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レクイエムはまだ捧げない(番外編)

作者: コラソン
掲載日:2026/10/18


板倉大志35才独身。

そうだよ、俺だよ。


会社員の傍ら、老人の天使のサポートを

しているが、詳しい話は本編を見てほしい。


いや、ごめんなさい。ご覧ください。


俺の親父

板倉英二。今現在、58才。普通に会社員。


若い頃は

アマチュアバンドの活動に夢中になり

ギターを鳴らした。


そんな親父を見て育った俺が

高校生の時、欲しかったギターは

Gibson ES-335。

このセミアコが

高額で、買えなかった。


どうしても欲しかったGibson。


コンビニのバイトと、他にも

飲食店やら、単発バイトをこなしていた。


LIVE HOUSE『EMBER』


このライブハウスは、オレの親父が

バンド活動に使っていた老舗で、

俺の原点は、間違いなく『EMBER』だ。


幼稚園の頃から、親父の後ろに付いて

『EMBER』に通った俺。

クリスマスには、あ○○○マンのギターを

買って貰い肩に掛けて、鳴らした。


開店前の『EMBER』のステージの脇で。

嬉しくてたまらなかった。



父は、その俺の姿を見て驚く。


ライブハウスの壁に張ってある

単独ライブの

フライヤーに載っていた自分と

目の前の幼い大志がそっくりな姿勢で

ギターを抱えていたから。


板倉英二は、その頃にある決心を

していた。自分を含め、

バンドメンバーは本業に忙しくなった。

家庭も出来た。大切なものが増えた。


バンド活動を、休止した。

幸せな都合で、止めた活動だ。


暇ができたら皆で集まればいい。


LIVE HOUSE『EMBER』から、

本格的にデビューしたバンドもいる。


彼らから

時々レコーディングに呼ばれたり

ステージに出る機会も割とある。


ギターを辞める訳じゃなかった。


おもちゃのギターを抱えた大志。

もしかしたら…。この子にギターの

コードを教える日がくるかもしれない。


英二はそう思っていたのだが、

大志が高校生になると、

「ギター教えて~」と素直に言ってきた。


自分の愛機Gibson ES-339を大志に持たせて

コード表を見ながら、教える。


「大志、自分のギター欲しいか?」


大志はギターをポロポロと鳴らしながら

「欲しいから今バイト掛け持ちしてる。

ちょっと、邪魔しないで教えてー」


「へぇ。何のギター?買ってやろうか?」

親心が出る。ギターが好きなら甘やかしたい。


「GibsonES-335。俺ギタボなんだ。

直人がメインギター。

もうフェンダーのストラト持ってて、

すげえ羨ましい。」


「買いに行くか?」


「俺さ。親父見て、小さい頃から『EMBER』に来てるバンドも沢山見たけど。格好いいなって

ずっと思ってて…」


「思ってたのか。そうか。じゃあ

買いに行くか! 今から!」


「そうじゃないだろ。俺が言いたいのは

アマチュアバンドの人って、欲しかったギターをやっと買ったときに、

嬉しくて、大志! ほら見ろーって

幼稚園児の俺にまで見せてくれたんだ。」


「お前は皆から可愛がってもらったからなぁ。」


「自分の稼ぎで頑張ってお金ためて、

買ったギターって。格好いい。」


「まぁな。俺も久々に店に行きたい。

Gibsonの松本モデルのカタログ見たい。」


「行かないってば!

自分でバイトして買う。」


「でもバンドの練習は?まさか、あ○○ん○ンのギター??」


「なにいってんだよ親父

俺、安っっいギター鳴らしてるから。

中古のジャンク品。

暫く我慢する。安くても、ちゃんと鳴る

可愛い相棒だよ。」

そう言った大志に、英二は


「それ。今持ってる俺のギター

お前がそのGibson持って鳴らせ。」


どんな、中古のジャンク品でも

ギターに愛情を持って鳴らしてる大志なら、

大丈夫。


「セミアコだけど、使えるだろ。」


大志が顔を上げた。

「え?これ、親父の宝物じゃん。

え? 親父しぬ? 死ぬの??」


大志の頭をぐしゃぐしゃとやりながら

「大志。アホか。俺は健康だ。」

と言って笑う。


「これ!

親父の先輩から貰った大切なギターだろ?

俺貰えないよ!!」


昔。

英二がまだ、高校生の時だった。

5才年上の先輩バンドがいて、仲良くしていた。


ギター担当だった、早見さんは

とにかく英二を目に掛けてくれた。


プロデビューを目指していた先輩たち。

やがて、音楽の方向性に食い違いが出始めた。

先輩達が決めたのはバンドの解散。


解散ライブの日。ステージから降りた早見が


「英二、これ貰ってくれ。コイツはまだ

ステージで鳴きたいんだよ。頼む。ほら、

頭ちょっと下げて。屈んで。」


そう言ってGibsonES-339を英二の肩にかけた。


「俺は、音楽プロデューサーになる。

英二は時々レコーディング手伝ってくれよ」


そうして強引に貰ったGibsonは

英二の宝物になった。




大志は、慌てた。

「そんな大事なギター貰えないから。」


「大事だから、お前に譲るんだよ。

欲しいGibsonは、頑張って買うんだろ?」



「でも。天国にいる早見さんに申し訳ないよ

俺なんかが、貰えない。」


英二は大志にパチンとデコピンした。


「早見さんまだ現役だぞ。バカ!

来週、早見さんに

レコーディングのサポートに呼ばれてんだよ。大志。時間あったら一緒に行こう。

Gibsonを持って。」


後日、無事に早見さんに会った大志。

GibsonES-339を見せながら


「初ライブ、これで行きます!」

大志がそう言うと


早見さんが「ありがとう。」といって泣いた。


自分の大切にしていたギターがまだ現役で、

ステージへ行けること。


大志が

幸せそうに、ケースから出して

「ほら、今日は早見さんに会えたな。」

とギターに語り掛けた。


英二に譲ったGibsonは

その息子に渡り、愛されていた。

あのラストライブの日に、

まだまだ鳴らせるギターを飾るだけに

したくなかった。


ステージにつれていってほしかった。



そんな高校時代の思い出と共に

大志は35才に。

英二は58才になった。


まだまだ、現役なGibsonES-339。


バイト代で苦労して買った

GibsonES-335


このふたつのギターは

大志の大切な、愛機だ。





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