……そうなんですか」
「失敗だって決めつける癖があった。確かに何かしらの失うものはあるかもしれない。犠牲はある。それでも、何も失わずに成果物を得ることができないこの世界じゃ、それは失敗なんかじゃない」
まとまらなくなってきたな。完結に言いたいところなのに
「今回は成功だ。お前が失敗だと思っても、紛れもなく成功」
「でも先輩の体ボロボロじゃないですか……」
「気にすんなよ。勝利を奪うための犠牲だ」
残りの競技はあと一つ
最終決戦に向けて俺は少し休ませてもらおう
いや、出場不可能かもしれないな
それも、今はわからないことか
俺が止まっていても勝てる
そのためのチームなんだから
All For All
短めですね
体育祭編クライマックスです




