ターニングポイント「2020/03/03」補稿
小説閲覧数とサイトの総PVは違うものであると一応書いておこう。
なろうの場合だと"ncode.syosetu.com"と"novel18.syosetu.com"の部分となるか。
まずは小説家になろうにおける、「小説閲覧数」の推移から。
このうち2019及び2020年度の数値に関しては、「なろう毎日記録」さんで取得していたものであり、2022年度の数値が今回個人的に取得したものにあたる。
なんとなく2022年度分が落ち込んでいることは読み取れるものの、これだと把握しづらい面もあるので、月間小説閲覧数という形にまとめておこう。
11月値では、
2019年度 2,005,978,942
2020年度 2,289,989,652
2021年度 データなし
2022年度 1,860,260,019
12月値では、
2019年度 2,035,578,575
2020年度 2,234,936,925
2021年度 データなし
2022年度 1,789,811,583
2022年度の数値は2020年度と比較して4億PV超の下落。
これをコロナ禍という特殊環境による一時的増加だったと見做したとしても、2019年度水準から見てなお2億PV近い減少となっているようだ。
ついでに商業的影響に関しても検討しておこう。
2021年後半あたりからアニメ本数の増加に反して、PV増加が控えめになりつつある傾向は見られる。
ただ少なくとも2022年秋アニメ期間に限れば過去2番目と言う数値をとっており、相応のPV増加はあったものと推測される。
小説家になろうのPV減少は、こうした影響によってもたらされたものではないだろう。
基本的にここ数年の小説家になろうランキングの変化というものは、異世界恋愛とハイファンタジー、その2ジャンル間のみが激変するという形で進行した。
現実世界恋愛やローファンタジー、それ以外のジャンルに関する数値は概ね安定しており、この激変の最中でも大きな影響は見られない。
シンプルな「なろう衰退論」として言い難いのはこうした面であり、おそらく「ジャンル別ランキング」という空間に関しては、安定的な読者集団を有しているものと思われる。
ハイファンタジーの激減というのも、あくまでジャンル別ランキングのみにおける適正規模へと縮小していく過程にあるととらえるべきか。
となると残った空間、小説家になろうのPV減少において最も影響力が大きいのは、「総合ランキング」なのだろう。
2016年05月のジャンル再編過程で脇に追いやられこそしたが、その後も依然小説家になろうにおける、最大級の読者導線として機能し続けていたものと思われる。
要は「ランキングで上位に来ていたからブックマーク入れて読みに行くよ」という形態をとる読者集団、その活動に深刻なエラーが生じた、というのが現在起こっていることではないか。
2020年03月03日、小説家になろうでは評価フォームの機能改修を実施。
評価機能はブックマークに対して5倍のポイント量を有する特性そのままに、無制限開放された上で「応援ポイント」へと変化した。
従来的な長編読者集団はブックマークを主体とする活動を続けたことにより、ポイント上の価値を消失。
一方で短編や早期完結作品は応援ポイントを主体として、ランキング上位に行くための瞬間的なポイント量を確保。
人口規模的には少数派に位置しつつも、現行のシステム上最も有利な手段をとれたことで、総合ランキングの表紙部分をほぼ制圧するに至った。
ただまぁランキングの主要部分が短編や早期完結作品となり、長編に対する読者導線が消えたとなれば、当然総PVは減少を来たす。
従来的なユーザは長編・ハイファンタジーに対する消極的支持層という性質があったと思われるが、ジャンルが激変する中ではこうした層の流出も進行するのだろう。