4通 自分が既読無視するのはいいが、されるのはイラつく件
強制的に家を追い出されてから、今日まで何も連絡がない。既に丸2日経っている。イラ。僕からメッセージを送っても、全て既読無視。
一応、見てはいるらしい。
童貞にはちょっと刺激が強すぎたということか。(※南は童貞ではありません)でもあれくらいやらないと、僕のこと絶対忘れるでしょ。
自室のベッドに寝転がり、スマホのメール画面をずっと眺める。何も変わらない。
「あーーっっ!! イライラする!!!」
スマホをベッドへ投げつけ、寝返りを打つ。はぁ。もう、なんなの。毎日メッセージくれてたくせに!!! この対応!!!
ぽんっ。
メールの着信音が鳴り、身体を勢いよく起こし、投げつけたスマホを手に取った。着信、海里。メッセージ来た!!!!
急いでメッセージを開く。
【会いたい】既読。
ぉお!!! 求愛!!!!(?)
【僕も会いたい。今から会いに行ってもいい?】送信。
【今?】既読。
【じゃ、今からいきまぁす♡】送信。
あとはシカトしよ。時刻は16時。うちはあまり良い家庭環境じゃない。僕の帰りが遅くたって、なんの問題もない。
ウエストバッグを背中に装着し、家を出た。
*
会いたいと送ったものの、会ってどうするんだ?
「付き合うとか……?」
ないな。相手は男だよ……。南ちゃんのことばかり考える自分はいるけど、果たしてそれが恋なのかは分からない。
体の関係を持ってしまったから、気になるだけかもしれないし。それに、初めて会って、ヤッて、それで付き合うとかないわぁ……。
「まずはアレだな!!! 友達から!!!」
友達になって、一緒に遊ぶようになってから、色々考えよう!!! とりあえずこれは過ちだ!!! 全てをリセットして、良好な関係を築く!!!
ピンポーン。
玄関扉の覗き穴から相手を確認する。南ちゃんだ。来るの早。ドアノブに手をかけ、ドアを押した。
「ど、どうも……」
「海里く~~ん!!! メッセありがとぉ!!! 家入っていい??」
「いや、外歩こう(家は危険だ!!!)」
「いいけど~~……」
行く宛てもなく、ただブラブラと南と一緒に歩く。横目でチラリと南を見ると、目が合った。気まず……。
でもちゃんと関係性をはっきりさせないと!!! 今後のために!!!(?)
「……俺たち、友達だよね?」
「は?」
眉を中央に寄せ、嫌な顔をしている。負けるな俺!!!
「友達でしょ~~?」
「ソウデスネ」
認めた!!! おけ!!! 俺たちは友達だ!!!(?)
「ねぇ、外寒いんだけど」
「え? まぁ、最近夜冷えるようになってきたもんね」
「家入ろうよ」
「…………」
何この流れ。まぁ、でも? 仕方ないか? 寒いと言われれば少し肌寒い。家に入るのは致し方ない……。
友達だから。そう、友達だから。別に何もしない!!! 訝しげに南を見ながらも、来た道を戻り、家の中へ入った。
「はぁ~~寒かった。てかさぁ、既読無視ひどくない?」
「え……あ……ごめん」
部屋へあがり、床に腰を下ろすと、南が当たり前のように俺の隣に座った。この距離感に少しだけ、警戒する。
「僕さぁ、毎日ずっとメッセージ待ってたんだけどー」
「そ……そうなんだ……」
「どうお詫びしてくれるの?」
お詫び?!?! なんで俺が南ちゃんにお詫びするの?!?! 既読無視してごめんなさいでオーケー?!?! 合ってる?!?! でもこのお詫びって何かさせられる系なのでは?!?!
じぃ。南が俺を見つめてくる。とりあえず謝罪だっ!!!
「えっと……既読無視して申し訳ありませんでした」
「はぁ? そんな言葉で僕が許すと思ってるの?」
なんですと!!! そんなにひどいことしましたっけ?!?! てか、友達ですよね?!?! 何をお望みですか?!?!
「えっとぉ……」
「怖がらないでよ~~っキスしてくれたら許してあげるから」
キス? え? キス? キスするの? ぇえええぇえ!!!! いやでも、既読無視し続けたのは俺!!! 悪いのは俺?!?! 罪は償うべき?!?!
「早くしてー」
「くっ……」
漢なら潔くここはキスしよう!!!
「分かった!!! キスする!!!」
「そう来なくっちゃぁ~~」
目の前で南が目を瞑った。長くて綺麗なまつ毛に高い鼻。整った顔立ち。ドキ。顔を近づけると少しだけ心臓が速くなった。
首を傾け、唇を重ねる。
「ん……」
ぐいっと後ろから手で頭が押され、強く唇が触れ合った。突然の押し付けられるような口付けに頬が染まる。
「~~っはぁっ」
「はい、これで全部許す~~」
「ありがとうございます……??」
南がポケットからチケットを2枚取り出し、俺に見せてきた。
「じゃあ~~んっ!! 映画の無料券です!! 今週の土曜日、一緒に行かない?!」
さっきとは打って変わって、子供みたいに無邪気な笑顔を見せる南をみて、口元が緩む。
「一緒に行こうかなぁ~~?」
「やったぁ!! ありがとう~~っ!!」
首回りにぎゅっと抱きつく南が可愛くて、そっと南の頭を撫でた。




