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8通 付き合ってなくても、好きな人が他の人と仲良くしてるとムカつく件



 ーー月曜日 大学。




「おはよ」



 机に伏せ、授業が始まるのを待っていると、背中が叩かれた。振り返ると、大学で1番仲の良い、西宮悠真(にしみやゆうま)が眠そうに俺の隣に座った。



「なんか難しい顔してんね」

「んまぁ……なんか色々あって……」

「色々?」

「DMで仲良かったコに会ったんだよね……」



 ことの成り行きを西宮に説明していく。俺の話を聞き、西宮は目を見開き、固まった。そりゃそうだ。色々、間違っているのは自分でもわかっている。



「オフしたその日に男とヤッただぁああぁあぁあ?!?!」

「ちょっと!!! 声がでかい!!! 恥ずかしいから大きな声で言わないで!!!」

「ん゛~~~っ!!!」



 講義の先生に睨まれ、苦笑いしながら西宮の口を手で塞ぎ、軽く頭を下げる。すみません、すみません。男とヤッた……問題はそこじゃない!!!



 いや、そこも問題だけど!!! 何もかもが問題すぎて、自分でも何が問題なのか、もはやよく分からない!!!



「その南ちゃんはお前のこと好きなの?!」

「えっ……う~~ん……明確には分からない……」

「はぁ????」

「北野は南ちゃんのこと好きなの?!(※海里の名字は北野)」

「えっ……う~~ん……明確には分からない……」

「同じこと二度言うなよ」



 自分の気持ちも相手の気持ちもよく分からないまま、曖昧な関係を続けてしまって良いのだろうか? この前もキスしてるし。自分たちは本当に『友達』??? 



 今はまだ、友達とか、南ちゃんが俺のこと好きとか、考えたくなくて、見て見ぬふりをする。



「でもさぁ~~自分が南ちゃんに気がないなら、あんまりキスとかしない方がいいんじゃね? 相手に悪いだろ。向こうはさ、お前のこと好きかもしれないのに」

「…………」



 西宮の言葉が正論過ぎて、何も言い返せず、ただ、黙って講義を聞いた。




 ーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーー

 ーーーー

 *



 ふふふ。義務教育をサボって、海里くんの大学に来ちゃったぁああ!!! 部外者だけど、私服で来たら意外とすんなり入れた。らっきー。



「海里くんに会えるかな?」



 連絡もせずにこっそり来てしまった訳で。『今、海里くんの大学にいまぁす』なんて言ったら、ただのストーカー?? まぁいっか。海里くんのこと好きだし。海里くんなら受け止めてくれるでしょ。(?)



「ん~~ちょっと陰から拝めるだけでも良いんだけどぉ、無理かな?」



 広い敷地内に、見たことがない多様な建物が沢山建っている。来た道を覚えていないと迷子になりそう。美しい庭園や広々とした芝生は大きな公園のように思えた。



 普段の海里くんの姿をみてみたい。



 そんな好奇心でここまで追いかけてきてしまったけど、やっぱり迷惑かな。大学内を彷徨っていると、なんだか聞き覚えのある声が聞こえ、咄嗟に木の陰に隠れた。



「西宮は今彼女いるの~~?」

「居ない居ない。居たら海里(お前)なんか置いて彼女と飯食うわ」



 海里くんだ!!!! 同年代? の男とつるんでいる。友達かな? まぁ、居るよね。大学生だし?? そりゃあ。じぃっと海里の様子を窺う。



「海里はいいよな、彼女が居るから」

「ばっ…そんなんじゃねぇよ!!!」



 え。海里くんに彼女?!?! 童貞の付き合った経験もナシの魔法使い修行中かなんかだと思ってのに!!! 嘘っ!!! 居るの?!?! 僕に振り向かない原因って、彼女が居るから?!



「北野くん、おはぁ~~」

「おはよー、次授業一緒だね」



 このタイミングで女来た!!! もしや彼女?!?! あんな髪の明るい金髪の女の子が好きなの?!?! 気安く海里くんの肩とか触んな!!!



 突然現れた女の子とニコニコしながら話す海里を見ていると、自分に向いている好意とは違う気がして、少し落ち込む。



 そうだよね。やっぱり、女の子がいいのかな。



 自分は海里と付き合っている訳でもないのに、海里にベタベタ触る女と、でれでれ話す海里にイライラして、気づいたら、木の陰から飛び出して、海里の目の前に居た。



「み、南ちゃん?!?!」

「随分、仲良くやって、楽しそうだね」

「へ?!」



 海里と女が顔を見合わせている。そうだよ、君たちだよ。一歩ずつ、海里の前に詰め寄り、顔を近づけると、海里が頬を赤く染めた。



「大学、いつ終わるの?」

「……次の講義が終わったら」

「待ってるからさぁ、デートしよ」

「…………」

「……返事は?」

「……うん」



 俯きながらも恥ずかしそうにしている海里が可愛くて、クスッと笑ってしまう。首筋に口付けして、海里から離れた。



「…………ッ!!!」

「ありがとぉ~~!! デート楽しみぃ!! 待ってるね~~!!!」

「あ……うん…終わったら連絡する……」



 笑顔で海里に手を振る。



 僕の杞憂? 心なしか海里が僕の笑顔を見て、愛しそうに微笑んでいるような気がしたーー。

 

 



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