⑤ 戦いは始まったばかりだ
対生徒会戦を終えて 次の日
赤木 導は登校していた
「さみ」
今日の地面は雪が結構積もっていて 浸水してきそうだ
履いている靴は葉城につくってもらった物で
一見するとただのスニーカーなのだが熱を通しにくく 温かい
更に防水性能も万全で雪道でも足が濡れる事は無い
靴底も特別なモデルになっているらしく 濡れた屋根の上やアイスバーンで活動する時にも滑らないようにできている
足回りも高めに作られていて 雪が物理的に侵入するのを防いでいる
要するに わりとハイテクな靴なのだ
とはいえ ハイテクな靴であっても寒いものは寒い
と、今まで真っ白だった地面に変化が見られる
足跡だな
学校に近づいたから すでに登校している人が残した足跡か
だが、俺も『SVT』のミーティングがあるから早く登校しているのであり そんな俺よりも早く登校している奴は……何しているんだ?
考えていると 周辺の足跡が増えている事に気付いた
今日、何かイベントでもあったか……?こんな人数がすでに登校しているのはおかしい
早過ぎる 一体何が……
と、学校が目視できたところで 慌てて隠れた
緊急事態だ……
「これは……朝の挨拶運動か!?」
慌てて木の陰にしゃがみ込んで隠れた導が誰にとも無く声を上げる
そう、これは生徒会役員主催の『朝の挨拶運動』
年に何度か 朝から校門前に生徒会役員が立ち並び 挨拶をして来る あの気まずいイベントだ
役員の足跡かこれ
いや、それはどうでもいい
昨日の今日でやってきやがったか……
人目に着く場所で生徒会の権力を行使されれば 昨日のような強行手段で対応する事ができない
取り敢えず……静道先輩に連絡だな……
ポケットからスマートフォンを取り出して静道先輩へのメールを作る
『緊急事態です 生徒会が校門前で挨拶運動をしています』
送る
敵勢力の確認……合計7人か……
ん?待てよ 7人?
少なくないか?
末端メンバーも並ぶ事を義務づけられているはずだから 本来はもっと多いはず……
「あぁ、確認したぞ 赤木 ヤバそうだな」
「うわっ!?静道先輩いつの間に!?」
いつの間にかに俺の後ろに背の高い青年が立っていた
静道彰
『SVT』のリーダーで戦術の考案 奇策等のカリスマで彼のおかげで『SVT』の活動は成り立っているともいえるだろう
ただし、温度の変化に驚くほど弱く 一年中長袖を着ているため奇人としても呼ばれているらしい(最近知った)
「今来たところだ 緊急召集としてここに面子を集めるように指示を出したから待つぞ」
「はい」
生徒会は俺らを捕まえようとして来るだろう
オールスルーはできない これは『挨拶運動』だから無視してしまえば 不自然
かといって同行してしまえば証拠とやらを使って無理矢理犯人にされる
「ふぅー こんな寒い時に長期戦に持ち込むような事を持ち出して来てー生徒会めー」
「よう、葉城 早いな」
「おはようー しーくん 静道先輩もおはようございますー」
葉城七美
『SVT』の科学技術部門の部長をしていて その高度な技術から特殊実働部隊 βチームに所属している
主に 作戦で行動すると言うよりは『便利な物資を作り出し支援する』ことで貢献している人だ 結構重要
「おはよう 三人とも」
「おはようございまーす 寒いですねー」
イケメン厨二病 銀嶺静流先輩と金髪で一見不良の体育会系男子 五十嵐駿
キャラが濃いのが集って来たな……俺と五十嵐が地味っぽいぞ
その後 続々とメンバーは集って来て 全員が集合した
「点呼するぞ 赤木 いるか?」
「はい」
「冴崎」
「はい」
「水爪……ってあれ?どこだ?」
「ここです……」
「うわっ!?気配消してたのか でもいるんだな?」
