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② 作戦会議

肌寒い朝の空気に包まれて 少年が歩いていた

うっすらと積もる雪に足跡を残して 登校する

彼の名前は赤木あかぎ しるべ

珍しい名前だが最近の子供であるため珍しくはない

そう、その少年は 少年と言うのには幼く無く

大人と言うのにはまだ若い 男子高校生だ

新しい雪は踏むと「キュッ」と音を立てて気分を高まらせる

若干寝不足気味だが 冷たい外気で眠気は無い

吐く息は白く糸のように伸びて……

「さみ」

ポケットの中に手を入れて、背をかがめて歩き続ける

高校も湖に隣接している為 必然湖付近を歩くのだが、これが寒い

顔を吹き抜ける風の冷たさは 痛みすらも感じさせる

「おや、赤木君ですね おはようございます」

「あ、おはようございます」

後ろから声をかけられて振り返ると そこには美少女がたっていた

俺は現在高校1年生だが その人は先輩 高校2年生

御奈沢みなざわ 雨羽あまは先輩

現役生徒会長 才色兼備 美しく、総統力をもち、優秀でまさに生徒会長の器に相応しい人だ

「今朝方は随分派手にやってくれたようですね」

「相変わらず 良い耳をお持ちのようですね」

隣に並んで一緒に歩く

マフラーをして 美しい髪をのばし 清楚な美少女である先輩はなんというか……高嶺の花だ

それでも一見すると並んで歩いているただのリア充にしか見えないだろうが口調や視線を見ればわかるだろう

そんな関係じゃない

「わたしが持っているのは良い耳じゃなくて、良い目なんですよ もっとも、全長3mオーバーの雪だるまなど遠くから見えても当然ですが」

「奇妙なことも起きますね 先輩」

「あの雪だるまが手に持っていた旗、『SVT』って書いてあったんだけど 今年で何件目でしょうかね?」

「さて、雪だるまを作るだけなら罪にはなりませんし問題は無いのでは??」

互いに視線はかわさず 上の空のように話し合う

「不法侵入は犯罪ですよ それに大型雪だるまを安定させるのに公園の遊具をフレームとして使われては子供達が遊べませんから困ります」

「不法侵入ですか?」

「昨晩はあんなに豪雪だったのに民家には少ししか雪が被ってないなんておかしいでしょう??」

「雪が重みで屋根から滑り落ちたのでしょう」

「あなた達 ボランティア活動での地域貢献は認めるけど 犯罪まじりの活動は生徒会長として止めたいところです」

この御奈沢先輩は俺たち『SVT』を知っている

学校で推奨されるボランティア活動も入学してから皆勤

その他の活動でも先生の補助や壊れた備品の修理の手伝いをしていた俺らは御奈沢先輩の目にとまり

御奈沢先輩は俺らを生徒会にスカウトしようとした

そしてそのスカウトの際 当時既に活動を開始していた『SVT』の活動について話を出されて……

全員過剰に反応してしまった

「そんなものあるわけない」「あるとしたら凄まじい総統力」とかはまだ許す

「俺らは『SVT』じゃないです」とか言った奴も居てもはやグダグダだった

その時に俺らの『緊急用動作信号エマージェンシー・コード』でなんとかチームワークを利用して抜け出したのだが

最悪なのは その信号が少し見られていたと言う事だ

「一日にして住宅地一個分の豪雪を雪かきするなんて人数もチームワークも必要ですよね」

「そうですね」

「チームワークを発揮してボランティアをする集団なんてあなた達しか居ないでしょう?」

俺らは学校の掲示板にのっているボランティアに参加するときも訓練としてチームプレーでの活動をしているのだが

当然、そこにも生徒会長として参加しているため 俺らのチームワークは見られているのだ

「で、僕らがやっていると言う証拠はあるんですか?」

この聞き方は本来 自分がやっている事を肯定するような言い回しだが 問題は無い

「今回も一切の証拠が無かったわ 流石だわ 『SVT』」

俺らの地域貢献活動は無償の愛によるものだ

しかしながら、休日に行なわれる学校推奨のボランティアはなんだかんだ言って結局 パンやらスポーツドリンク 時には図書カードすらも与えられてしまう

ボランティアの定義として『無償性』『自発性』『利他性』の三原則がある以上 俺たちはそれらを地域貢献とは数えたがらない

そのため 俺らは深夜に誰にも見つからず 一切の証拠を残さずやるのだ

そうすれば 誰にも報酬をわたされず 自分たちのボランティアをできる

「目撃者の一人もおらず 屋根の上に足跡も残っていないし 景色に不自然さは無かった それなのに、アイスバーンは無いし 数年前みたいに大雪で屋根に穴があく事も無い 不思議ですよね」

