コント「水族館ロマンス」
ツッコミ「いやぁ~水族館なんて久しぶりだな~」
ボケ 「なあ」
ツッコミ「んー、何?」
ボケ 「実は俺……駆け落ちしようと思ってるんだ」
ツッコミ「急にぶっこんできたな。てか、いつの間にそんな相手ができたんだよ」
ボケ 「一ヶ月前ここで出会った」
ツッコミ「出会って間もなく急展開だな、おい! しかも出会った場所ここ!? 今俺、お前とその子の思い出の舞台に立たされてるの!?」
ボケ 「まさに今お前が立ってる場所だ」
ツッコミ「うっそ、しかもピンポイントなの!?」
ボケ 「土足で踏みやがって!」
ツッコミ「いや、 裸足で水族館来る奴いないだろ! しっかし、そうか……。だから最近お前よく水族館に行ってたんだな」
ボケ 「あれから毎日通ってる」
ツッコミ「いや、それは通いすぎ。てか、毎日って……その子ここで働いてるのか?」
ボケ 「ああ、彼女はここに囚われている姫君なんだ」
ツッコミ「重っ! ったく、大げさな奴だな」
ボケ 「彼女は俺が救い出すんだ!」
ツッコミ「あーもう、はいはい。わかったから、ショーでも見に行こうぜ。ちょうど始まるみたいだ」
ボケ 「俺は彼女に会いにっ……(口を塞がれる)!」
ツッコミ「はーい、静かにー。行くぞー」
ボケ 「んん~~~~(モゴモゴ)」
ーー移動ーー
ツッコミ「お、いいとこ空いてるじゃん。ここにしようぜ」
ボケ 「俺は彼女に……」
ツッコミ「まだ言ってるのかよ。わかったわかった、終わったら付き合ってやるよ。お、ショーのアシスタント募集してるぞ。俺やってみ……」
ボケ 「(ガタッと立ち上がる)……彼女だ」
ツッコミ「は?」
ボケ 「(勢いよく手を上げて)はい! はい! やりたいです!」
ボケ、ステージに向かおうとする。
ツッコミ「おい、ちょっと! 待てって!」
ツッコミ、ボケを羽交い絞めにして止める。
ボケ 「離せ! 離してくれ! 俺は彼女を助け出すんだ……!」
ツッコミ「おい、彼女は仕事中だって! 邪魔しちゃダメだって! (飼育員から指名され)……え? 俺ら? いや、『お兄さんたち元気いいですね』って……」
ボケ 「今行く!!」
ボケ、ツッコミの拘束を抜け出しステージへ向かう。
ツッコミ「あっ! くそっ、あの馬鹿……!」
ツッコミ、ボケを追いかける。
ボケ 「おねーさんっ! 触ってもよろしいでしょうかっ!」
ツッコミ「ダメに決まってんだろうがっ! すみません、すぐに席に戻ります。……え、『優しくならいいですよ』って……ええっ!?」
ボケ 「では、遠慮なく! ハァ……ハァ……ハァ……」
ツッコミ「息荒っ! 気持ち悪っ! お姉さん、止めといた方が……。いや、『そんなに好きでいてくれたんですね』って。あーもう見てられない……(目を覆う)」
ボケ 「ああっ…… ! なんて滑らかで瑞々しい肌なんだ……(甘くいい声で)ずっと触れていたいよ」
ツッコミ「……聞いてるこっちが恥ずかしくなる」
ボケ 「(うっとりした声で)恥ずかしがらないで、もっと顔を良く見せて。つぶらな瞳も綺麗だよ……君以上に美しい子は見たことがない」
ツッコミ「あ~~! おい、いい加減にしろ! 他のお客さんの前だぞ! 恥ずかしいからもうやめ」
ボケ 「(ツッコミのセリフを遮って)イル子ちゃんっ!!」
ツッコミ「ろって……は……? イル子ちゃんってまさか、お前の好きな子って」
ボケ 「この水族館のアイドルイルカ、イル子ちゃんだ!」
ツッコミ「はぁ!?」
ボケ 「ああ、イル子ちゃん。こんなに間近で君に触れられるなんて……。イル子ちゃん? どうしてそっちに行っちゃうの?」
ツッコミ「ん? なんか俺の方に来たぞ」
ボケ 「イル子ちゃん? こっち向いてよ、ねえ。イル子ちゃんってば!」
ツッコミ「お、おい! ズボン引っ張ってきたぞ。危ないな! 急にどうしたんだ!?」
ボケ 「(地を這うような低音で)貴様……」
ツッコミ「な、なんだよ」
ボケ 「イル子ちゃんを誑かしやがって! ふざけるな! イル子ちゃんから離れろっ!」
ツッコミ、ボケとイルカから左右に引っ張られる。
ツッコミ「はあ!? おい、お前ら! 引っ張るな!」
ボケ 「はーなーれーろー!」
ツッコミ「おい、本当に……って、う、わ、あぁぁ!」
バッシャーン!(効果音)
二人して水槽に落ちる。
ツッコミ「ぷはっ……俺を巻き込むんじゃねーー!!」
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