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第4話

 サトウアキラが突然消えた後、とりあえず私は彼の言っていた中央のギルドへとやってきた。

 ギルドっていう建物がどれなのかが分かるか心配だったけど、一際目立つ建物だったからよかった。


 ギルドの中はかなり広い作りになっていた。入って正面にカウンターみたいなところがあって、右のほうにも左のほうにもなにやら似たお店が並んでいた。

 建物は二階建てになっていて、中央は吹き抜けで中がより広く見えるようになっているようだった。


「何かお困りでしょうか?」


 不意に声をかけられた。

 その方を向けば、人間の女性が立っていた。長い黒髪に黒い目、おそらくサトウアキラと同じ人種だろう。年は若そうだけど、化粧をしているためよくは分からない。


「あ、はい、なんか一緒にやってた人が、ここを集合場所にって言ったあと突然消えたんです」

「ああ、多分そのお連れだった方はログアウトされたんだと思います。ちょうど、お昼の時間ですし」


 サトウアキラと同じ人種だからだろうか、この人もろぐあうととかよく分からない言葉を使っていた。

 いや、もしかしたらこのよくわからない言葉は今の世のブームなのかもしれない。そうすると分かっていない私がおかしいだけで、だから覚えたほうがいいのかも……。

 まあ、そんなことは一旦置いておいて。


「そうだったんですか……。そういえば、私も少しお腹が空いてきたとこだったんです」

「あ、そうでしたか。なら、ここで一旦ログアウトされますか?」


 ……ログアウトって何だろう。

 たしかログは、別の国の言語で……、なんだっけ、分かんないや。アウトはたしか、外れるみたいな感じだった気がする。

 お腹が空いたからログアウト。お腹が空いてなにを外したんだろう……。あー、こんなことになるならもっと言語を学習しておけばよかった、と後悔した。


「……えっと、ここで食べることってできないんですか? ほらあっちの方に飲食できるお店みたいなのありますし」


 そう言って私は、左右に併設されているお店のようなところを指差した。お腹の美味しいおばさんのところも、たしかあんな感じのお店だったはずだ。


「ああ、たしかにあそこで食事は出来ますが、あくまでもゲームの中での食事です。あそこで食事をすると2時間のステータス補正がかかりますが、実際の空腹感を紛らわすことはできません」


 なんだろう、知っている言語だしハキハキと喋ってもらっているのに理解できないっていうのは、かなり気持ちが悪いものだった。

 げーむの中? すてーたす補正? ほんとによく分からなくて吐き気までしてきた。もしやこの人はデバフの使い手なのか……。


「よく分からないけど、ちょっとあそこで食べてきます」

「そうですか、わかりました。どうぞごゆっくりしていってください」

「あい、ありがとうです」


 そして、私はお店のカウンター席のようなところへと座った。テーブル席も一応あったけど、1人でテーブルを占領するのはなんとなく申し訳なかったからやめた。まだこの建物の中に、客は私しかいないけど。


「らっしゃい嬢ちゃん! 今日はなにを注文するんだ?」

「あ、えっと、じゃあ美味しいお肉で! あ、でもこれ3つで食べれるやつでお願いします!」

「あいよ! ちょっと待ってな!」


 私がポケットから硬いの――サトウアキラの言う銀コインを見せながら注文した。店員さんらしきおじさん威勢のいい返事をすると、すぐに料理を始めた。

 ただ、ひとつ奇妙なことに、料理中に全く匂いがしなかった。お肉の焼ける美味しそうな音は聞こえるし、おじさんがお肉を焼く姿も見えるのに、あの香りだけは漂って来なかった。


「はいよ、お待ちどうさん!」


 どん、と大胆に私の前にステーキの乗った皿が置かれた。正直1枚だと足りるか分からないけど、まあお金がないから仕方がない。

 左手にフォークと右手にナイフを持ち、一口サイズに一片を切り取る。ナイフを入れれば中から油が出てきてほんとに美味しそうな感じが見てとれる。けど、やっぱりそこでも、あのお肉の美味しさが詰まったような香りが広がることはなく。


「なに、これ……」


 お肉を口に入れた瞬間、私の中に絶望が広がった感じがした。

 全く味がしないのだ。

 私の味覚がおかしくなっただけなのかもしれない。けど、匂いもしなかったし味覚に害する行為なんて何もしていないはずだ。

 もう一口食べてみても、やはり味はしない。ただお肉のようなかみごたえのある空気を食べている感じだった。


 今まであまり美味しくないと思うものも食べてきたけど、これはそのどんなものよりも美味しくなかった。それでも、お腹にものがたまっていく感じはする。

 食べたくないとは思ったけど、せっかく作ってもらったのに失礼だし、空腹を紛らわせるためには食べなければならない。

 私は何も考えずに、ステーキのようなものを口に運び続けた。


「……おじさん、ご馳走様でした」

「あいよ! またおいでな!」


 最後まで威勢のよかったおじさんに別れを告げ、その席を立った。

 空腹感は無くなったけど、代わりにうまくは表せない寂寥感のようなものが湧き上がってきていた。

 サトウアキラは、ここ以外にもたくさんの街があるみたいなことを言っていた気がする。もしかしたらこの街の料理だけが無味なだけで、他だと美味しいものがあるかもしれない。いや、あってほしい。


 とりあえず私は、早く他の街に行きたいという変な焦燥を抱きながらサトウアキラを待った。

今のところは共依存百合にしていこうかなって思っている所存です

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