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南ちゃんはいつも嘘つき!  作者: 霜月


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5/17

5通 友達なのに、恋人がやるようなことはしない方がいい件



 ーー週末 映画デート当日



 ついにこの日が来てしまった!!! これはデートか?!?! いや違うな!!! 何故なら俺たちは友達!!! そう、友達!!! 遊びに行くだけ!!!



 ショルダーバッグを背中に掛け、待ち合わせの駅へ向かう。なんの映画観るのかな? その辺、何も聞いていない。



 駅に着くと、南がスマホを眺めて既に待っていた。



「あれ? 待った?」

「遅い!!! 僕、1時間前から待ってたのに!!!」

「早くね?!?! なんで?!?!」

「……それは……楽しみだったから……」



 目線を下げ、頬を赤く染める南に少しドキッとする。もっと早く家を出れば良かった。自然に手が伸び、南の頭を撫でた。



「ごめん。ありがとう」

「もぉ~~早く行こうっ!!」

「え? あっちょっ」



 南に指先を掴まれ、引っ張られるまま歩き出す。掴まれた指先はまるで手を繋いでいるみたいで、鼓動が早くなる。



 俺、女の子とすら、手なんて繋いだことないのに。



 しばらく歩くと、映画館に着いた。繋がれた指先は離してもらえない。このまま入るつもり? 恋人じゃないよ?



「南ちゃん……手……」

「あーー……そうだね、ごめんね! いこ」



 一瞬、南が残念そうな顔をしたのは気のせい?



 あんなことしておいてだけど……南は俺のこと、本当に好きなの? 分からないなぁ。俺のこと好きだからって、どうかなるわけじゃないけど。



 受付カウンターは丁度、映画の時間帯だったのか、行列になっていた。南と最後尾に並ぶ。



「実はもう観る映画は決まってまぁす!!」

「え? 何を観るの?」

「『5DAYSセツコはお前と付き合いたい』」

「…………(つまらなさそう)」



 南からチケットを受け取る。この映画のチケット既に『5DAYSセツコはお前と付き合いたい』じゃん!!! セツコ以外選択肢なし!!!!



「なんでセツコ……」

「面白そうじゃない?」

「う、うん……(よく分からない)」



 受付で席を取り、シアター内へ向かう。重い扉を開け、中に入る。シアター内はちらほらと人が居た。薄暗い場内を歩き、指定した席に着いた。



 ーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーー

 ーーーー

 *




『あぁ、やっと会えた。セツコ、お前に会うのをどれだけ待ち侘びたことか』

『いやですわ!! 私はカゲトをもう愛してない!!』

『俺は今も昔も変わらずお前を愛している!!!』

『セツコはカゲトの中に眠る真理の扉の向こうに住むお前と付き合いたい』



(自分で選んでおいてアレだけど、全く意味不明。なにこれ? 全っ然面白くない!!!)



 隣に座り映画を観る海里を見た。口元を押さえ、涙ぐんでいる。いや、泣ける要素ないと思いますけど。どこに感動してるの?



『お前もカゲトも同じなのですわね!!!』

『セツコ結婚しよう!!!』



「かげとぉおぉおぉ……うっうっ……」

「…………(ばかなの?)」



 ウエストバックから、ハンカチを取り出し、海里の前に差し出す。



「南ちゃあん……うっうっ…ぐすっ……ありがと……」

「もぉいいからはやく泣き止んで。恥ずかしいから」



 エンドロール中も泣き続ける海里に少し呆れる。



「良い話だった!!! めっちゃハッピーエンド!!!」

「……そうだね」



 映画が終わり、目を腫らした海里と一緒にシアターを出た。まぁ、よく分かんないけど、海里くんが喜んで(?)くれたならいっか。



「お昼少し過ぎたけど、ランチいくー?」

「行こうかなぁ? どこ行く? 南ちゃん?」

「ハンバーガー食べる!!!」



 再び、海里の手を掴み、歩く。海里をチラッと見ると、戸惑いながらも手を離さずに着いてくる。



 僕と手繋ぐの、嫌じゃないのかな?



 さりげなく指先を指の間に差し込むと、手が振り払われた。



「なななななに?!?!」

「いや……べつに……」




 この振り払いは僕がいきなり恋人繋ぎなんかしようとしたから、海里が驚いて離したもの。わかっている。




 だって僕たちは友達。恋人ではないから、恋人繋ぎはしない。




 でも、僕は海里くんとは友達じゃなくて、そういう関係になりたい。




 手を振り払われたことが悲しくて、目を伏せる。




「南ちゃん? どうしたの?」

「ごめんごめん!! なんでもないよぉ!! 早くハンバーガー食べに行こ!!!」

「もーお腹空いたよー」




 なんでもなくはない。傷ついている。




 それを感じさせないように、歯を見せ、明るく海里に向かって笑って見せる。




 僕は自分の心に嘘をついた。

 



 


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