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11通 願望とは真逆のことが起こる件



 海里と手を繋いだまま、彼の家への道を歩く。気づけば、日が沈み、空は薄暗くなっていた。月明かりが静かに差し込む中、互いの足音だけが響く夜道は、なんだか特別に感じた。



「ねぇ、海里くん」

「な、なに? 南ちゃん」



 少し緊張した声で、僕の名前を海里が呼ぶ。彼がこんなに不器用で照れ屋だなんて知らなかったけど、それが今は愛おしい。



「なんで……僕のこと追いかけてきてくれたの?」

「えっ?」



 別に、この質問に深い意味はない。僕のことが好きだから、それ以外に理由はないかもしれない。



 それでも僕は、あの時、全速力で追いかけてきたのには、何か理由があるのでは? と、思えた。



 海里が何かを考えるように、ぴたりと足を止めた。空気が凛と張り詰める。繋がれた手に、少しだけ力が加わった。



「……あの時、南ちゃんが泣きそうな顔をして走り去るのを見て、どうしても放っておけなかったというか……離しちゃいけないって思った」



 声は真剣で、言葉のひとつひとつが胸に沁み込んだ。海里が少し俯きながら、それでも真っ直ぐな目で僕を見つめる。



「俺ってバカだよな……こんなに好きなのに、素直になれなくて。ずっと背けてきた。これからは素直にならなきゃね」

「海里くん……」



 その言葉に、胸がぎゅっと締め付けられた。伝わる彼の想いに、何も言わずとも十分だったけど、それでも声に出して伝えたくて、自然と唇が動いた。



「僕も、海里くんのことが好き」

「知ってる」



 僕の想いを訊いて、海里の顔が綻んだ。もう隠す必要はない。この気持ちも、この関係も。それが嬉しくて、笑みが溢れた。海里の家に着くと、海里が心配そうに僕を見つめた。



「日が暮れたけど、家帰らなくて大丈夫? 家族とか……」

「メール入れておくからだいじょーぶ」

「なら、いいけど」



 海里に案内されるまま、部屋の中へ上がった。



 *



 ゲームが一緒にしたくて家に呼んだなんて、嘘も大概にしろよ、俺!!! もうちょっと、南ちゃんといちゃいちゃしたかったという、クソみたいな下心で、家まで連れてきてしまった!!!



 連れてきたはいいが、どうしよう!!!



 ちらりと隣に座る南を見る。スマホをいじりながら、俺が用意したお茶を飲んでいる。くっ…横顔も可愛い!! おかしいな……気持ちを認めてから、南ちゃんが美少年に見える!!!



 こんなにも可愛くて、綺麗だっただろうか!!!



「なに?」

「えっ?! あっ、いや、べつに!!!」



 南の大きな猫みたいな瞳が俺を見る。可愛い!!! 目が合うのも恥ずかしくて、顔を逸らした。



「ゲームしないの?」

「えっ?! あっ! ゲームね!! ゲーム!!!」

「…………」



 そうだ!!! ゲームをする体で誘ったんだ!!! 机の下で充電してあったノートパソコンを、机の上に置く。南が机に片肘を突き、黙って俺を見つめた。



「…………」

「…………」



 何?!?! 気まずっ!!! そんな俺のえっちな(?)思惑を見抜いているのか、南が俺の腿の上に手を乗せた。腿の上を這う手のひらが、いやらしくて、頬が染まる。



「僕とゲームがしたいの? それとも別のナニかがシたいの?」

「えっ…やっ…そっ……それは……」

「ん~~? 言ってくれないと僕分かんないなぁ?」



 ずいっと南の顔が俺に近づき、鼻先が触れ合った。その距離の近さが恥ずかしくて、顔が真っ赤に染まる。



「えと……その……ぇっち……がしたい訳じゃなくて(したいけど)……まずは南ちゃんに触れてみたい? というか……」

「ふーん? 好きなところ、触っていいよ?」



 突然、目の前で南が服を脱ぎ始め、慌てて後ろを向く。ななななななんで脱ぐの?!?! 俺が触りたいって言ったから?! でも、気になってしまい、少しだけ振り向く。



「海里くんのえっちぃ~~」

「いや、これは違っっ」



 ?!?! 上半身、服、着てないし!!! どういう状況?!?! あわあわと、慌てふためく俺に、南が嘲笑うように近づいて、俺の手を握った。そして、俺の手が南の胸元に当てがわれた。



「触っていいよ?」



 白い素肌に咲く、桃色の胸の尖りが嫌でも目に入ってくる。な、なんてえっちな……!! 触ってみたい気もする。でも、なんか違う!!!



「え~~っと……ん~~……」

「あぁ、こっちの方が良かった?」

「!!!!!」



 掴まれていた手が南の幹の上に触れ、心臓が跳ねた。南ちゃんの!!! 頭の中に浮かぶのは、自分が触る姿よりも、責められる姿。



 俺は南ちゃんに触られたい?!?!



 自分の願望に気づくと、急に恥ずかしくなり、頬が赤く染まる。触りたいと言っておきながら、触って欲しいなんて!!!



 目を覚まし始めた、自分の性的欲求に抗うことが出来ず、俺の手を掴む南の手を掴み、自身に当てた。



「南ちゃん……触って?」



 自分の言っていることが恥ずかしくて、羞恥で、顔が熱くなった。

 


 

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