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再演のディペンデンス  作者: 齋藤瑛
27/33

テディと任務

「テディ様…」


振り返ると、私が探していた人物がお手本のような笑みを浮かべて立っていた。


「げっ、女顔…」

「もう、そんな嫌そうな顔しないでよ。俺はカイくんのために来たんだからさ」

「俺のため?」

「そうそう、ルーくんが昨日の貸し返せって怒ってたよー?まだ()()にいるはずだから早く会いに行った方がいいんじゃない?」


(拠点に?おかしいな、あそこには誰も………)


目が合った瞬間、テディはまるで全てを見透かしたかのように微笑んだ。

私の心臓が跳ねると同時に、先程まで熱を帯びていた深紅の瞳が冷えていく。


「………てめぇ、一体何を企んでやがる」

「企む??」

「とぼけんじゃねぇよ。じゃなきゃ、てめぇが他人を助けるわけねぇだろ」

「助けるよ〜。だって、俺達は他人じゃなくて仲間でしょ?」

「はぁ?百歩譲っても同居人の間違いだわ」

「うわ、ひっどー!あーあ、傷ついたな。カイくんに傷ものにされちゃったなぁ」

「気持ち悪ぃこと言ってんじゃねぇ!ぶっ飛ばすぞ!」


腹を抱えて笑い出すテディを見て、カイルは眉間に皺を寄せて舌打ちをした。

「埒が明かねぇ」と呟いた後、私の頭に手を置く。


「わっ」

「またな、オフィーリア」


驚きのあまり、私は返事をできずに瞬きを繰り返した。

カイルが初めて私の名前を呼んだからだ。


「退け」

「あれ?もう行っちゃうの?」

「てめぇが早く行けつったんだろうが!いいから退けや、クソ!」


カイルに押し退けられ、テディは「おっとと」とわざとらしくよろめく。

それでも嫌な顔ひとつせず、「バイバーイ」と遠ざかる背中に手を振っていた。


「…で、君は俺に何の用?」


そう言うと、テディは振り返る。

探るような空色の瞳に私が映った。


「用があるから探してたんでしょ?」

「ど、どうしてそれをっ…」

「そりゃあ友達多いから。君と違って」


(おい)


「あ、もし良かったら、俺が友達になってあげようか?」

「結構です」


「そんなことより」と私は懐から手紙を取り出し、彼に差し出した。


「テディ様宛の任務です」

「わぁ、ヴィンセント様からのラブレターだ。どれどれ~?」


プレゼントを開ける前の子供のようにはしゃぎながら便箋を取り出したテディは、一読すると小さく呟いた。


「大聖堂射殺事件か…」

「はい。今回の掃除対象(ターゲット)は十日前の午後十一時、ユージーン司教の嫡子デレク・ユージーン十六歳を、大聖堂の敷地内で射殺した犯人です」


手紙を読み終えたのか、テディは「ふーん」と便箋を封筒に戻した。


「なんか、面倒臭そうな事件だね」

「面倒臭い、ですか?」

「だってさ、明らかに隠し事されてるじゃん」

「隠し事…?」

「ああ、君はあんまり大聖堂について詳しくないんだっけ?」


そう言って、カイルは指を折りながら説明する。


「あそこは大聖堂がある中央エリア、聖職者とその家族が暮らす西エリア、そして修道院がある東エリアって感じで分かれてるんだ。でも、この手紙には敷地内としか書かれてない。つまり…」

「教会側にとって都合が悪い場所で殺害された、ということでしょうか?」

「そうゆうこと〜」

「…もしかしたら、そのせいで騎士団は捜査を止められているのかもしれませんね」

「止められてる?誰に?」

「教皇様です」


そう言った瞬間、テディの肩がほんの微かに揺れた気がした。


「…へぇ。なら、まずは大聖堂以外で捜査した方が良さそうだね」


一拍置いて、テディは「あ、そうだ!」と口角を上げる。


「俺にいい考えがある。ついて来て」






××××××××××××××××××××






「着替えたー?」

「はい、一応…」


誰もいない保健室の中。

扉の外から声を掛けられて返事をすると、「開けるねー」と扉が開いた。


「わぁ、すごく似合ってる。本当にこの学校の生徒みたいだ」


男子生徒…のフリをしたテディが、同じく女子生徒のフリをした私に近づいてくる。

そう、私達は何故か制服に身を包んでいた。


「は、はぁ、ありがとうございます。…じゃなくて!何故こんな格好を!?」

「ここは学校だよ?制服着てないとおかしいでしょ」

「いや、別に不法侵入しなくても来校者として正式に訪問すればっ…」

「あっ、ネクタイが解けかけてる。仕方ないなぁ、俺が結び直してあげよう~」


露骨に話を逸らしてネクタイに触れるテディを見て、私はため息を吐いた。


「そもそも、どうしてこの学校に?」

「ここには金持ちの子供がいっぱい居るからさ。被害者と同じ聖職者の子供なら犯行現場どころか、そこで彼が何をしてたのかも知ってるかもしれないしね」

「何をしていたか…?」


首を傾げる私を見て、テディは一瞬目を丸くする。


「ねぇ、知ってる?あそこの就寝時間は午後十時なんだ」

「え?は、はぁ…」

「でも、犯行時刻は午後十一時…おかしいと思わない?都合の悪い場所ってことは自宅ではないだろうし、被害者はみんなが寝静まった時間に規則を破ってまで何をしてたのかなぁ……」


空色の瞳がじっとこちらの様子を伺う。


「悪いこと、とか…?」

「あっ、俺も今そう思った!俺達気が合うね〜」


(完全に答えを誘導された…!ていうか、カイルと捜査してる時も思ったけど、掃除屋(タイディ)のメンバーってみんな頭良っ…)


「ん?どうしたの?…あ、まさかーー」


突然ネクタイを引っ張られ、端正な顔が目の前に迫る。


「惚れちゃった?」

「惚れてません」


(…くないわね、こいつは)


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