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「それよりも忘れてはいけないことがあったんですが、先輩。火の玉って言葉に覚えはありますね?」
大体の被害状況を指でカメラを作って把握しながら、紗綾はそんな事を言った。
駿河は目線を紗綾から逸らすことによって反応を示す。
「返事は? というか、ありますよね絶対? ね?」
強い語気。
紗綾が、ごん、と駿河の胸に拳を突き立てる。女子大生のか弱い拳だが、その拳の威力以上の圧力を駿河は胸に感じる。胸。黙っていると紗綾が駿河の胸の辺りを本気でつねってきた。
「コホン、あるよ紗綾ちゃん。でもさ、これとそれとは話は別だよね、痛い痛い、紗綾ちゃん、胸の真ん中辺りをつままないでくれ、痛い」
「えー、してくれないと、この修理代全部先輩持ちにしてしまいますよ? それとも先輩が首を縦に振るまでこのままつねったままで紗綾は動かないかも」
「分かったよ紗綾ちゃん。今回だけだ。火の玉なんてこれまでの傾向から言ってどうせ煙草かなんかだと思うけどね。それでも僕はともすれば単位を犠牲にしてまでも紗綾ちゃんに付き合ってあげるとするよ? ともすれば単位が犠牲になるかもだけどね」
「では! これから、眼帯娘の本領発揮です!」
「ついに自分で言い始めたか」
まるで話を聞いていないふりをしている紗綾に駿河は盛大なため息をついた。




