52. 昼休み
「午前は導くんフル参戦でしたね?お疲れさま」
「荒威先輩のソロアタックとか除けばフルですね。雨羽先輩もお疲れさまです。球入れ、見てましたよ」
現在、昼休みになったので雨羽先輩と話ながらSVTが使う404教室へと向かっている
雨羽先輩はギミックではなく、生徒会として体育祭に臨んでいるため、俺たちとは待機部屋が違って、異なる行動をしているのだが、昼休みは例外だ
「昨日言ってた通り、弁当は持ってきていません?」
「雨羽先輩のお弁当を食べれるんですから持ってきてませんよ」
苦笑で応え、辿り着いた部屋のドアを開ける
「動くな」
開けたとたんに銃を向けられている状況
裁凪先輩がグロック18を向けてきている
「赤木か。遅かったな」
裁凪先輩が銃をレッグホルスターに戻す
「ん?御奈沢も居たのか」
「みなさんお疲れさまです」
教室に入り、適当に詰まれている机を二つ引っ張り出す
「どうぞ、雨羽先輩」
「ありがとうございます」
向かい合わせで席を並べ、俺は席に着く
見れば、裁凪先輩もシートの上に座り、銃をバラしながらお握りを食べている
冴崎もパソコンをいじりながらデスクの上に果物いっぱいの女子フィールドを広げ、一方その横では隠牙さんが左手でポテチをつまみながら右手の片手タイピングでパソコンを操作している
銀嶺兄妹も四角いランチボックスに入った同じ具のサンドイッチを食べている
みんな飯か
鷹宮先輩と水爪は俺が見た瞬間に気配を感じたらしくこちらと目が合う。二人とも普通の弁当みたいだ
「ラブラブみたいじゃない。会長」
早くも食事を終えてだらけて寝っ転がっていた星霧先輩がこちらを冷やかして来る
(がんばりなさいよ)
って、雨羽先輩が読唇術使えないからって俺にそんな事期待されてもな……
「赤木君は、魅力的」
「俺に聞こえるように言っただろ!?」
「裏寡も五十嵐も黙って飯食え」
三人衆固まって食べている荒威先輩と五十嵐と裏寡
なんで荒威先輩はカップ麺で五十嵐はウィダーで裏寡はカロリーメイト……
あんたらどうしてマトモな弁当じゃないのか……ってか荒威先輩に関してはどこからお湯を調達した……?
「あれ、そう言えば永月さんと静道先輩は?」
「永月は家族と食べている。静道先輩は高い所で食べて来るってよ」
冴崎に言われる
怪我とかで運ばれた訳でないなら問題ないか
「どうぞ、たくさん食べてくださいね!」
「おお……!」
そうこうしていると、雨羽先輩の弁当が広げられていた
二段構えの弁当箱、サイズは結構でかい
一段はお握りがぎっしりと詰まっている
二段目には数多のおかずが美味しそうに並べられている
いつか見た冴崎の弁当の様な冒険は無いが、美味しそうな一般的なおかずが並んでいて、安堵している
美味しそうだ
「よう、遊びにきたぜ」
ここは体育館の屋根の上
本来は生徒は登れないのだが、台風などで飛来物があった時に落とせるように梯子は設置されている
もっとも、俺の場合は梯子なんか無くても登れるけどな
「よく来ましたね」
さっきまでのジャージとは違う、カーキの軍服に斜めに被った制帽
レンジャーの様なその姿で弁当を食べている鐵に近づく
「あ、銃とナイフは置いて構いません」
鐵が懐から一丁の回転式拳銃を取り出して置いたから、俺も黙ってジャージのポケットの中に突っ込んでいたナイフを取り出して、座りながら横に置く
「飯の間は不可侵だからな?」
「イギリス軍の様な事を言いますね。まあ、ティーブレイクと食事中に武器を握るつもりはありませんよ」
言われつつ、ビニール袋からメロンパンを取り出し、袋を破り、かじる
こいつ、殺気も何も無いんだよな
どこまでも公平
ケジメがあるようだ
「中学時代は体育は全て5。武器兵装に関する知識は並ではなく、クラブ・マガと少林寺拳法を習得。肉弾戦も強いんだってな?」
「護身術程度ですよ。そちらにはアサルターがいらしたみたいですけど?」
「三年生なんだよ。もうすぐしたら受験勉強で、世代交代するんだ。だから少しは作戦や武器兵装に詳しい人間を引き込みたくてな」
「ふむ……SVTは本当に興味深い組織です」
メロンパンを食べ終わり、焼きそばパンを出して、かじる
高校生だ、パン一つで体育祭なんか乗り越えれない
「SVTについて、そんなに話していいのですか?わたしも詳しくは知りませんが、犯罪を用いて義を行なうのでしょう?」
「義賊だな、あまり警察に言われると良くない。だが、お前はそれをする事は無いだろう?」
「メリットがありませんからね。SVTと言う存在が町を守っているのなら、その存在に加勢しようがしまいが、邪魔はしません」
見解通り
武装を好む人間は、暴力的だと言うイメージが持たれがちだ
だがそれは違う
真に武装を知る人間は、武力がもたらす物を知っている
誰かを傷つける事も、自分が傷つく可能性がある事も
だから総合的に、暴力を嫌う傾向にある
破壊力に対して、畏怖を抱く
武器を愛する事が暴力ではなく、暴力が手を伸ばすのが武器なのだ
「なかなかに正義感の強い人間だな。お前も」
「私は暴力に対しては抗う気力がある。しかし、『常』を『良』に変えようとするあなたたちのボランティアのような気力はありません」
これは違うだろう
気力はある
この人間が持っている正義は本物だ
「一人じゃやる気があっても出来ないだろ。知っているぞ、鐵」
「やはりバレていましたか……」
ここにきて感情を見せるように表情を崩す鐵を傍目に、語る
「俺がお前をスカウトしようと思ったのは2ヶ月前だ。お前が駅前でナンパしていた男集団に絡まれてた中学生を助けていた時から、スカウトしようと思っていた」
「わたしがあいつらを蹴り飛ばそうとしたらあなたが止めたんでしたね」
「君の動きから、相手が外傷を負う可能性を考えたんだ。外傷負わせれば傷害罪になって、罪に問われる。あの状況では正当防衛にはならなかった」
「あの時点で私の力を見抜くなんて大したスキルですよ。まったく」
こいつは一人で動こうとしていたが、一人で動くと未来を失う可能性がある事に気付き、動けなくなった
SVTは、こいつの居場所になるかも知れない
こんにちは永久院です
鐵真希と静道彰の会話がありました
久しぶりに雨羽先輩出てきました
体育祭編も後編に突入です




