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人間至上主義世界

 簡素な作りの家の軒下(のきした)で、子供が地べたに座り、家主とおしゃべりをしています。

 しばらくすると、家主が話題を変えて言いました。


「大変な病気が流行っているんだってね」

「うん。最近、大人たちがよく話しているよ」


子供が答えます。


「どんな病気なのか知ってるかい?」


 家主が(たず)ねると、子供はうんとね、と間を置いて答えます。


「よくわからないけど、病気になったら人にうつさないように、病院に閉じ込められちゃうんだって」

「うつりやすい病気なのかな?」

「そうみたいだね。病院がいっぱいになっちゃって、他の病気になっちゃった人たちが困っているんだって」


 家主の疑問に子供が答えました。


「ふーん。だったらなんで、そんな効率の悪いことをしているんだろう?」


 そう言って、家主は小首をかしげました。

 何かいい方法があるの? と子供が()くと、


「そんな人たちは邪魔だから、殺して埋めちゃえばいいんだよ。迷惑だから、いないほうがいいよね」


 家主は自然な口調で答えました。

 子供は非難するとも諭すわけでもなく、ただ言葉を返します。


「そんなことしちゃだめだと思うよ」

「そうなの?」


 家主はふしぎそうな顔をしています。


「命は大事にしないとだめなんだって。命は一つしかないから大切なんだって大人たちはみんな言ってるよ」


 子供は大人たちの言葉を代弁するように、淡々と言いました。


「そうなんだ」


 家主はぽつりとつぶやきました。


「もう行かなくちゃ」


 子供は立ち上がると、お尻の土をポンポンと手で払いました。


「またね」


 家主が言いました。


「うん、またね」


 子供が手を振って答えます。

 子供は少し歩いて振り向くと、大きな声で元気よく言いました。


「明日も卵をよろしくね!」

「うん、まかせてよ!」


 家主はトサカをなびかせながら、得意げに答えました。


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