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卵殻の醸造所


  村で評判の母さんは

  項垂(うなだ)れながら呟いた

  「この子駄目な子、でもわたしの子」

  それを聞いた妖精たちは

  嘲笑いながら歌ったよ

  「あんたの頭の中の子か

  それとも揺り籠の中の子か

  どちらが本物、いってごらん」


  村で評判の母さんは

  「そりゃあ、あんたお前さん

  頭の中の子が本物なのさ」

  それを聞いた妖精たちは

  嘲笑いながら歌ったよ

  「ならば村の嫌われ者の婆さんに

  (まじな)い上手な鷲鼻女に訊いてごらん

  どちらが本物、わたしの子か」


  村で評判の母さんは

  さっそく森の奥に飛んでいき

  崩れかけの薄暗い荒屋(あばらや)

  呪い女にいわれたよ

  「あんたも少し悪いのだが

  いうとおりにおやりなさい

  卵の殻をぐつぐつ煮立て

  鉄の棒を芯まで熱し、さてその後で――」


  村で評判の母さんは

  いわれたとおり、準備にかかる

  それを見ていた妖精たちは

  嘲笑いながら歌ったよ

  「卵の殻を醸造なんて

  実らぬことをしなさんな

  鉄の棒を熱しては

  赤子に烙印おすなんて――」


  村で評判の母さんは

  なりふり構わず準備をつづけ

  それを見ていた妖精たちは

  嘲笑いながら歌ったよ

  「どちらが本当の子なんだい?

  あんたの頭の中の子か?

  揺り籠の中で眠る子か?

  実らぬことをしなさんな」


  村で評判の母さんは

  準備を終えて気負い立つ

  それを見ていた妖精たちは

  嘲笑いながら歌ったよ

  「わかったわかった

  そんな非道はよしなされ

  お前の子どもを返すから

  頭の子どもを預かるから」


  村で評判の母さんは

  妖精の声を耳にして

  じっくり我が子を見つめると

  あら不思議なれ、不思議なれ

  縮れやつれた妖精の子は

  生まれてこのかた一度たりとも

  目覚めたことない健やか顔で

  林檎色の寝息を立ててた

「卵殻の醸造所」より

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