科白と余白
「甘利ちゃん? 急に呼び出して何かあったんですか?」
甘利は何も答えない。
「あ、分かりました甘利ちゃん。甘利ちゃんもここからの景色を見に来たんですね! 違いますか?」
何も答えない。ただ、少し体は近付いた。
「しかし、どうして甘利ちゃんがあの事を知ってたんですか? 私はびっくりしました」
空気を空虚に震わせるのは紗綾の声だけだった。甘利は黙っていた。
「……甘利ちゃん? 随分真剣な表情ですねえ、甘利ちゃんらしくもない」
「紗綾さん」
甘利はおもむろに口を開いた。
「はい。なんでしょうか」
「嫌い」
「! 甘利ちゃん、なかなかキツイことをおっしゃりますねえ。そんな事を言いにここに私を呼んだんですか?」
「紗綾さんってお姉ちゃんって、欲しかった?」
「……今度はいきなり姉妹の話ですか? 姉ですかあ。それは私にとってタブーなんですよね。もう居るかもしれないし実は居ないかもしれないとか」
「そう」
「ええ、詳しくは知りませんけど」
甘利はくすり、と笑った。
「紗綾さんは今幸せですか?」
「まあた、変な質問ですねえ。何がしたいのやら。幸せかって? ええ、幸せですよ。毎日が薔薇色です!」
「私の母親を殺したくせにですか?」
「え?」
「母は人撫で橋から身を投げ出して死を選びました」
紗綾の顔から表情が消えた。
「甘利ちゃん? まさか」
「ええ、紗綾さんの思っている通りだと思いますよ」
「そんな。甘利ちゃんがそうだったなんて。……ごめんなさい。それなら甘利ちゃんは私の事なんて大嫌いですよね。私には何も……何も言えません」
紗綾が項垂れた。甘利は____。




