王城で暮らす人々
王城には王族、貴族、準貴族だけしか入城出来ない印象がある。
が、実際は平民もそれなりの人数が城内で活動しているのである。
無論、さすがにその辺の町人が気軽に入り込める場所ではない。
例えば画家や演奏家などの芸術家。庭師や商人などもいる。
こうした者達は、事前に内務局から厳しく選抜された者達であるが、
入城許可証を持ち、ある程度自由に王城の内外を行き来している。
一番数が多い平民は、王城の使用人達だ。
彼ら彼女らは礼法学校を優秀な成績で卒業し、貴族に見劣りしない。
主に王族の日常を支える者達であり、普段も城内で生活している。
大抵家族も王族や貴族の使用人を務めており、いわば使用人の一族。
王城勤めとなった者はそうした一族の誉れとも言われている。
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彼ら彼女らは、貴族や準貴族とは異なり家の存続にほぼ頓着はない。
ゆえに結婚相手を探して奔走したりしない者ばかりだった。
貴族や準貴族が遅くとも二十歳あたりで婚姻し子供を作るところを、
平民の使用人達はそれより婚姻が数年遅い事もザラにあった。
だがさすがに、王族の乳母の役目を与えられた者はそうもいかない。
何せ赤子を授かっていなければ普通の者なら母乳が出ないのだから。
よって乳母候補となる女性は子作りを急かされる傾向にあった。
若い王族の婚姻と同時期に、特にそれは顕著となる。
王家も無理を強いているので、乳母候補は他の者より優遇される。
城内に集合住宅ながら住居を無償提供され、手厚く保護されるのだ。
また、候補となる女性を増やすために集団見合いも行われている。
その甲斐あって使用人同士での夫婦は結構な数に上った。
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使用人の彼女、イーゴは集団見合いで結婚した乳母候補の一人。
ちなみに夫君のアラベスコは王宮の料理人だ。絶賛子作り中である。
毎晩のように頑張ってはいるものの、授かり物はなかなか難しい。
先日第二王子の御子がめでたく生誕、乳母は別の者達が選ばれた。
別に乳母になれずとも、それで住居を追い出されたりはしないが、
努力が報われなかったのはやはり落胆するものがある。
アラベスコもイーゴへどう声をかけたものかと思っていたのだが、
御子の乳母が決まってすぐ後にイーゴの妊娠が判明した。
イーゴは産休に入るが、産まれる頃には御子は乳離れしている。
時期の悪さを残念がっていたイーゴとアラベスコだったが。
思わぬところから出産後にうちの乳母にならないかと声がかかる。
内務大臣の長女が懐妊し、城外での話ではあるが頼みたいと。
話自体はありがたい。四大名家のひとつに縁が出来るのだから。
しかしイーゴは本来使用人、城外の仕事を受けるなら退職だろうか。
また、夫君は未だ城内で料理人をしているのだ、住居はどうなる。
夫婦は迷ったが、まずは上司へ相談すべしと使用人頭へ報告する。
最終的に王家を巻き込んだ判断となったが、乳母の許可は下りた。
使用人としては乳母のお役御免となるまでは長期休職扱いとなり、
しかる後に復職せよと。住居もそのまま使用してよしとされる。
相手が公爵家の長女で嫁ぎ先も侯爵家とあらば無碍にも出来ない。
子作りを急がせたのも王族の都合であるし、負い目もあった。
イーゴは出産後、赤子を連れて侯爵家に住み込みで乳母を務める。
赤子と侯爵家の御子が乳離れした後、城内へ戻って復職した。
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この事件は城内に広まり、使用人の女性に結婚を急ぐ者が増えた。
王族でなくとも有力貴族の乳母にならなれるかもしれないと。
イーゴ達が幸運だっただけで実際にそんな事はあまりないのだが。
使用人の女性達にひとつ道が拓けたのは良い事なのかもしれない。
出産がらみの話が続くのもどうかと思うけど




