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眼帯娘とオカルト先輩  作者: 水戸
HINOTAMA
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 筒賀の号室は下の大家の紗綾の部屋が大きいために、同じく一部屋余分に多い。


 そしてその余分になった一部屋は冗談半分に皆に開かずの間と呼ばれていた。筒賀の部屋にいつ行っても鍵がしっかりとかけられており、誰かが少しでも興味も示すと筒賀が強い拒絶を示すのでそれ以上踏み込まずにいた。


 あのとき顔を真っ赤にしてやめてと懇願する筒賀が、今は恐ろしさすら感じられる雰囲気を漂わせてそのドアの前に立っている。駿河の目の奥を見通すような眼光を向けていた。


「駿河。駿河には嘘をつきたくなかったから見せるね。私は紗綾ちゃんのこと大嫌いだったから。この部屋にその理由があるんだよ」

「筒賀。相変わらず僕には君の言ってることが理解出来ないし、したいとも思わない」


「いいから、見て。私のこと」


「このドアの先に何があるっていうんだ」


「多分、何も無いよ。私が駿河に嫌われるだけかもしれない。でも私がこんな人間だったように知っても悲しくなるだけのことだってあるんだよ」


 今まで触ったことがないくらいドアノブが生きているように生暖かかった。咄嗟に手を離して後ろの筒賀に振り向いた。筒賀は笑っていた。どうしたの? とでも今にも言いそうな顔だ。駿河は大きく息を吸ってもう一度ドアノブを触った。冷たい普通の金属だった。


 キイッと接合部分が軋む音と共に駿河はその扉をやおらに開けた。


 なんだ____この部屋は。


「誰にも見せるつもりはなかったんだ。駿河にも」


 たくさんの顔が室内に浮かんでいた。


 一瞬、駿河は大小様々な鏡が部屋の中に大量にかけてあったと錯覚したくらいに生気の無い視線を感じた。


 部屋中に自分の顔があった。写真がたくさん壁に貼られていた。そこには、駿河が写っていた。前から撮影した写真、珈琲を飲んでいる写真、寝顔の写真。紗綾ちゃんと談笑をしている写真もあったけれど、そこは丁寧に切り取られていた。


「筒賀? 僕の写真? こんなにたくさん」


「うん。だから。強い嫉妬は、していたかもしれないんだ」


「これは、何だ?」


「なんでもないよ。……うん、なんでもないの」


「筒賀。……僕は今自分が何を見ているのか自分でも分からない」


 そんなこと聞かないで欲しいと言わんばかりに筒賀は目を逸らした。


「私。駿河の事が好きだったんだ」


「……あの時の言葉は本当だったのか?」


「そうだよ。私頑張ったんだ。駿河に振り向いてもらおうって。初恋だったから私なりに。でもやっぱり初めてだったからどうしていいか分からなくて、どうやったら好かれるか分からなくて、でもいつの間にか何時でも紗綾ちゃんが駿河の傍に居て悔しかった」


「そんなの、気付きもしなかった」


「だよね。そうだよね」


 筒賀は傷付いているように見えた。ただ、それが今しがたついたものであるのかは、駿河には判断することが出来なかった。

「これを見せて、筒賀は何がしたかったんだ?」


「駿河に、理解して欲しかったんだよ。私のこと、紗綾ちゃんのこと」


「意味が分からないよ筒賀」


「私は駿河のことが好き。だから、駿河が傷付いているのを見てると心が痛むんだよ。なんだかこっちまで泣きたくなってくるんだよ。他殺? 多分紗綾ちゃんとずっと一緒に居た駿河がそう思うのならそうだと思う。駿河の中で誰かを犯人だとして踏ん切りをつけようとしているなら、私は駿河に隠し事をしちゃいけないって思ったんだ」


「僕が紗綾ちゃんの死を和らげようとして犯人を作ろうとしているって言うのかい? 筒賀、君は犯人になろうとしているんだね」


「違うよ。そういうんじゃないから」


「違わない。僕が納得できなかった結果を得られた時に矛先を自分に向けようとしているんだろ?」


「違うったら。私はそのままを見せただけだから」


 ……不器用だと思った。紗綾ちゃんとは違うベクトルの不器用さだと思った。


「私は駿河のことが好き。駿河は紗綾ちゃんのことが好きだった」


「いや、違うよ。紗綾ちゃんとはただの先輩と後輩で……」


「駿河、嘘は良くないよ」


「筒賀?」


「私は分かるよ。駿河の中にまだ紗綾ちゃんが居るって。しかもそれは凄く強いんだってこと分かるよ。だからこそ、私は駿河に納得するところまで納得して欲しいなって思ったんだよ。だから____」

 

 

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