「いますよ……」
「葉城」
「はーい」
「鎌月」
「はい」
「五十嵐」
「はい」
「裏寡」
「はい」
「荒威」
「うぃ」
「星霧」
「ん?」
「いや、点呼だから」
「そう」
「鷹宮……ってあれ?気配消してるのか?」
「……勝手に消えるんだよ」
「!?……目の前だったのか あるよなー 近くにあるからこそわからない事って」
「……」
「銀嶺」
「I'm here」
「英語かよ……裁凪」
「イエッサー!」
「……全員確認 よし ブリーフィングだ」
全員で円を描くように並ぶ
「では、任務の確認をしよう」
静道先輩が口を開き 全員の視線が集る
「本日 生徒会の『挨拶運動』が行なわれている 生徒会に見つかれば捕縛される可能性が高い よって生徒会に見つからないように学校に入る必要がある 授業に遅れないようにできるだけ早く行く事も条件に入るぞ」
「たいちょー 無視して進めばいいんじゃないのー?」
そう言うのは女子にしては背の高いポニーテールのお姉様風のような格好をしている 星霧麻菜先輩
「いや、今回は『挨拶運動』だ 無視して進もうとすれば生徒会は名目上注意をできる そのまま職権で俺たちを捻り潰すのも可能 無視して進む事は今回 相手の思うつぼだろう」
「あー そうかー」
「……と、言う訳で考えた作戦がある」
静道先輩は話を続ける
その作戦は単純明解 小学生にも考えつくような作戦
「生徒会役員に見つからないように校内に入る 作戦でいこうと思う」
「「「え?」」」
全員が同時に声をあげた
「そんな単純な作戦でいくの?」
星霧先輩が全員の意見を代表するように聞いた
「あぁ、簡単な話だろ 罠があるなら罠を避けて通る それだけの話だ」
……
「先輩 正門に並んでいる生徒会役員の数が少ないです 他のエリアも警戒して私たちを待ち伏せしている可能性が高いでしょう」
裏寡が俺が考えていた事と同じ事をいった
そう、正門の人数は『挨拶運動』に必要な人数だけしか配備されていないように見える 他のエリアの警戒に人材を回して俺らの行き先を見張っている可能性が高い
警戒されている位置がどこだかわからないが 適当に正門以外のところを選んで通っても間違いだろう
「……言われてみればそうだな では……偵察をしてから警戒されていないラインを突破しよう」
「それが妥当でしょう」
「偵察は……どうしようか」
静道先輩がメンバーの顔を見回す
「先輩 学習準備室に行けば試験機ですけど 偵察機が置いてあります」
鎌月がそう言って……って!?
「偵察機!?」
「ラジコンを改造してリアルタイムで映像を送れるようにした他 結構高性能な偵察機を作りました」
「そうか……では地上の警戒を人間がやって 念のために屋上の警戒をラジコンでやるか」
ラジコンを取り出すって事なのか
いや、それって……できんの!?
「ラジコン奪還任務からの 敵の戦力分布の確認 警戒されていないエリアからの潜入が目標だな」
めっちゃ無理ゲーキター!!
ど、どうするんだ……?
「ところで……どうして裁凪は雪上迷彩を着ているんだ?」
「私服のコートがこれしかないから」
……カオスやぁ
「……よし、そうだな 裁凪と水爪、鷹宮の三人でチームを組んでもらう 任務は『隠密行動で学習準備室から偵察機をとってくる事』だ いけるか?」
「「「了解」」」
「他のメンバーは目視で確認できる地上の警戒兵を確認してもらう 二人組で動け」
「「「了解」」」
全員の復唱が終わり それぞれの闘気がみなぎるのを感じた
いくぞ
俺たちの登校はまだ始まったばかりだ
登校していた赤木に襲いかかる試練
緊急ミーティング開始!
次回 世にも奇妙な隠密登校作戦が始まる!
出動せよ『SVT』!!