「本当に不思議ですね」

「まったく……じゃ、わたしは生徒会室にいるから 殴り込みに来るなら来ても良いですよ??」

「それは僕らが犯人である証拠になりますから やりませんよ」

苦笑しながら先輩と別れる

生徒会室は二階 職員室の横にある そんなところに殴り込みにいけば単位を落としかねない

校舎の玄関に入り 上履きに履き替え 廊下を歩く

この一階の廊下は自然光が殆ど入らない上に安全上コンクリートで殆ど作られているため 冬になると外気を凌ぐレベルまで気温が下がる

まるで大型の冷蔵庫を歩いているような気分だ

廊下沿いの水道は凍ってこそいないものの 蛇口を捻る際にその金属部分から熱を持ってかれて痛みを感じる事で有名

……真っすぐ行ったところで階段を上り 4階まであがる

1階が理科室や調理室を基本とした実習室が並ぶフロアならば 2階 3階 4階は一般学習の部屋が多く並んでいる

その中の一室『学習準備室』と書かれた よく考えると意味のわからない教室のドアを開けて入る

当然だが 自分のクラスではない

中には大量の地球儀や世界地図 壊れた机や扇風機等の行き場に困ったものが押し込められている

その荷物の奥には会議室に置かれているような長机といくらかの壁に向かっている机があったりタンスがあったりして……

「赤木か おはようさん」

「相変わらず早いな 冴崎さえざき

部屋の奥 カーテンの閉じられた窓際の角 事務用の机にデスクトップパソコンがあり そこに向かって高速で何かを打ち込んでいる女が居る

冴崎さえざき 美咲みさき

韻を踏んでいる名前を持つクラスメイトの女子

クールそうな空気を醸し出している少女

「赤木こそ早いじゃないか わたしに一秒でも早く会いたくて走って来たのか?」

抑揚無く 何の根拠も無い台詞を口にするクール系

これなのだ、何の抵抗も無く無邪気な言動を抑揚無く行なう

ある意味電波さんとも言える少女

こいつが『SVT』のオペレーターにして、『SVT』情報部長なんだよな……

「……今日は活動後のミーティングと 次回作戦の会議だろ」

「生真面目な奴だな 大好きだよそう言う奴」

「ありがとさん で、面子は?」

「実動部隊 αチームの隊長の赤木が今居て 他の連中はまだ来てない」

「俺らしか来てないのか……」

「寒いからストーブつけてくれないか?」

「あいよ」

とりあえず言われた通りにストーブのスイッチを押した時 部屋に新しく誰かが来た音がした

「おはようございまーす」

「この臭い……ストーブを丁度今つけたねっ!」

色々詰まれた道を抜けて現れる二人の人

「βチームリーダー 静道せいどう あきら 出頭しましたーっと」

「科学技術部長 葉城はしろ 七美ななみ 出頭ですっ!!」

背が高く 制服の上から長いコートを着込んでいる大人びた青年風の男が荷物を投げ出すなりストーブ前に駆け寄り手を温め始める

『SVT』特殊実働部隊βチームの隊長 2年生の静道せいどうあきら先輩

身体能力 判断力 総統性に秀いており 『SVT』の総合リーダーもやっている

「あー……さみぃ いつから日本はこんな極寒の国になっちまったんだ……」

何やら温度変化に弱いらしい と言う事をよく聞く先輩だ

「しーくんにみーちゃんおはよーさー!!」

鞄を机に置いて挨拶して来るこちらの少女は静道先輩とはちがい 背が低い

同級生 葉城はしろ 七美ななみ

『SVT』の中でもβチームに所属する特殊部隊の隊員

外見は子供も同然だが そのクリエイティブさで作られる独創的な物品の数々で『SVT』の重要な役目を果たしている

特に科学技術系統については『SVT』の中でもトップレベルで 『SVT』科学技術部長でもある

工作技術はすさまじい

「おはようございます 静道先輩 今日も冷え込みますね」

「昨夜のオペレーションの時よりはマシだが……うちの高校の制服なんでこんな熱通すんだよ……!!」

「そう言えば先輩 上着着てませんね」

不思議に思い導が彰に言うと

「俺、いつもは『SVT』の制服のジャケット上から着てるんだけど オペレーションで濡れちまって 乾かなかったから仕方なく着てこなかったんだ」

『SVT』の隊員は世闇に紛れて人に見つからないよう また、見られても人物の特定が難しくなるように全員同じ制服を着る その制服は官給品ではあったが……

「上着として使ってるって……」

「だって葉城君が作ってくれたジャケット暖かいじゃないか 昨日のオペレーションでもあれが無かったら筋肉の動きが鈍って失敗していたかもしれない」

