第1話「回転する亀頭」
気軽に読んでいただけたら幸いです。
【第1話 回転する亀頭】
吾輩はちんこである。名前はまだ無い。
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。
何でも薄暗いじめじめした所で……。
おそらく何を言っているのか理解できず困惑している人がほとんどだろう。
どうか安心して欲しい。俺もそのうちの1人だ。
そう、俺は今ちんこらしい。
哲学的な何かを言っているわけでは無く、文字通り「ちんこ」そのものなのだ。
全くもって非常識だ。
どうかこの状況が夢であればと思いさきほど現実逃避を試み、「おふざけ」に走った次第である。
しかし何度否定し続けようともこの現実は俺に襲いかかって来る。
否が応でも叩きつけてくる。これはちんこだ。夢じゃない。
事の始まりは確か……お決まりの大型トラックに撥ねられて……いや待て軽トラックだった様な気が…プリウス……いや違うロードバイク……そう自転車!
俺は青信号を渡る途中、80代くらいの婆さんが猛スピードで運転するカゴ付き自転車に撥ねられ死んでしまったのだ!
今思えば車道のど真ん中を走っていやがった。前傾姿勢で。一体なにを考えていたんだあのババア。
目が覚めればちんこである。
悲劇と言わずしてなんと言おう。
何故にちんこなのだ。代わってもらえるなら誰かに代わって欲しい。腹が立ってきた。
人は追い詰められると意外にも冷静でいられるみたいだなぁ。涙が出てきた。…ような気がする。
情緒も安定しない。
2度ほど深呼吸。
どうやら落ち着いてきたようなので自分なりに状況を飲み込むことにした。
....いや飲み込もうにも情報が少なすぎる。真っ暗だ。おそらくパンツの中だろう。
漠然と感覚的、本能的に自分がちんこである事は辛うじて理解できた。
それ以外に何もないのだ。これからどうする?
呼吸はできている。
食事は?水分は必要なのか?声は出せるのか?
いや、今この状況で声を出していいものか?
安全なのか?認知されてゆくゆくは取り除かれてそのまま死亡なんて事もあり得るんじゃないか?
ーー息を潜めて様子を見るべきだ。
おそらく自身の人生の中で1番頭(この場合は亀頭と言うべきか)が回転してるであろう瞬間が他人のパンツの中とは
(この場合は自身のパンツの中か)皮肉なことである。
あれこれ考えていると意識が遠くなってきた。
まずい。ものすごい睡魔だ。
「くっ…」
俺の意識は真っ暗な闇の中へ消えていった。
こんな感じで描いていきますので続きにご期待下さい。
どうかお手柔らかにお願いします。