14通 #ラブホほどシてくださいと囁いてくる部屋はない件
ーーラブホの一室
「ねぇ、海里くん」
「……なに」
「今日は、ひとりでほぐしてきたもんね?」
「してないッッ!!! ま、間に合ってます!!」
「間に合ってないくせにー」
ほんのりピンクがかかった照明に、ふかふかのベッド。壁には大きな鏡まである。部屋全体が、まるで『えっちなことしてください』って囁いてくるようで、頭がくらくらする。
緊張と羞恥が一気に押し寄せてきて、俺はベッドの端までじりじりと後ずさった。けれど、南ちゃんは余裕の笑みで、にじり寄るように近づいてきた。
「ほぐしてきたくせに、逃げるとかないでしょ?」
「そ、それは……!! 南ちゃんが前に、そう言ったからで!! ……えっ? ええっ?! まさか!! ごむのことだったの?!」
「え、今さら気づいたの? ほんと海里くんって可愛いね」
手首が掴まれると、あっという間に押し倒され、ごろんとベッドに背中が沈む。南ちゃんが、俺の脚のあいだに入り込んできた。
「今日は、ちょっとだけ意地悪してもいい?」
「ちょ、えっ、やめっ、やさしく……っ、あっ、やっ……!!」
ずらされた下着の隙間から、南の指が尻の割れ目をなぞる。自分で使ったローションのぬめりと、いやらしい蜜のせいで、その指はスッと窄みの中に入ってきた。
「っっんああぁッッッ!!」
「ふふ、声出すぎ。ほんと、可愛い」
もう、ゆるい。自覚したくないけど、ほぐれすぎている。それなのに、感じすぎて、指が奥の一点に当たるたびに、腰がびくびく跳ねる。
「指……やば……っ、んっ、んあっ……ちょっ……なんでそんな……ッ、あっ……だめっ!!」
「自分で気持ちよくしすぎちゃったんだね。お尻が『もっとして』って言ってるよ?」
「言ってないぃいぃい!! やっ、はぁっ、そこぉ……あぁあっ……」
南の指が、自分で触ってた『そこ』とぴったり重なり、何度も何度も擦られて、身体が蕩けていく。
「準備、頑張ってくれたのがすごく分かる」
「だ、だからぁ、もっ、もう言わないでぇ……恥ずかし……んんっ…あぁっ……」
「もぉ、とろとろだねぇ、海里くん」
震える身体を、南ちゃんが優しく抱きしめた。重なる唇も、突かれる指先も、熱くて、甘くて、やさしくて。あまりの気持ち良さに、胸の奥まで溶けてしまいそうだった。
「南ちゃん……俺……やっぱ……南ちゃんが好き……」
「僕もだよ。だから、今日はちゃんと……奥まで、ね」
「奥?」
「そ、奥~~」
南ちゃんの手が、俺の脚を両側にそっと開く。南ちゃんが、何かに向かって手を伸ばすと、パッケージを破る乾いた音が、静かな部屋に響いた。
いよいよなんだ。そう思っただけで、胸がどくんと高鳴った。
「……いくよ、海里くん」
その声が優しすぎて、甘すぎて、思わず南の背中に腕を回す。ゆっくりと入ってくる熱に、身体がびくりと震えた。
「んあっっ、あっ……っう……んぁっ…はあっあっ……」
奥まで満たされる感覚に、涙が滲む。今までとは違う。流されてシているわけじゃない。今は、心から南ちゃんを受け入れたくて、こうしている。
恐怖とか、シたくないとか、そういうのは一切、なかった。
「動くよ」
「……うん」
ゆっくり、ゆっくり、身体の中に沈み込む。確かに繋がっていくたびに、熱がじんわりと広がる。最初は異物感しかなかったのに、不思議と、南ちゃんの声や手がそれを溶かしてくれた。
「はぁ……っ、南ちゃん……っ、なんか……へんになりそう……っ」
「大丈夫、気持ちいいってこと、ちゃんと教えて? もっと、気持ちよくしてあげるから」
唇を柔らかく吸われて、指先を絡めて、奥を突かれるたびに身体が跳ねる。恥ずかしい。でも、気持ちよくて、全てがどうでもよくなっていく。
「あっ……あっ……や、やば……っ、んっ……っ……!」
「可愛いね、海里くん。いっぱい頑張ったね。偉いね」
「やだぁ……っ、そんなこと言わないでっ……恥ずかしい……っ……」
頬は熱く染まり、涙がぽろぽろと零れる。気持ちよさだけじゃない。南ちゃんの優しさと、愛しさと、すべてが胸に押し寄せて、泣きたくなってしまう。
「俺……っ、好き……好きだから……だいすき……」
「うん、僕も。海里くん、大好きだよ」
その言葉と体温に包まれて、心も身体も満たされると、快感の波が一気に押し寄せた。
「っっあ……っ、いく……っ、ああっ……!!!」
全身が痙攣するように達して、息を切らす俺を、南ちゃんはしっかりと抱きしめた。
南ちゃんは身体をびくりと震わせた後、ふっと笑って、俺の前髪を掻き上げ、額にキスを落とした。




