表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/13

7通 ボヤボヤするよりハッキリ言った方が相手には伝わる件


「これ……ハンカチ……ありがとう」



 なんだか照れくさい。ポケットから借りたハンカチを取り出し、渡す。『ありがとう』だけじゃなくて、謝らなきゃ。



「えっと……その……ごめん!!!」



 南が手を離してくれないので、片手を繋いだまま、頭を下げる。謝っているというより、お願いしますとでも言っているような格好である。



「べつにいいよ、もう。ていうかさぁ、ハンカチ借りたなら洗って返すとかしない? 普通」

「えっ……確かに……」

「次遊ぶときにハンカチ返してよ」

「う、うん」



 さりげなく、次も会う約束をしたような気がするのは気のせいだろうか。繋がれた手を離そうと、振ってみる。離してくれない。



 南の顔を見ると、つん、と横に逸らされた。どうやら離して欲しくないらしい。もう、仕方ないなぁ。



 俺たちは友達。友達だよ。そう思いながら、南の手のひらに自分の手のひらを合わせ、指先を絡めた。



「海里くん……?」

「次、どこ行く?!」



 絡めた指先のせいで、南の顔がまともに見れない。恥ずかしくて顔が熱い。南を引っ張るように歩き出す。



「ちょっ……?! 海里くん?!」

「何?!」



 南に呼ばれ振り返る。手が繋がれた先に居る南を見た。頬が薄紅色に染まり、目が泳いでいる。なんで赤くなって……。



「南ちゃん……?」

「あ、いや、べつに……えと……海里くんの家に行きたい」

「ぇえ~~……いいけど……」



 南の『家に行きたい』という言葉に鼓動が早くなる。友達だし、前回みたいなことは起こさない。



 そう思うのに、繋がれた手から感じる、この感情の昂りはなんだろう。



 俺にはまだ、分からない。



 ーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーー

 ーーーー

 


 ーー海里の家




「はい、お茶」

「ありがとう~~」



 お茶の入ったコップを南へ渡し、隣に腰を下ろす。段々、お互いの距離が近くなっている気がする。



「僕ね」

「え?」



 南が体育座りをして、俯き、話し始めた。南から醸し出される空気が重い。



「親が再婚なんだよねー」

「はい?」



 唐突に始まる南自身の話に少し戸惑う。



「べつに良いんだけどー。人の人生に口出しするつもりないしぃ。ただ、再婚相手が僕のこと受け入れてくれなくて」

「まぁ、あるよね……」



 なんて返していいか分からない。ただ、俯く南を、じぃっと見つめる。



「受け入れられない理由は、僕が男性を好きだから」

「へ?」



 突然のカミングアウト。え? 男性が好き? えっ? 待って。てことは、もしかして、もしかすると、俺のこと本気で好きだったりする?!?!



 そもそも!!! 一度、身体の関係を持っている!!! その時点で気づくべきだった?!?! でも気付いたから何?! 



 別にそんなの、誰を好きになろうが個人の自由!!! な、はず!!! いや問題はそこじゃない!!! 南ちゃんは俺のことが好きなのか? ってこと!!!



 好きだったらそれは友達としてーー。



「海里くん?」

「あ、ごめん。びっくりし過ぎて意識飛んでた」

「だから、家が気まずいんだよねー」

「そ、そうなんだ……」



 何これ?! 何か罠に嵌められてる?!?! 軽くパニックなんだけど!!!



 気持ちを落ち着かせるように、コップに入ったお茶を一気に飲み干した。



 ごくごく。はぁっ!!!



「良い飲みっぷりだねぇ」

「え?! あ、うん?!」

「ねぇ、キスしない?」

「はい?!?! そういうのは好きな人と……」

「うん?」

「うん?!?!」



 どういうことぉおおぉおおおぉ?!?!?!



 自分の理解が追いつく前に、南の手が俺の顎に添えられた。



 *



 めっちゃパニクってんな。



 全然気づいてくれないから、敢えて、話してみたのだけど、結構効果アリだったかなぁ?



 海里を更に追い込むために、海里の顎を軽く持ち上げる。



「待って待って待って!!! キスとか俺達、そういうアレはちょっーーんっ」



 うるさ。どうせキスしたくないとか言うだけでしょ。動く口唇に強引に唇を重ねた。



「ーーはぁっ…ちょっと!!! 俺の気持ちとかそういうのはっ……」

「ほっぺ真っ赤にしてる人に気持ち考えろとか言われても『もっとしてぇ』って言ってるようにしか僕にはみえませ~~ん」

「なっっ!!!」



 頬を赤く染め、挙動不審になる海里が可愛くて、笑みが溢れる。今日はこの辺で勘弁するかぁ。立ち上がり、カバンを肩に掛けた。



「じゃあ、僕帰るね」

「帰るの?!?!」

「え? 何? もっとシて欲しかった?」

「違っ!!!」

「また今度ね、海里くん」



 ちゅ。



 海里の額に口付けする。耳まで赤くなる海里に思わず、ぷっと笑ってしまう。ニヤける口元を手で押さえながら、海里の家を後にした。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