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光の騎士は闇魔法使いの少年を拾う  作者: 微糖
第一章 光と闇の出会い
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第5話 『港町アクアラーグ』その1


 ライトとレイの2人は馬車に揺られ、王都から南に伸びる街道を進んでいた。普通こういう旅には護衛をつけるものだが、この馬車には御者が2人いるだけだ。ここに『閃光の騎士』ライハルトがいる以上、彼より弱い護衛など不要だった。


「あー。いい風だな」


 今日は晴天だ。季節は夏一歩手前というところで、過ごしやすい気温になっている。馬車の窓を開けて風を浴びるライトだが、今の彼の姿はいつもと違っている。まず、いつもは金色に輝いていた髪の色が白い。彼の両耳には白い真珠のピアスが付けられていて、これが髪染めの魔道具となっている。そして目にはメガネをかけている。これも水魔法による認識阻害の魔法がかけられた魔道具であり、外側から彼を見ると少し印象が違って見える。今の彼からは少し目尻が上がったキツそうな印象を受ける。服装は白いTシャツに紺のズボンというシンプルな姿だ。


「そうですね。気持ちいい天気で」


 レイはいつも通り、髪染めの魔道具で髪を後ろで一つ縛りにしている。服は昨日サイズの合うものを買い、黒いズボンに黒いTシャツ。上にはグレーのカーディガンを羽織っている。同じ髪色の2人は、一見すると兄弟に見えるだろう。兄と妹にも見えるかもしれない。


「しかし、見慣れないですね。ライトさんの姿」


「そうか?」


「ええ。全然違う人に見えます」


「そりゃ変装してるわけだから、そう見えなきゃ困る。俺の顔は知られているからな。騎士団本部のせいで」


「グッズとか結構大々的に売り出してますもんね」


 王都において、騎士の存在は市民のヒーロー的な扱いになっている。騎士団本部はその人気にあやかってさまざまな催し物をしたり、グッズの販売などに精を出していた。その中でも『閃光の騎士』ライハルトは圧倒的な人気を誇り、彼の似顔絵を描いたグッズなども大量に出回っていることもあり彼の顔はかなり広い範囲で知られている。


「まあそもそも、金色の髪の持ち主なんてこの世界で俺くらいなもんだからな。これを隠さなきゃどこにも行けやしないんだよ。お前もそうだろ? レイ」


 金色の髪。光属性の証だ。100年に1度しか生まれないとされる希少な属性の持ち主がライハルトである。


「僕と同じ悩みを抱えている人がこんなに近くにいるとは思いませんでしたよ」


 レイの本当の髪色は、黒。光属性と同じく100年に1度しか生まれないとされる闇属性の証だ。ただし、光属性とは違い闇属性はこの世界の人間からは忌み嫌われている。


「あ、そういえば。髪染めの魔道具だけど、魔法を使うと本当の髪色に戻るから気をつけろよ? 人前で迂闊に魔法を使わないように」


「あ、そうだったんですね。……でも、僕は魔法が使えないのでそんな心配もいらないかと」


「ん? 昨日使ってたろ」


 過労で動けないライトに対して、レイは癒しの魔法を使っていた。そのおかげでライトは元気になったのだが。


「あー、実はあの後も魔法使ってみたんですけど、発動しなかったんですよね。それで、後でライトさんに教わろうと思ってて」


「そうなのか。じゃあちょうどいい機会だな。今教えてやるよ」


「え、ここでですか?」


「ああ。手を出してみろ」


 ライトはレイが差し出した手を握る。するとライトの体から光が滲み出し、髪色が金色に変わっていく。光の魔力は手をつたってレイの魔力をかきまわす。


「う、あああ。なんか動いてる」


「わかるか? それが魔力だ」


「こ、これが」


 体の中をぐるぐると何かが回る感覚。少し気持ち悪いが、滞っていたものが流れ出したような心地よさもある。ライトがレイから手を離すと、髪色が金から白に変わる。


「魔力を感じるのにこれが1番手っ取り早い。あとはその感覚を忘れずに、魔力を動かす訓練をすることだな。これを魔力の活性化という。魔法を使ううえでの基本になる」


「そ、そうなんですね。難しいな」


 レイがさっきの感覚を元に体内の魔力を動かそうとするが、あまり動かない。少しは動くのだが、ほんの少しだ。


「少しでも動かす感覚を覚えたなら、あとは練習あるのみだ」


「わかりました……。でも、昨日はなんで魔法使えたんでしょう?」


「魔法の発動に必要なのは二つある。『鮮明なイメージ』と『強い意志』だ。まあもちろんこれは魔力を動かす基本ができていての話なんだが。俺が思うに、あの時レイは必死で俺を助けようとしてくれただろ? その強い意志が魔法を発動させたのかもしれないな。それが、わずかに活性化していた魔力と反応したってことじゃないか?」


「なる、ほど。つまり、あのくらち必死になれば今の僕にも魔法が使えるってことですか?」


「そう言うことになるが、活性化の練習をした方が早いと思うぞ。というか練習しろ。わずかな魔力であの回復力だったら、鍛えたらとんでもないことになるんじゃないか?」


「そう、ですね。ライトさんがまたああならないためにも僕も魔法の訓練をしようと思います」


「それはちょっと皮肉入ってないか?」


「いいえ?」


 すっとぼけた顔でレイが肩をすくめる。


「まあいいけどさ……」


「ちなみになんですが、僕がケガした場合、治癒の魔法が自動で発動するんですが」


「ああ。そうだったな」


 騎士たちから暴行を受けているのをライトが救い出したあと、レイが見せた能力。


「あれが発動した場合、僕の髪色は黒に戻るんでしょうか」


「あ。確かに」


「一度試してみた方がいいですよね……」


 レイはそういうと、腰のベルトに刺さった短剣を取り出す。護身用に買ってもらったものだ。それで軽く指を切る。すると、黒い魔力がレイの体から吹き上がり、髪色が黒く染まる。傷口がみるみるうちに塞がると、レイの髪色は白に戻った。


「あー。そうなるのか。なんていうか、髪色以前の問題だな。吹き上がる魔力の色が黒だもん」


「これ、制御できませんかね……」


「とりあえず、訓練するしかないな。旅行の間はケガしないように注意していこう。指を切ったくらいで発動するんじゃ、相当気をつけないとな」


「はい……。この魔法にはかなり苦しめられてきましたから。制御できるようになるまでは、気をつけます」


「ああ。まあ、今は旅行だ。楽しもうぜ」


 ライトは窓から身を乗り出す。白髪が風になびいて気持ちよさそうだ。レイも真似して身を乗り出す。


「アクアラーグ。楽しみですね」


「俺が案内してやるよ」


「ライトさんが子どものころとはずいぶん変わってるかもしれませんよ?」


「まあ、そうだな。どんなふうになってるか俺も楽しみだ」


 2人は馬車に揺られながら、のんびりと旅を楽しむ。港町アクアラーグについたのは、王都を出発してから2日目の昼頃だった。

 

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