君と俺の水と
蝉たちが尻を振りながら懸命に愛の歌をがなり続けている夏
その片隅では入道雲がもくもくと空へ昇っていく
それはまるで果てない高みを目指すイカロスの白い翼ようだ
じりじりと照りつける太陽に炙られいじけた公園に君は現れた
君を見たその衝撃を俺はどう表現すればいい?!
軽やかな白いワンピースに麦わら帽子をちょこんと載せた可愛らしい頭
肩口で綺麗に切り揃えられ髪は、黒檀で作られた扇のようで、小首を傾げるたびにふわりと広がり、滑らかに元に戻る。
髪の毛1本1本が擦れ合いサラサラと音を奏でそうだ。
否っ! 俺にはその音が確かに聞こえる!!
小さく赤い唇は熟れた西瓜の果実のようでかぶりつきたい衝動を抑えるのが難しい
きっと瑞々しくて甘いんだろう
小麦色に灼けた肌は滲んだ汗でヌメヌメと妖しく光を反射する
緩んだ肩紐から白い筋が微かに見え隠れしている
それは夏の太陽を浴びた証、くっきりと残る水着の跡なのだろう
今、君を生まれたままの姿に剥いたなら、まるで白い水着をできるように見えるだろうか?
その姿を想像するだけで俺の胸が苦しくなる
君は手をかざし、愛しそうに太陽を見上げる。容赦なく照りつけるあの火の玉を君は恋をしているのか?
俺は君に恋焦がれる
今、俺は恋に堕ちたのだ
君は額の汗を手のひらで無造作に拭うと公園の水飲み場へ歩いていった
灰色の無機質なコンクリートの土台から垂直に伸びる銀色の水道栓
華奢な手で君はその栓をひねる。
ほとばしる水
水!
水!!
屹立する水飲み水栓は、俺だ!
白く泡立ちほとばしる水は俺の魂!
命の本流だっ!!
君はその赤く甘い唇をゆっくりと命本流へと近づける
最初、怖気づくようにチロチロと舌で舐めていたが、やがて大胆にごくごくと喉を鳴らして飲みはじめた
一度開いた欲望の関はとめどもない欲望の連鎖を呼び覚ましたのか、それとも喉の渇きが君の理性を蕩けさせたか
銀色のそそり立つ水栓をそっくり咥えるように身を乗り出し、涼やかな水流をむさぼり続ける
それは目も眩む光景
やがて君は飲むのを止める
溢れた雫が顎を下り首筋を伝い、ワンピースの、微かに隆起した、君が少女から女になろうとしていることをささやかに伝えるその胸元を濡らし、暗く隠微な染みを作った
もう良いだろう もう十分だ
君を供物と決めるのにこれ以上は必要ない
俺は望遠カメラから目を離す
後は君の可愛い声を聞くだけだ
ああ楽しみだ
君の体のあらゆるところから湧き出る水はどんなだろうか?
どんな色だろう
どんな臭いだろう
どんな味がするんだろうな
俺の水と混ぜたなら、それはどんな色になるだろう
俺は身震いしながら公園に向けて
君のいる方へ歩いていく
歩いていくのだ
2025/08/28 初稿