制服には夏服と冬服を用意していて 夏用は別の人が作っているが冬服は葉城が作っている

確かに、軍服みたいなデザインで 黒一色なのも格好いいし 制服のブレザーよりは遥かに暖かい

と、導と彰が会話しているとぞろぞろと人が入ってくる音がした

「おはよー」

「時間通りだ!」

「ミーティングっしょー??」

合計13人の人間が集まった

ストーブ周辺の人込み半端ではない

「『SVT』メンバー全員いるかー? いるな それじゃ ミーティングをするから座れ」

各自 馴れた様子で座る

四人で座れる会議用の机がコの字型に並んでいて 字で言うところの右の縦線の机に右から実働部隊隊長の導 特殊実働部隊隊長兼『SVT』総合リーダーの彰

そして、情報部長の美咲 科学技術部長の七美が座る

残りの9人もそれぞれの席に腰掛け こちらがわ、もとい彰の方を注目している

「まず最初に、各員ご苦労だったな、と労わせてもらう 昨日の作戦も上手く達成できた 完璧だったぞ」

彰が口を開き 言葉を紡ぐ

「昨日の、雪かき作戦は隠密性、素早さ、正確さ、このすべてを必要とするたいへん難しい任務だった アイスバーンやバスの襲来による一時作業の停止はあったものの カウントするに及ばないものだった 本当にご苦労だった」

そう締め括ると 彰は口を閉じる

「さて、では反省会だ 今回のオペレーションの反省点をまとめよう」

今度はオペレーターの美咲が立ち上がり コの字で言うところの 縦線の正面 空白の線がないところに置いてあるホワイトボードの前に立って話始める

「私からのお詫びは一つ、監視カメラならびに付近の調査機器が雪のため視界を安定できず不調だった さらにそれの影響でバスの確認にも遅れた 偶然いいタイミングで照明弾が消えたものの もしかしたら気づかれていたかもしれない 今後はカメラの数を増やして対応する 私は以上だ 他のものは?」

ホワイトボードに『監視カメラ不調』と書いて反省点を述べる美咲

「はい 科学技術兵 鎌月かまつきまいです」

「どうぞ」

一人の少女が手を挙げながら身分を言う

「アイスバーンの破壊の際にまいた石灰の撤去を忘れました 恐らく雪だるまに蓄積されているとは思いますが 触れると手が白くなると思います 今後は別の手段を考えたいと思います」

「そう言えばそうだったな 別の手段は考えつくか?」

「高圧洗浄機と魔法瓶型の巨大ポットをくっつけてお湯を高圧で発射する機器なら製作も代用も可能です 使用後に水をブローマシンで道路脇の溝に落とせば凍る心配もありません」

「ふむ、そうか では製作を頼もう」

「了解です」

「他は?」

いや、すごいな うちの技術班レベル高い!

「はい!科学技術部長 葉城 七美!」

「どうぞ」

「冬制服でみんな活動してたけど 雪上迷彩の方が雪かきは向いているので今度の任務までに作りたいです!」

「時間がかかるんじゃないの?」

「お金があれば時間は何とかします!」

「リーダー どうしますか?」

「実はこの間 社会科の井古いご先生のパソコンを直したら給料をもらってしまった その他にも貰ってるから6000円以内で人数分造ってくれるか?」

「可能です!」

「では 製作を頼もう」

「了解です!!」

「他はいるか?」

「照明弾がバレる危険性があるので いざと言う時にすぐ落とせるようにエアガンを採用しましょう」

「そうだな 各員 持っている人は装備していこう」

「他は?」

……

「では、第一回雪かき作戦の反省会を終了する」

美咲は再度 自分の席に座る

「さて、次の任務だ 『路面凍結防止作戦』について 次の作戦は 車輌をスリップさせて大事故の原因にもなる路面凍結 アイスバーンの防止策だ」

全員が黙ってリーダーの話を聞いている

「昨晩の任務の際 路面凍結を払ったな?あれをもう一度やり 今度は道路に塩化カルシウムをまく いいか?」

「了解」

俺は返事をして 他の人も返事をしている

「詳細は放課後に話し合おう では、今回のミーティングは以上だ 解散!!」






永久院です


残念系 全力ボランティア作品……

この作品はジャンルとかカテゴリは何に入るんだろ……?

空振り系労働コメディ?

バカ真面目社会奉仕コメディ?

……これも今後考えてみましょう


さて、次回もお付き合いいただけたら幸いです

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